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寝た方がましましの朝

夜の洗濯をせずに、すぐベッドに潜り込んだ。  
明日は早起きしなくていい日。  
その贅沢が、布団の中でふわっと広がる。

スマホのメモとカメラロールをスクロールしながら、  
今日一日を静かに振り返る。  
俄かに始めたデジタル習慣も、いつの間にか板についてきた。

それでも、予定を書くのはやっぱり手帳がいい。  
手書きで書き込むと、胸の奥がほっと落ち着く。  
スマホのスケジュール管理は、まだ私の身体に馴染まない。

睡眠不足を解消しようと、手帳を閉じて灯りを消したとき、  
ふと、おばあちゃんの口癖を思い出した。

相談相手は、母よりもおばあちゃんだった。  
幼い頃から、今日あったこと、悩みごと、  
なんでも話しては聞いてもらった。

「悩んだって仕方ない。そんな時は、さぁ寝ましょう。  
寝た方がましまし、寝たほうがまし。」

そう言って、豪快に席を立ち、  
すたすたと寝室へ向かう後ろ姿が、今でも目に浮かぶ。  
切り替えの良さ、くよくよしない強さ。  
明治生まれの気風は、見ていて本当にかっこよかった。

私もいつの間にか、その言葉を口にするようになった。  
「寝た方がましまし」。  
どれだけ気持ちが軽くなったことか。  
朝になれば、なぜあんなに悩んでいたのだろうと思える日も多かった。

早起きしなくていい朝でも、やっぱり五時には目が覚める。  
ぐっすり眠れた朝は、身体が軽い。

さぁ、今朝の空はどんなだろう。  
三階の東のブラインドを開ける。

うわぁ……  
グレーにけむる静かな空。  
住宅街の屋根の向こう、山が霞んで見える。  
その景色に、思わず息を飲んだ。

私はグレーの空が好きだ。  
雲の間から太陽が顔を出し、光が差し込む。  
今日が始まるよ、と空がそっと告げてくれる。

その瞬間、鳥たちの朝の挨拶が始まった。  
住宅街に、澄んだ囀りが響き渡る。

静かな朝の光の中で、  
おばあちゃんの言葉がまた胸に浮かぶ。

寝た方がましまし。  
そして、今日もまた、光が始まる。

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