ショートショート 「そいつは三輪車でやって来た」 #せりふ三題噺 #エビフライ三輪車つらら
そいつは三輪車でやって来た…
「はい、忘れ物」屈託のない笑顔で差し出してきたのはエビフライ。
「え?エビフライ?」俺様は油断した。油物だけに…。
グフッ…ガハッ!
口から飛び出したケチャップ色の液体が、赤い弧を描いて宙を舞う。壁に当たったそれは、ゆっくりと垂れ落ち、まるで冬のつららのように細く伸びていく。
そいつはエビフライの中に隠してあったアサシンダガーを俺様の腹に突き立てた。それは一瞬の出来事…魔王の俺様でも不可避だった。
「お前、汚えぞ…」
「魔王、お前が俺を3歳児に変えたんだよ!バーカ」勇者はほくそ笑む。
「クソっ…、でもどうせならオムライスが良かったな…ぐはっ!」
チーン…
魔王は倒れた。
しかし、勇者にかけられた呪い…3歳児化の魔法は、解ける気配がない。
「ま、いっか」勇者は三輪車に跨り直し、魔王の城を後にする。
石畳をカラカラと鳴らしながら、家路についた。
「今夜はオムライスにしよう」
ペダルを漕ぎながら、勇者は小さく呟いた。
完
(本文413字)
あとがき
はらとけいさんの企画『せりふ三題噺』に参加させて頂きました。お題は下記の通りです。
■セリフ
「はい、忘れ物」
■三題
・エビフライ・三輪車・つらら
