ショートショート 「カツカレー戦争」 #お疲れカツカレー
20XX年——。
世界は分断されていた。国境でも、宗教でもない。
それは、カツカレーのカツは先載せか、後載せかという、根源的かつ普遍的な問いだった。
先載せ派は、
「カツにカレーをかけることで、旨味が融合し、真の一体感が生まれる」
後載せ派は、
「サクサクこそ命。食感を守ることで、カレーの個性が際立つのだ」
論戦は激化し、ついに中道派が現れる。
「半分かければいいんじゃね?」
その中途半端な提案に、両派は激怒。
世界はドロドロのカレー沼へと沈み、カツカレー戦争が勃発した。
戦場では、カレーが雨のように降り注ぎ、カツが弾丸のように飛び交う。
最新鋭のカツカレーロボ兵器、空を舞うカツカレードローン。
地面はカレーで埋まり、兵士たちはカレー臭にむせび泣いた。
それはまさに、地獄カレー絵図。
だが、地球では決着がつかず、戦場は宇宙へ。
第一次宇宙カツカレー戦争が勃発。
無重力下では、カツもカレーも宙を舞い、もはや「載せる/載せない」の概念すら崩壊。
火星では「浮遊カツカレー派」が急増し、戦況はさらに混迷を極めた。
そして——
宇宙の静寂を裂いて、神が降臨する。
「私はカツカレーノミコトだ」
その姿は荘厳で、頭頂部には一皿のカツカレーが鎮座していた。
神は語る。
「私は争いを望まない。
カツにかける自由も、かけない尊厳も、
その自由と尊厳を越えたモノも、すべてが尊いのだ。
カツカレーのパラドックスに、正解など——」
だが、誰も耳を傾けていなかった。
全員の視線は、神の頭に載ったカツカレーに釘付けだった。
そのカツには、しっかりとカレーが半分かかっていたのだ…。

沈黙が訪れる。
武器が次々と捨てられ、カレーの海に沈んでいく。
誰もが、ただ呆然と立ち尽くしていた。
神は微笑み、こう言った。
「おぉ、皆わかってくれたようだな。
じゃ、オツカツカレー」
その瞬間、神は光となって消えた。
戦争は終わった。
世界には、静かなカレーの香りだけが残った。
完
(本文848)
あとがき
初めてお疲れカツカレーさんの企画に参加させて頂きました。今後ともよろしくお願い致します。
