Carl Zeiss刻印とZEISS刻印──ソニー純正ツァイスレンズの“ロット違い”をどう見るか
中古レンズを見ていると、同じソニー純正ツァイスレンズなのに、前面の刻印が違う個体がある。
あるものには Carl Zeiss。
あるものには ZEISS。
たとえば、Sonnar FE 2.8/35 ZA。
スペック上は同じレンズ。焦点距離も、F値も、フィルター径も同じ。
しかし、前玉まわりの表記だけが違う。
この違いを見ると、ついこう思ってしまう。
「ZEISS表記のほうが新しいのでは?」
「写りも改善されているのでは?」
「中身が変わっている可能性はあるのでは?」
中古レンズ沼としては、ここがかなり気になるところだ。
基本的には同じレンズと見ていい
まず大前提として、Carl Zeiss刻印とZEISS刻印で、公式に別モデルとして扱われているわけではない。
型番が変わっているわけでもない。
レンズ構成が別物として発表されているわけでもない。
MTFや最短撮影距離、重量などのスペックが大きく変更されたわけでもない。
つまり、基本的には同じレンズと考えていい。
Sonnar FE 35mm F2.8 ZAなら、どちらもSonnar FE 35mm F2.8 ZAである。
「Carl Zeiss版」と「ZEISS版」で、別設計のレンズだと考えるのは少し飛躍がある。
しかし、ZEISS刻印のほうが新しいロットである
ただし、刻印の違いには意味がないとも言い切れない。
中古市場を見ていると、Carl Zeiss表記の個体より、ZEISS表記の個体のほうが比較的新しいロットに見える。
今回の写真でも、Carl Zeiss表記の個体とZEISS表記の個体がある。
外観はほぼ同じ。
しかし、表記だけが変わっている。
これはおそらく、ソニー純正ツァイスレンズの製造時期のどこかで、ブランド表記が整理されたためだろう。
昔ながらの「Carl Zeiss」という表記から、現在のブランド名としてよりシンプルな「ZEISS」へ。
レンズの中身を変えたというより、ブランド表記や外装デザインのルールが変わったと見るほうが自然だ。
写りが良くなったという噂はなぜ出るのか
SNSや中古カメラ界隈では、たまにこういう話が出る。
「ZEISS表記のほうが写りがいい」
「Carl Zeiss表記より新しいほうが当たり個体が多い」
「後期ロットのほうがコーティングが良いのでは」
これは完全に否定もできない。
しかし、断定もできない。
レンズは同じ型番でも、個体差がある。
前オーナーの使い方も違う。
保管環境も違う。
落下歴、片ボケ、曇り、チリ、絞り羽根の状態も違う。
つまり、中古で見たときの「写りの違い」が、刻印の違いによるものなのか、単なる個体差なのかは分かりにくい。
ただ、ZEISS刻印のほうが比較的新しいロットだとすれば、状態の良い個体に当たりやすい可能性はある。
ここが噂の正体かもしれない。
新しいロット=写りが良い、とは限らない
カメラ好きは「後期型」「新ロット」「対策品」という言葉に弱い。
これはもう仕方ない。
中古レンズを見ている人間にとって、ロット違いはロマンである。
しかし、レンズの場合は新しいロットだから絶対に写りが良いとは限らない。
むしろ、クラシックレンズの世界では逆もある。
古いロットのほうが味がある。
初期型のほうがコーティングが薄くて雰囲気が出る。
後期型は安定しているが、面白みは少ない。
そういう話も普通にある。
ソニー純正ツァイスの場合、現代レンズなので極端な差は出にくい。
Carl Zeiss刻印だから劣る、ZEISS刻印だから優れる、というより、状態の良い個体を選ぶほうが大事だ。
中古で買うならZEISS刻印は少し安心材料になる
では、中古で選ぶときに刻印違いは無視していいのか。
個人的には、完全には無視しなくていいと思う。
ZEISS刻印の個体は、比較的新しいロットである可能性が高い。
それだけで、使用年数が短い可能性がある。
ゴムの劣化、鏡筒のスレ、内部のコンディションなども、多少は有利かもしれない。
もちろん、これは絶対ではない。
新しいロットでも雑に扱われた個体はある。
古いロットでも、防湿庫で大切に保管された極上個体はある。
しかし、中古購入の判断材料としては、ZEISS刻印はひとつの目安になる。
同じ価格。
同じ状態。
同じ付属品。
それならZEISS刻印の個体を選びたくなる。
この感覚はわりと自然だ。
Carl Zeiss刻印にも魅力はある
一方で、Carl Zeiss刻印のほうに惹かれる人もいるはずだ。
なぜなら、文字としての雰囲気がいい。
Carl Zeiss。
この表記には、いかにもツァイスらしいクラシック感がある。
オールドレンズやCONTAX Zeissを好きな人ほど、Carl Zeiss表記に反応してしまう。
ただのブランド表記なのに、そこに歴史の匂いを感じる。
ZEISS表記は現代的でスマート。
Carl Zeiss表記は少しクラシックで味がある。
写りではなく、所有感で選ぶならCarl Zeiss刻印もかなり魅力的だ。
性能差より、ロットと状態の目安として見る
ソニー純正ツァイスレンズのCarl Zeiss刻印とZEISS刻印。
基本的な性能は同じと見ていい。
公式に別設計として扱われているわけではないため、写りが劇的に変わると考えるのは危険だ。
しかし、ZEISS刻印のほうが比較的新しいロットである可能性は高い。
そのため、中古市場では「少し新しめの個体かもしれない」という目安にはなる。
写りの違いを語るなら、刻印よりも個体状態。
ロットよりもコンディション。
表記よりも実写。
ただ、こういう小さな違いを見つけてしまうのが、中古レンズの面白さでもある。
同じSonnar FE 35mm F2.8 ZAでも、Carl Zeissと書いてある個体と、ZEISSと書いてある個体がある。
性能差はほぼないかもしれない。
しかし、見る人にはそこが気になる。
そして、その“気になる”こそが、レンズ沼の入口である。
(この記事には、アフィリエイトリンクが含まれます。)
いいなと思ったら応援しよう!
もし記事を気に入っていただけたら、チップをいただけると嬉しいです。より良い記事がかけることに投資させていただきます。