ショートショート 「嫌いな人にありがとう」 #青ブラ文学部
嫌いという感情は、醜い。
でも、
その無様な感情の縁をなぞることで、
人は自分の輪郭を知る。
嫌いな人がいるということは、
自分の価値観を浮き立たせる。
「このクソ野郎が!」と思うたび、
「自分はこうありたい」とも思う。
だからこそ、
心のどこかで小さく「ありがとう」とつぶやく。
大嫌いなあなたがいなければ、
私はこんなにも自分を見つめることはなかっただろう。
嫌いな人がいるから、私は私でいられる。
だから、とっておきのプレゼントを用意したの。
私があなたから貰って一番嬉しくないもの。
自作の手彫りの熊。
なれない彫刻刀でだいぶ苦戦しちゃった。
これをあげれば、きっとあなたは私をもっと嫌ってくれる。
そうすれば、私はもっと私でいられる。
フフフ…。
完
(本文311字)
