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中古20万円前後で見えてきたLUMIX S1Hの価値──動画機ではなく、ポートレート専用機として選ぶ理由

LUMIX S1Hは、発売当初から少し特殊なカメラだった。

LUMIX Sシリーズのフルサイズミラーレスでありながら、打ち出され方は明らかに写真機ではなく動画機だった。
パナソニック自身もS1Hを、6K/24p、5.9K/30p、10bit 4K/C4K 60pに対応する「シネマクオリティ」のフルサイズミラーレスとして発表している。さらに公式資料では、S1Hはフィルム制作向けに設計・開発されたモデルと説明されている。

そのため、S1Hは長いあいだ「写真を撮るカメラ」というより、
映像を撮る人のためのカメラ
として見られてきた。

もちろん静止画も撮れる。
しかもフルサイズ2420万画素。
14bit RAWにも対応し、ボディ内手ブレ補正もあり、写真機としての基礎体力は十分に高い。

しかし発売当初のS1Hには、どうしても「動画機」という空気があった。

しかも価格が高かった。
発売時点では50万円級のカメラとして見られており、動画を本気で撮る人にとっては納得できても、写真だけに使うにはかなり贅沢な機材だった。

「S1Hをポートレート専用にする?」
「それならS1でよくない?」
「写真ならS1Rでは?」

そんな雰囲気があったのは自然だと思う。

しかし今、中古市場でS1Hを見ると、印象がかなり変わってくる。


50万円級だった動画機が、今は20万円前後で狙える

現在の中古市場では、S1Hは状態によって20万円前後で見かけるようになっている。

たとえばフジヤカメラでは、2026年4月販売開始のAB-ランク品が188,100円、2026年1月販売開始のABランク品が195,800円で掲載されている例がある。マップカメラでも中古のS1Hが20万円台前半で掲載されている例が確認できる。

この価格帯になると、S1Hの意味が変わる。

発売当初のS1Hは、
写真だけに使うには高すぎる動画機
だった。

しかし今のS1Hは、
ローパスフィルター付きの、階調重視フルサイズポートレート機
として見えてくる。

これはかなり大きな変化だ。


Sシリーズでは珍しいローパスフィルター搭載機

S1Hの魅力を写真機として見たとき、かなり重要なのがローパスフィルターである。

公式資料では、S1Hは24.2MPフルサイズCMOSセンサーを搭載し、OLPF、つまりOptical Low Pass Filterの採用によってモアレを抑制すると説明されている。

ローパスフィルターというと、写真では「解像感が少し落ちるもの」と見られがちだ。

たしかに、チャートを撮って細部のキレだけを見るなら、ローパスレス機のほうがシャープに見えやすい。
しかしポートレートでは、必ずしもシャープであれば良いわけではない。

肌。
髪。
衣装の繊維。
背景の細い線。
ライブ衣装のキラキラした素材。

こういうものを撮るとき、解像が強すぎるカメラは、ときに硬く見える。

肌の質感が出すぎる。
衣装の模様がうるさくなる。
背景の線が妙に目立つ。
光の当たり方によって、デジタルっぽいギラつきが出る。

S1Hのローパスフィルターは、そこを少し落ち着かせてくれる。

眠い絵になるというより、角が丸くなる。
過剰に尖らず、人物が自然に見える。
この方向性は、ポートレートではかなり相性がいい。


動画機として使われたからこそ、シャッター回数が少ない個体も狙える

S1Hを中古で狙うとき、もうひとつ面白い点がある。

それは、動画機として使われてきた個体が多いと思われることだ。

S1Hは公式にもフィルム制作向けとして位置づけられ、動画性能を前面に出して販売されたカメラである。6K/24p、5.9K/30p、10bit 4K/C4K 60p、V-Log/V-Gamut、無制限録画を支える放熱設計など、訴求の中心は明らかに動画だった。

ということは、中古市場に出てくる個体も、静止画を大量に撮る用途ではなく、動画メインで使われていた可能性がある。

つまり、個体によってはシャッター回数が意外と少ないかもしれない。

これは中古の写真機として見ると、かなりおいしい。

同じ発売年のカメラでも、スポーツ、野鳥、ライブ、イベント撮影で使われた写真機は、シャッター回数がかなり進んでいることがある。
一方、動画メインで使われたS1Hなら、メカシャッターの消耗は比較的少ない個体に出会える可能性がある。

もちろん、ここは冷静に見たい。

動画機として使われた個体は、シャッター回数が少なくても、長時間収録による使用感が出ている場合がある。
確認したいのは、端子まわり、液晶、ボタン、カードスロット、ファンまわり、外装の熱まわり、HDMI端子の状態などだ。

シャッター回数が少ないから絶対に状態が良い、とは言えない。

しかし、それでもS1Hは面白い。

動画機として売れたカメラを、シャッター回数の少ない写真機として拾う。

この発想ができるのが、中古S1Hのかなり魅力的なところだと思う。

しかもS1Hのシャッターユニットは、公式資料で約40万回の耐久性が示されている。
もともとプロ用途を想定した堅牢なボディであり、単なる家庭用ミラーレスとは少し設計思想が違う。

中古で状態の良い個体に出会えた場合、ポートレート用の写真機としてはかなり贅沢な選択になる。


高画素ではなく、質感で選ぶカメラ

S1Rは4730万画素の高画素機として、今見てもかなり魅力がある。

風景、建築、商品撮影、細部の解像を活かす撮影なら、S1Rの強さはわかりやすい。
高画素フルサイズを中古20万円前後で狙えるなら、それもかなり面白い選択になる。

一方でS1Hは、S1Rとは違う方向に魅力がある。

2420万画素。
数字だけ見れば、今となっては普通に見える。

しかしS1Hの良さは、画素数ではない。

ローパスフィルター。
デュアルネイティブISO。
V-Log/V-Gamutの思想。
14ストップ以上のダイナミックレンジ。
堅牢な大型ボディ。
動画機として作られた余裕のある放熱設計。

こうした要素が重なって、写真にも独特の落ち着きが出る。

S1Hは、バキバキに解像する写真機というより、
光と質感をきれいに残すフルサイズ機
として見ると面白い。

ポートレートでは、この方向性が強い。

肌を必要以上に硬くしない。
白飛び寸前の階調に粘りを感じる。
暗部が急に汚くならない。
衣装や髪の細かい描写がうるさくなりすぎない。
写真全体に、少しシネマ機っぽい落ち着きが出る。

この「落ち着き」は、スペック表だけでは見えにくい。

しかし人物を撮るときには、かなり重要な要素になる。


AFは最新ではない──それでもポートレートなら成立する

S1Hの弱点もはっきりしている。

AFは現代機のような像面位相差AFではない。
S5II以降のLUMIXや、ソニーαシリーズに慣れている人からすると、S1HのAFには古さを感じると思う。

動き回る被写体を追う。
ライブで激しく動く人物を撮る。
子どもや動物を連写で追い続ける。

こういう用途では、最新機のほうが圧倒的に楽だ。

しかし、ポートレートなら話は変わる。

被写体に立ってもらう。
光を見る。
背景を選ぶ。
少しずつ角度を変える。
表情を待つ。

そういう撮影では、AF性能だけがすべてではない。

むしろ、シャッターを切ったあとの絵の質感が大事になる。

肌の残り方。
白の粘り。
暗部の落ち方。
衣装の質感。
背景の溶け方。
画面全体の静けさ。

S1Hは、ここに強い。

最新AFで追いかけるカメラではない。
被写体を見て、光を見て、ゆっくり絵を作るカメラだ。


発売当初は贅沢すぎた使い方が、今は現実的になった

発売当初のS1Hをポートレート専用機にするのは、かなり贅沢だった。

50万円級の動画プロ機を、写真だけに使う。
しかもポートレート専用にする。

それは、かなり尖った選び方だったと思う。

しかし中古20万円前後になった今なら、話は変わる。

S1Hは単なる「古い動画機」ではない。
ローパスフィルターを搭載した、質感重視のフルサイズ機として再評価できる。

しかも動画機として使われてきた個体が多いと考えるなら、シャッター回数の少ない中古個体を狙える可能性もある。
もちろん端子やファン、液晶まわりの状態確認は必要だが、写真機として考えたときの中古メリットは大きい。

S1Hは、最新機ではない。

AFも最新ではない。
ボディも大きい。
軽快なスナップ機という感じでもない。

しかし、それでもこのカメラには独特の説得力がある。

フルサイズらしい余裕。
動画機由来の階調設計。
ローパスフィルターによる自然な質感。
2420万画素という扱いやすいデータ量。
プロ用途を想定した堅牢なボディ。
そして、中古20万円前後という現実的な価格帯。

この組み合わせが、今になってかなりおいしい。

カメラは新しいほど便利になる。
しかし、写真の雰囲気まで必ず新しいほうが良いとは限らない。

S1Hは、まさにそのタイプのカメラだと思う。

発売当初は「動画機」として見られすぎていた。
写真専用、ポートレート専用にするには、さすがに高すぎた。

しかし今なら違う。

中古市場で20万円前後まで降りてきたS1Hは、
動画機の中古落ち
ではなく、
ポートレート用フルサイズ機として再発見できる一台
になっている。

解像度競争から少し離れて、人物の質感をきれいに残したい。
肌や衣装をギラつかせず、落ち着いたフルサイズの絵を撮りたい。
最新AFよりも、写真そのものの空気感を重視したい。
そして、シャッター回数の少ない良個体を中古で探したい。

そういう人にとって、LUMIX S1Hはかなり面白い選択肢になる。

発売当初は贅沢すぎた使い方が、時間を経て、ちょうどいい選び方に変わった。
中古市場には、こういう「時代が追いついたカメラ」がたまにある。

LUMIX S1Hは、その代表格かもしれない。

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