オールドレンズで気になる症状──どこまでなら許容できるのか
オールドレンズを探していると、「チリの混入あり」「薄いクモリあり」「後玉に拭き傷」「バルサム切れあり」といった説明をよく目にする。
新品ではない以上、多少の劣化は避けられない。大切なのは、すべての症状を同じように怖がるのではなく、撮影への影響が大きいものと、ほとんど気にしなくてよいものを見分けることである。
カビ
オールドレンズで特に注意したいのがカビである。
小さな点状のカビなら、実写ではほとんど分からない場合もある。しかし、菌糸が広範囲に伸びているものは、コントラストの低下や逆光時のフレアにつながる。
カビを清掃できたとしても、コーティングやガラス表面が侵食されていれば跡が残る。説明に「カビ跡あり」と書かれている場合は、単に清掃済みというだけでは安心できない。
クモリ
クモリは、レンズ内部が白っぽく見える症状である。
薄いクモリでも、光がレンズ内部で散乱し、写真全体が柔らかくなることがある。黒が締まらず、逆光では画面が白っぽくなりやすい。
この描写をオールドレンズらしい味として楽しむこともできるが、意図せず常にコントラストが下がるため、実用品として選ぶなら慎重に確認したい症状である。
バルサム切れ
バルサム切れとは、貼り合わせたレンズの接着部分が劣化し、白い模様や虹色の変色が現れる症状である。
レンズの周辺部にわずかに発生している程度なら、通常撮影で影響を感じないことも多い。一方、中央付近まで広がっているものは、解像感やコントラストに影響する可能性がある。
バルサム切れは自然に元へ戻るものではない。購入するなら現在の範囲だけでなく、今後進行する可能性も考えて価格を判断したい。
拭き傷とコーティングの傷み
古いレンズでは、前玉や後玉に細かな拭き傷が付いていることがある。
前玉の薄い拭き傷であれば、通常撮影では分からない場合が多い。ただし、強い光が入る場面ではフレアやコントラスト低下が起こりやすくなる。
注意したいのは後玉の深い傷である。後玉は撮像面に近いため、前玉の同程度の傷よりも写りへ影響しやすい。傷の本数だけでなく、深さと場所を確認する必要がある。
チリやホコリ
少量のチリは、オールドレンズなら入っていて当然と考えてよい。
通常の撮影でレンズ内の小さなチリが写真に写り込むことはほとんどない。細かなチリを気にしすぎると、選べるレンズがなくなってしまう。
ただし、大きな異物が中央付近にあるものや、内部に大量のホコリが積もっているものは、光の散乱やコントラスト低下につながる可能性がある。
絞り羽根の油染み
絞り羽根に油が付着しているレンズも注意が必要である。
羽根の動きが遅くなったり、設定した絞り値まで閉じなくなったりすることがある。ミラーレスカメラで実絞り撮影をする場合は使えることもあるが、正常な状態とはいえない。
絞りリングを回し、羽根が素早く均等に動くか確認したい。羽根の形が崩れているものや、途中で止まるものも避けたほうが無難である。
ピントリングの重さや引っかかり
古いグリスが固まると、ピントリングが重くなる。
少し重い程度なら撮影できるが、途中で引っかかる、場所によって重さが変わる、金属が擦れるような感触がある場合は修理が必要になる可能性がある。
反対に、リングが軽すぎてガタつくものも使いにくい。マニュアルフォーカスでは操作感が撮影の楽しさに直結するため、光学状態と同じくらい重要な部分である。
無限遠のズレ
無限遠の指標まで回しても遠景にピントが合わないレンズがある。
原因として、分解清掃後の組み直しミスや内部調整のズレ、マウントアダプターの精度などが考えられる。わずかに無限遠を越えて回る程度なら実用上問題ないが、無限遠まで届かないものは風景撮影で困る。
可能であれば、購入前に遠くの建物や看板へピントを合わせて確認したい。
片ボケと偏芯
見た目では分かりにくく、実写で問題になりやすいのが片ボケである。
画面の右側だけが甘い、左上だけが流れるなど、場所によって解像感に大きな差が出る。落下による衝撃やレンズ群のズレ、組み付け不良などが原因として考えられる。
オールドレンズには周辺が甘いものも多いが、左右非対称に大きく崩れる場合は単なる個性ではない。均一な壁や遠景を撮影し、左右を比較すると見つけやすい。
黄変
一部の古いレンズでは、レンズが黄色や茶色に変色していることがある。
黄変したレンズは写真が暖色寄りになり、光の透過量も低下する。デジタルカメラならホワイトバランスである程度補正できるが、本来の色を重視する場合は注意が必要である。
一方、暖かみのある描写を個性として楽しむこともできる。黄変は必ずしも故障ではなく、使い方次第で味にもなる症状である。
気にしなくてよい症状と避けたい症状
比較的許容しやすいのは、少量のチリ、外装の傷、前玉周辺の細かな拭き傷である。これらは見た目ほど実写に影響しないことが多い。
慎重に判断したいのは、広範囲のカビ、強いクモリ、中央まで進んだバルサム切れ、後玉の深い傷、絞り不良、片ボケである。修理費がレンズ本体の価格を超えることもある。
オールドレンズは、無傷の個体を探すものではない。多少の使用感を受け入れながら、撮影に影響する問題だけを見抜くことが重要である。
外観のきれいさだけで判断せず、レンズに光を通した状態、絞り羽根の動き、ピントリングの感触、そして実写での左右差を確認する。それが、長く楽しめる一本を見つけるための基本である。
(この記事には、アフィリエイトリンクが含まれます。)
いいなと思ったら応援しよう!
もし記事を気に入っていただけたら、チップをいただけると嬉しいです。より良い記事がかけることに投資させていただきます。