「夢のつづき」 #アマノ文筆クラブ
放課後の教室。
西日が斜めに差し込み、窓際の机を黄金色に染めていた。カーテンが風に揺れ、カサカサと乾いた音を立てる。俺は椅子にふんぞり返り、ぼんやりと天井を見上げていた。そんなときだった。
「夢のつづきは現実、でも本当に夢から醒めてるってどうやって知るん?」 歩夢が唐突に、まるで独り言のように言った。
コイツはいつもそうだ。ちょっと哲学的な問いを、息を吐くように口にする。歩夢という名前の通り、夢を追いかけてるのか、夢の中に生きてるのか分からない天然記念物。俺はというと、いつも通り適当に返す。
「さぁな…。でも要は映画『マトリックス』みたいなことを言いたいんだろ?何が現実でなにが夢か…、正直俺はどうでもいいよ。どっちがどうでも俺は俺だからさ」
「そっか、まぁ…そうだよな…」 納得していないのに、納得したふりをする歩夢。
「お前は絶対現実に覚醒してるわっ!」っと心の中で罵倒する俺。
教室の隅では掃除当番がモップを引きずっている。チョークの粉が舞い、夕陽に照らされてキラキラしていた。
「なんかあったんか?」 友として、いちおう気にしてるポ〜ズ…。
歩夢は窓の外を見つめたまま、ぽつりと呟いた。
「悪夢が現実になった。だとしたら現実はどこに行くんだ?いや、塗り替えられるということか?」またよく分からないところで悩んで立ち止まる歩夢。
「歩け、歩くんだ、歩夢〜」っと心の中で叫ぶ。
「あ?悪夢が現実?」
「そう、テストで赤点取った…」
「勉強しろ!」 すかさず突っ込む。 教室にいた数人がクスクスと笑った。
「だ、だよな…」 頭をポリポリ掻く歩夢。 その仕草が、なんだか憎めない。
「テストには答えがある。でもお前は答えのない哲学的な何かに囚われ過ぎなんだよ。地頭はいいんだから受験問題に集中しろよ…」
窓の外では、夕焼けが校舎の影を長く伸ばしていた。
チャイムが鳴る。
現実は、夢よりも悪夢かもしれない。
でも、それでも歩くしかない。夢のつづきがどんな色でも。
完
(本文835字)
あとがき
甘野充さんの企画『アマノ文筆クラブ』に参加させて頂きました。思春期の自分に重ねて書いてみました。どーでもいいことにばかり想いをはせる大馬鹿でした。もっとちゃんと勉強しておけば、夢のつづきは…。
