古い道具には、値段では測れない物語がある
旅する鑑定士の事件帖
古い道具には、
値段では測れない物語があります。
たとえば、黒く焦げたランプ。
雨の日だけ名前が記された宿帳。
受け取り手のない写真。
止まったままの時計。
誰にも読まれなかった手紙。
それらは、骨董品としては高価ではないかもしれません。
けれど、誰かにとっては一生忘れられない記憶を抱えています。
『旅する鑑定士の事件帖』は、古道具鑑定士・草壁悠介が、全国の町を旅しながら、古い品に残された小さな謎と人の記憶をたどる短編集です。
主人公は、旅する鑑定士・草壁悠介
草壁悠介は、古道具や古文書を扱う鑑定士です。
旧家の蔵。
港町の倉庫。
温泉旅館。
古い写真館。
閉校した小学校。
山あいの寺。
彼が訪れる場所には、いつも少しだけ不思議な依頼があります。
「亡くなった祖母が隠していた蔵の鍵を探してほしい」
「古い宿帳に、死んだはずの男の名前が残っている」
「受け取り手のない写真の人物を調べてほしい」
大事件ではありません。
けれど、放っておけない謎です。
草壁悠介は、物の傷、紙の古さ、文字の癖、土地の歴史を手がかりに、少しずつ真相へ近づいていきます。
でも、彼が本当に見つけるのは、事件の答えだけではありません。
言えなかった感謝。
届かなかった謝罪。
忘れられそうになっていた名前。
家族の間に残された小さな誤解。
古い品に残された、人の記憶です。
Vol.1|北の灯り
第1巻『北の灯り』は、亡き祖母が残した蔵の鍵を探すところから始まります。
祖母は亡くなる前、家族にこう言い残していました。
「蔵は、まだ開けないで」
依頼人の三島絵里は、その言葉が気になりながらも、蔵の鍵を見つけられずにいました。
草壁悠介が祖母の部屋を調べると、そこには一枚の紙片が残されています。
「北の灯りを忘れない」
やがて見つかった蔵の鍵。
そして、蔵の奥に大切にしまわれていた、黒く焦げた古いランプ。
そのランプには、昭和二十七年の火事、ひとりの若者の火傷、祖母が七十年抱え続けた感謝が隠されていました。
手がかりは、北海道小樽へ。
港町の古い船具店、資料室、倉庫街をたどるうちに、悠介は祖母の記憶とは違う、もうひとつの名前にたどり着きます。
これは、古いランプに残された七十年目の約束をたどる物語です。
Vol.2|雨の宿帳
第2巻『雨の宿帳』の舞台は、山あいの温泉旅館です。
旅館の倉庫から、差出人不明の木箱が見つかります。
中に入っていたのは、昭和の古い宿帳と、一本の万年筆。
宿帳には、不思議な名前が残されていました。
水野清一。
けれど、その男は宿帳に名前が記される前に、すでに亡くなっているはずでした。
しかも、その名前が残されていたのは、雨の日だけ。
部屋はいつも、二〇六号室。
なぜ、死んだはずの男の名前が宿帳に残されたのか。
誰がその名前を書いたのか。
そして、未開封の手紙と万年筆に隠されていた本当の理由とは。
怪談ではありません。
誰かを責めるためでもありません。
そこにあったのは、届かなかった謝罪と、忘れないために残された記録でした。
このシリーズで描きたいもの
『旅する鑑定士の事件帖』で描きたいのは、派手な事件ではありません。
古い品をきっかけに、
人が言えなかったこと、
残せなかった言葉、
忘れられそうになった記憶が、
もう一度そっと明るみに出る瞬間です。
壊れたもの。
焦げたもの。
古びたもの。
誰にも価値がないと思われていたもの。
でも、それを大切にしていた人がいた。
それを捨てられなかった理由があった。
それに触れることで、少しだけ心が救われる人がいる。
そんな物語を、一冊ごとに描いていきます。
こんな方におすすめです
静かなミステリーが好きな方。
旅情のある物語が好きな方。
古道具や古い建物に惹かれる方。
派手な事件より、人の記憶に残る謎を読みたい方。
最後に少しだけ心があたたかくなる短編を探している方。
このシリーズは、1巻ごとに独立した物語として読めます。
どの巻から読んでも大丈夫です。
ただ、草壁悠介という鑑定士が、古い品に残された記憶をたどっていく空気感は、巻を追うごとに少しずつ深まっていきます。
Kindle版について
『旅する鑑定士の事件帖』は、Kindleで順次公開予定です。
Kindle Unlimitedでも読める形を予定しています。
まずは導入回として、このnoteでシリーズの雰囲気を知っていただけたら嬉しいです。
古い道具には、
値段では測れない物語がある。
その言葉に少しでも惹かれた方は、ぜひ本編も読んでみてください。
シリーズ一覧
旅する鑑定士の事件帖 Vol.1|北の灯り
黒く焦げた古いランプに残されていたのは、七十年前の火事と、届かなかった感謝だった。
亡き祖母が守り続けた蔵の奥から始まる、静かな旅情ミステリー。
旅する鑑定士の事件帖 Vol.2|雨の宿帳
古い温泉旅館の宿帳に、雨の日だけ記された亡き男の名前。
二〇六号室、一本の万年筆、未開封の手紙をめぐる、人の記憶の物語。
旅する鑑定士の事件帖 Vol.3|写真館の少女
閉店を控えた写真館で見つかった、受け取り手のない一枚の写真。
写真の裏に残された「迎えに行けなくて、ごめん」という言葉から、草壁悠介が消えた名前をたどっていく。
最後に
古いものを見たとき、
それが高いか安いかではなく、
「誰がこれを大切にしていたのだろう」と思うことがあります。
傷がある。
色が褪せている。
少し壊れている。
けれど、その傷や古さの中にこそ、誰かの時間が残っているのかもしれません。
『旅する鑑定士の事件帖』は、そんな古い品にそっと耳を澄ませる物語です。
静かな夜に。
雨の日に。
少し心を休めたい時間に。
草壁悠介の旅に、少しだけ付き合っていただけたら嬉しいです。
第1巻はこちらから
