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LUMIX S1Hを、ローパスあり2400万画素ポートレート機として見る

LUMIX S1Hは、本来は動画機として語られることが多いカメラである。

6K動画、V-Log、放熱ファン、業務機寄りのボディ。
世の中での扱われ方としては、どうしても「動画のためのSシリーズ」という印象が強い。

ただ、今あらためてS1Hを見ると、スチル機としてもかなり面白い立ち位置にいる。

特にポートレート用として考えたとき、このカメラには他のSシリーズとは少し違う魅力がある。


ローパスありの2400万画素機という個性

S1Hは、約2420万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載し、ローパスフィルターも備えている。LUMIXのSシリーズで唯一ローパスフィルターを搭載しているカメラである。

ここがかなり大きい。

今のカメラは、解像感を強く見せる方向に進んでいる。
高画素、ローパスレス、シャープなレンズ、高精細なEVF。
もちろん、それはそれで正しい進化である。

ただ、ポートレートでは、必ずしも「全部が見えすぎること」が正解ではない。

肌の質感、髪の柔らかさ、光のまわり方、背景とのなじみ。
そういう部分では、ローパスありの2400万画素というバランスが、むしろ気持ちよく見えることがある。

S1Hは、バキバキに解像を見せるカメラというより、少しなめらかで、階調を大事にするカメラに見える。


AFは弱い──しかし、それもまたS1Hらしさ

S1Hの弱点は、AFである。

S1HはコントラストAFとDFD技術を組み合わせたAFを採用している。
今の位相差AF搭載機と比べると、動体や人物追従ではかなり厳しい場面がある。

正直、AF性能だけで見れば、現代のS5II系や他社ミラーレスとは比べにくい。
ポートレートでも、テンポよく瞳AFに任せて撮るような使い方では、ストレスを感じる人もいるはずである。

しかし、逆に言えば、S1Hには位相差AF用の画素がない。

この点をどう見るかで、S1Hの評価は変わってくる。

位相差AFのセンサー配置が写りに与える影響を気にしない人にとっては、ただAFが弱い古いカメラである。
しかし、少しでもセンサー面の素直さを重視したい人にとっては、コントラストAFのみのS1Hに魅力を感じる余地がある。

AFは不便。
でも、その不便さと引き換えに、写りの素直さを取りにいく。

そういう選び方ができるカメラである。


S1Hは動画機だけではもったいない

S1Hは、世間的には動画機である。

実際、パナソニックもS1Hをシネマ品質の動画撮影に対応するフルサイズミラーレスとして打ち出していた。6Kフルサイズ撮影、4:2:2 10bit内部記録、V-Log/V-Gamutなど、動画機としての要素が非常に強い。

しかし、だからこそスチル用途で見落とされている部分もある。

動画機として作られたカメラは、階調やハイライトの扱いに強いことが多い。
S1Hもその例で、白飛び寸前の光の粘り方に独特の余裕を感じる。

ポートレートでは、これが効いてくる。

顔に当たる光。
逆光の髪。
白い服。
窓際のハイライト。
夕方の淡い空気。

こういう場面で、S1Hは妙に落ち着いた絵を出してくる。

派手ではない。
でも、破綻しにくい。
ハイライトが急に硬くならず、ゆっくり残る感じがある。

ここがS1Hの気持ちよさだと思う。


中古で20万円を切るなら、見方が変わる

S1Hは発売当時、かなり高価なカメラだった。

動画機として見ても、スチル機として見ても、気軽に買える価格ではなかった。
しかし中古市場では、現在18万円前後の取引も見かけるようになってきた。

この価格帯まで来ると、S1Hの見え方が変わる。

最新のAF性能を求めるなら、S1Hを選ぶ理由は薄い。
小型軽量を求めるなら、もっと良い選択肢がある。
高画素を求めるなら、S1Rや他社高画素機がある。

しかし、ローパスありの2400万画素フルサイズ機として見ると、S1Hは急に面白くなる。

S1より少し高く、S1Rより少し安い。
そんな微妙な立ち位置にいるからこそ、単なるスペック比較では埋もれやすい。

でも、ポートレート専用機として考えると、この微妙さがむしろ魅力になる。


MC-21があると、EFレンズ資産が活きる

Lマウントを使ううえで、MC-21の存在も大きい。

SIGMAのMOUNT CONVERTER MC-21は、SIGMA SAマウント用レンズや、SIGMA製キヤノンEFマウント用レンズをLマウントボディで使うためのコンバーターである。

現在、MC-21は新品・中古ともに手に入りにくくなっている印象がある。
だが、これを持っているとSシリーズの楽しみ方がかなり広がる。

特にソニーユーザーで、EFマウント時代のSIGMAレンズを持っている人なら、S1HとMC-21の組み合わせはかなり面白い。

ソニーEマウントではMC-11。
LマウントではMC-21。

EFマウントのレンズ資産を活かせるかどうかで、S1Hの価値は大きく変わる。

もちろん、AF性能に過度な期待はしないほうがいい。
それでも、MFやゆっくりした撮影を前提にするなら、S1HとEFレンズの組み合わせにはかなり味がある。


ポートレート専用機としてのS1H

S1Hは、万能機ではない。

AFは今の基準では弱い。
ボディは大きい。
重い。
気軽に持ち出すカメラでもない。

ただし、ポートレート専用機として見るなら話は変わる。

ローパスあり。
2400万画素。
位相差AFなし。
ハイライトの粘り。
動画機由来の階調感。
大きく重いが、そのぶん撮影時の安定感もある。

これは、現代の「何でも撮れる便利なカメラ」とは少し違う。

むしろ、撮るものを絞ったときに良さが出るカメラである。

人物を撮る。
光を拾う。
肌をなめらかに残す。
背景を柔らかくなじませる。
ハイライトを飛ばしきらずに粘らせる。

そういう撮影には、S1Hはかなり向いている。


いまS1Hを選ぶ意味

今、S1Hを買う理由は、スペック表の上にはあまりない。

AF性能なら新しい機種がいい。
軽さならS5系がいい。
高画素ならS1Rがある。
最新機能ならS5II以降を見たほうがいい。

それでもS1Hを選ぶ意味はある。

それは、写りの方向性で選ぶということだ。

ローパスありの2400万画素。
コントラストAFのみ。
動画機として作られた余裕のある階調。
ハイライトの粘り。

この組み合わせは、今となってはむしろ貴重である。

S1Hは、便利なカメラではない。
でも、妙に写りが気になるカメラである。

動画機として生まれたS1Hを、あえてポートレート専用のスチル機として使う。

20万円を切っている今なら、その選び方はかなり面白い。

最新ではない。
万能でもない。
でも、ハマる人にはかなりハマる。

S1Hは、そんなカメラである。

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