掌編 「天空の城」 #3つのお題に空想のひらめきを
朝になると消えてしまうベンチャーキャピタル…。投資の世界は潮の満ち引きよりも速く、色を変える。掴んだと思った瞬間に霧散する幻…。
いわば空に浮かぶ巨大な魔法の城だ。
空に浮かぶ城は、常にゆっくりと位置を変え、時に上昇し、時に沈みかける。その姿は、まるで夢の残滓が形を保ったまま現実に迷い込んだかのようだ。
風に押され、魔力の流れに揺られ、人々の祈りに引き寄せられたり遠ざかったりする。
上昇する日は黄金色の光を放ち、沈みかける日は雲の底に影を落とす。
外観は荘厳で、遠目には完璧な秩序を備えた要塞のように見える。だが近づくほどに塔はねじれ、回廊は絡み合い、階段は突然消え、「理解した」と思った瞬間に構造そのものが変わる。
投資家たちはその不可解さを“市場の気まぐれ”と呼ぶが、実際はもっと魔術的な何かが働いているのかもしれない。
城の内部には、古びた街灯が並ぶ広場がある。
株式銘柄の名前を呼ぶと光る、古い街灯は時価総額を示す数字を宙に浮かび上がらせる。
その光は美しく、同時に残酷だ。
また城内に浮かぶ忘れ物を預かる小さな雲には、投資家達の失敗の記憶が渦巻いている。
焦り、欲望、後悔、そして崩落。
触れれば指先が冷たく痺れ、二度と同じ過ちを繰り返さないようにと警告してくる。
だが魔法の力も無限ではない。城はいつか落ちるかもしれない。それでも冒険者たちは今日も挑む。富を掴む者もいれば、散っていく者もいる。それでも誰もが、あの城の光に魅せられてしまう。
そして今日も、巨大な城は空に浮かんでいる。なぜ落ちないのか、誰も知らない。
ただひとつだけ、私は知っている。
城の真下には、数え切れないほどの人骨が白く積もっていることを。
それでも人々は見上げる。
あの城が、明日こそは自分を招き入れてくれると信じて。
完
(本文749字)
あとがき
片桐みかんさんの企画『【第34回】3つのお題に空想のひらめきを』に参加させて頂きました。お題は下記の通りです。折角なので画像の要素もいれました。尚、画像は下のバナーから確認して下さい。
相変わらずお題のワードが力強いので、無理矢理ねじ込みました😄
第34回 3つのお題
お題①:「名前を呼ぶと光る、古い街灯」
お題②:「忘れ物を預かる小さな雲」
お題③:「朝になると消えてしまうベンチ」
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