Carl Zeiss ClassicとMilvus──中身が同じレンズと、完全に作り直されたレンズ
Carl Zeissの一眼レフ用MFレンズには、大きく分けてClassicシリーズとMilvusシリーズがある。
どちらもZE/ZF.2マウント時代のレンズで、キヤノンEFやニコンFマウント向けに展開されたMFレンズ群だ。
ぱっと見の印象としては、Classicは金属鏡筒のクラシックなデザイン。
Milvusは現代的で滑らかな外装、防塵防滴に配慮された実用的なデザイン。
では、MilvusはClassicの単なる外装変更なのか。
ここが面白い。
実はMilvusには、Classicと光学設計が基本的に同じものと、光学系そのものが完全に作り直されたものが混在している。
つまり、Milvusだから全部新しいわけではない。
逆に、Classicだから全部古いとも言い切れない。
Milvusは「全部新設計」ではない
Milvusシリーズを見ると、外観はClassicからかなり変わっている。
ゴムリングのような滑らかなフォーカスリング。
防塵防滴に配慮された鏡筒。
現代的なデジタル一眼レフに似合うデザイン。
逆光耐性や内面反射対策も強化されている。
そのため、つい「MilvusはClassicを全部作り直したシリーズ」と思ってしまう。
しかし実際には、光学設計をそのまま継承したレンズも多い。
Classic時代にすでに完成度が高かったレンズは、光学系を大きく変えず、外装やコーティング、実用性を現代化した。
一方で、Classic時代の設計では現代の高画素センサーに対して厳しくなっていたレンズは、Milvusで光学系から作り直された。
この分け方で見ると、ClassicとMilvusの関係がかなり見えやすくなる。
光学設計が基本的に同じMilvus
ClassicからMilvusになっても、光学設計が基本的に同じとされるレンズは以下。

このあたりは、Milvusになっても「描写の芯」はClassicとかなり近い。
もちろん、完全に同じ写りという意味ではない。
外装が変わり、コーティングや内面反射対策、防塵防滴などの実用面が強化されているため、逆光時の安定感やコントラスト感には差が出る可能性がある。
ただし、レンズ構成そのものが同じなら、描写の骨格はかなり近い。
特に重要なのは、Makro-Planar 50mm F2と100mm F2。
この2本はClassicでも非常に評価が高く、Milvusでも基本的な光学設計は受け継がれている。
つまり、ClassicのMakro-Planarを持っている人が、Milvus版を見て「中身まで完全に別物なのでは」と思う必要はあまりない。
もちろんMilvusのほうが現代的な鏡筒で使いやすい。
ただ、Classic版にもClassic版の金属鏡筒の魅力がある。
描写の核を求めるなら、Classicでも十分に楽しめる。
光学系が一新されたMilvus
一方で、Milvusになって光学系から大きく作り直されたレンズもある。

ここはかなり重要。
特に50mm F1.4と85mm F1.4は、ClassicとMilvusで性格が大きく違う。
Classicの50mm F1.4と85mm F1.4はPlanar。
昔ながらのダブルガウス系らしい、柔らかさ、滲み、立体感、味のある描写が魅力だった。
開放では少し甘い。
でもその甘さがいい。
ピント面だけが浮かび、背景に独特の溶け方が出る。
いわゆる「ツァイスらしい味」を感じやすいのは、むしろClassicのPlanar系かもしれない。
一方、Milvus 50mm F1.4と85mm F1.4は、かなり現代的な設計になっている。
高解像。
高コントラスト。
開放から安定した描写。
現代の高画素機に対応するためのレンズ。
つまり、名前は同じ50mm F1.4や85mm F1.4でも、ClassicとMilvusではかなり別物として見たほうがいい。
Classic 50mm F1.4とMilvus 50mm F1.4は別キャラ
Classic Planar T* 1.4/50は、いかにも昔ながらの標準レンズらしい味がある。
開放では柔らかく、少し暴れる。
近距離では甘さも出る。
でも、それが写真に雰囲気を作る。
一方、Milvus 1.4/50は、Classic Planarの単純な後継というより、現代的な高性能50mmとして作り直されたレンズだ。
描写はかなりシャープ。
コントラストも高く、開放から使いやすい。
高画素機でも安心して使える。
しかし、その分、Classic Planarのような危うさや味は薄くなる。
どちらが上かではない。
欲しいものが違う。
写真に少しクセや揺らぎが欲しいならClassic Planar。
安定した高性能が欲しいならMilvus 50mm F1.4。
この違いはかなり大きい。
Classic 85mm F1.4とMilvus 85mm F1.4も別物
85mm F1.4も同じ。
Classic Planar T* 1.4/85は、ポートレートレンズとして非常に魅力的な存在だ。
開放では柔らかく、ピント面の芯と周辺のにじみが独特。
現代レンズのように何もかも均一に整えるのではなく、少し夢の中に入るような写りをする。
ポートレートで使うと、この柔らかさが効く。
一方、Milvus 1.4/85は、かなり現代的な高性能中望遠レンズになっている。
開放から解像感が高く、色収差も抑えられ、画面全体の安定感がある。
人物をきっちり、端正に、美しく写したいならMilvus。
少しクラシックな空気感や柔らかさを残したいならClassic Planar。
この2本も、同じ85mm F1.4という名前だけで比較すると見誤る。
Makro-PlanarはMilvusでも味が残っている
Milvusで光学設計が継承されたレンズの中でも、特に注目したいのがMakro-Planar 50mm F2と100mm F2。
この2本はClassic時代から非常に評価が高い。
マクロレンズではあるが、単なる接写用レンズではない。
通常撮影でも非常に魅力がある。
解像力がありながら、硬すぎない。
立体感があり、線が細かい。
物撮りにもポートレートにも使える。
Milvus 2/50MとMilvus 2/100Mは、この光学設計を基本的に引き継いでいる。
つまり、Classic Makro-Planarの描写が好きなら、Milvus版にも同じ系譜を感じられる。
逆に言えば、Classic版を持っているなら、描写目的だけでMilvusに買い替える必要性はそこまで高くないかもしれない。
ただし、Milvusは外装や操作感、防塵防滴などが現代的なので、実用レンズとして使い倒すならMilvusの魅力は大きい。
Classicは所有感。
Milvusは実用性。
そんな分け方もできる。
Apo Sonnar 135mm F2も継承組
Apo Sonnar T* 2/135も、ClassicからMilvusへ光学設計を継承した代表的なレンズ。
このレンズはClassic時代からすでに完成度が非常に高かった。
135mm F2の明るさ。
Apo設計による色収差補正。
高い解像力と美しいボケ。
このレベルになると、光学系を無理に変える必要がなかったのかもしれない。
Milvus 2/135は、Apo Sonnarの中身を現代的な外装に入れたような存在と考えるとわかりやすい。
Classic版のApo Sonnarも、Milvus版の135mmも、どちらも非常に強いレンズだ。
Classicを選ぶ理由、Milvusを選ぶ理由
ClassicとMilvusの違いは、単純な新旧ではない。
ClassicにはClassicの魅力がある。
金属鏡筒の質感。
昔ながらのレンズらしい佇まい。
Planar 50mm F1.4や85mm F1.4のような、少し危うい描写。
現代レンズでは失われがちな味。
一方、MilvusにはMilvusの魅力がある。
防塵防滴に配慮された鏡筒。
滑らかなフォーカスリング。
現代的なコーティング。
高画素機への対応。
開放から安心して使える描写。
特に、50mm F1.4や85mm F1.4では、この違いがはっきり出る。
Classicは味。
Milvusは性能。
もちろん単純に割り切れるものではないが、大きな方向性としてはそう考えるとわかりやすい。
ツァイスのレンズ選びはかなり楽しい
Carl Zeiss ClassicからMilvusへの移行は、単なる外装変更ではない。
ただし、すべてが新設計になったわけでもない。
光学設計を継承したレンズは以下。
Milvus 2.8/15
Milvus 2.8/21
Milvus 2/35
Milvus 2/50M
Milvus 2/100M
Milvus 2/135
一方で、光学系から一新されたレンズは以下。
Milvus 2.8/18
Milvus 1.4/25
Milvus 1.4/35
Milvus 1.4/50
Milvus 1.4/85
この違いを知っておくと、ClassicとMilvusの選び方がかなり変わる。
ClassicのPlanar 50mm F1.4や85mm F1.4を、Milvusの同焦点距離と同じ感覚で見ると失敗する。
逆に、Makro-Planar 50mm F2や100mm F2は、ClassicとMilvusでかなり近い系譜として考えられる。
ツァイスの面白さは、スペックだけでは見えない。
同じ焦点距離。
同じF値。
同じZEISSの名前。
それでも、中身が違えば写りは変わる。
Classicを選ぶのか。
Milvusを選ぶのか。
それは、新しいか古いかではなく、
自分が写真に何を求めるかで決まる。
味を求めるならClassic。
安定した性能を求めるならMilvus。
そして、Makro-PlanarやApo Sonnarのように、Classic時代からすでに完成されていたレンズは、Milvusになってもその血筋を受け継いでいる。
このあたりを知ってから選ぶと、ツァイスのレンズ選びはかなり楽しくなる。
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