ショートショート 「おとしもの」 #チャレがや企画
ん?おとしもの?
ふと、足元が軽くなった気がして、立ち止まり視線を落とす。
視点がボヤけ、目を擦る。
歳をとってから、どうも”おとしもの”が増えた気がする。統計を取っているわけじゃない。あくまで自己分析の範囲での話。でも、「地に落ちる」という言葉が、今の私には妙に腑に落ちる。おとしものは物ではなく、注意力そのものなのかもしれない。ただ、地に落ちるのは救いだ。拾えるのだから。海や谷底では諦めるしかない。いや、谷底なら、まだなんとかなるだろうか…。
思考の沼に落ちかけたころ、ポンポン、と背中を叩かれた。
振り返ると、天使が立っていた。黙って天を指差す彼に促され、私はそっと舞い上がる。
見下ろすと、足元には私がいた。私が地に落ちていた。
落としたのは、命。そして「お年者」なのは、私の方だったのだ。
”おとしもの”は拾われた。すくわれた。
ありがたや、と思う反面、このまま地獄へ落ちないよね?ふわふわする足元で心に影は落ちた。
完
(本文412字)
あとがき
八神さんの記事から『チャレがや』企画を知り、参加させて頂きました。初参加です。よろしくお願いいたします。
