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ショートショート 「夏祭りの事件簿」 #シロクマ文芸部

夜店から悲鳴が上がった。

キャー…

ゾワゾワと波打つ人混みをかき分け、

僕はその発生地点へ急いだ。

その声に、聞き覚えがあったからだ。

まさかエリカちゃん?

……人違いであってくれ。どうか無事でいてくれ。

そう願いながら必死に走り、

さらに人だかりの濃い夜店へと流れ込む。

そこには、泡を吹いて倒れ込む店主と、

震える手でライフル銃を握りしめたエリカちゃんがいた。

泣きじゃくる彼女に駆け寄りたかった。

だが、すぐそばには彼氏らしき男の影がある。

僕は儚く散る想いを胸に押し込み、

倒れた店主の安否確認へ向かった。

「大丈夫ですか? 大丈夫ですか?」

頬を軽く叩き、意識の有無を確かめる。

学校で嫌々受けた救急救命の訓練が蘇る。

息はある。

意識も辛うじて保たれているようだった。

怪我はないか―そう確認していると、

足元に金色に輝くモノが落ちているのが目に入った。

僕はそこで、すべてを察した。

落ちていたのは、射的屋の店主にとって絶対に落ちてはいけないもの。

”一等賞ハワイ旅行”と書かれたラベルの貼られた金のシャチホコ…。

普段はネジや接着剤で固定されているはずの金シャチが、

大きな口をあんぐりと開けたまま、

床に転がっていた。

絶対に落ちないはずの景品が落ち、

店主はショックで泡を吹き、

エリカちゃんは嬉しさと興奮で悲鳴を上げた―

ただそれだけだったのだ。

だが、

金シャチ以上に口をあんぐり開けたかったのは、

他でもない僕の方だった。

ほろ苦くもしょっぱい、僕の夏祭りは終わった。



(本文612)


あとがき

小牧幸助さんの企画『シロクマ文芸部』「夜店から」はじめるnoteに参加させて頂きました。

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#ハワイ旅行

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