人間は、歳をとるほど切なくなる
歳をとるにつれて、寂しさや悲しさが増えていく。
そんなことを、最近よく思う。
もちろん、楽しいこともある。
若い頃には知らなかったことを知ったり、
昔は気にも留めなかったことに感動したりする。
人の気持ちも、少しは分かるようになった。
自分が何をしたいのかも、若い頃より分かってきた。
むしろ今になって、
「本当は、こういうことをやりたかったんだな」
と思うことさえある。
なのに――
気づいた時には、もう遅い。
知識は増えた。
経験も増えた。
少しだけ世の中のことが分かるようになった。
若い頃より、やる気だってある。
それなのに、身体は昔のようには動かない。
疲れる。
回復も遅い。
無理をすれば、そのツケが後からやってくる。
そして何より、
「もっと早く気づいていれば」
という後悔だけは、年々増えていく。
あの時、もっと勉強しておけばよかった。
あの時、もっと挑戦しておけばよかった。
あの人に、もっと優しくしておけばよかった。
あの時、あんなことで悩まなければよかった。
人生には、
「今なら分かるのに」
ということが、あまりにも多い。
でも、
分かった時には、もう戻れない。
それが歳をとるということなのかもしれない。
そして、子供がいる人なら、もう一つ寂しいことがある。
子供が成長していくことだ。
もちろん、それは喜ばしいことだ。
いつまでも親に頼っているより、自分の人生を歩いてくれた方がいい。
頭では分かっている。
分かっているけれど、
少しずつ自分のところから離れていく子供を見ると、
やっぱり寂しい。
小さかった頃には、
「早く大きくなってくれ」
なんて思っていたのに。
大きくなったらなったで、
「もう少し小さいままでいてくれてもよかったのに」
なんて思う。
人間というのは、本当に勝手な生き物だ。
若い頃は、
「早く大人になりたい」
と思う。
歳をとれば、
「もう少し若かったら」
と思う。
そして、若い頃には気づかなかったものが見えるようになった頃には、
今度は時間が足りなくなっている。
……なんなんだ、これは。
他の生き物のことは、よく分からない。
虫が何を考えているのかも知らない。
猫が老いについてどう思っているのかも知らない。
もしかしたら、人間だけが勝手に余計なことを考えているのかもしれない。
それでも思う。
人間って、なんてみじめな生き物なんだろう。
普通は、歳を重ねるほど楽しくなっていくものじゃないのか。
経験を積んで、
知識が増えて、
人間関係も落ち着いて、
若い頃より自由になって、
「人生って、なかなかいいものだな」
となっていくものじゃないのか。
長生きしたいわけじゃない。
永遠に生きたいわけでもない。
ただ、
この「分かりきった絶望感」を、どうにかできないものなのかと思う。
若い頃だって、秋になると少し切なかった。
夕方の空を見て、
「ああ、夏が終わるな」
なんて思ったりした。
理由もないのに寂しくなったりした。
でも、今は違う。
秋だから切ないんじゃない。
夕方だから切ないんでもない。
一歩歩くたびに、なんとなく切ない。
朝起きても、
夜眠る前も、
何気なく昔の写真を見ても、
子供の成長を見ても、
自分の身体の衰えを感じても、
「ああ、時間は戻らないんだな」
と思ってしまう。
それは、若い頃のような一時的な寂しさではない。
人生そのものに、薄く切なさが染み込んでいるような感じだ。
もちろん、
「年齢なんて関係ない」
という人もいる。
「今からでも遅くない」
「人生はこれから」
「やりたいことを始めればいい」
そう言いたくなる気持ちも分かる。
実際、そういう言葉に救われる人もいると思う。
でも――
そうじゃないんだよ。
そういう綺麗な言葉だけでは、どうにもならないこともある。
歳を重ねれば、残り時間が少なくなっていく。
身体も変わる。
親も歳をとる。
子供は離れていく。
友人も少しずつ減っていく。
昔の自分には戻れない。
そして、自分自身もいつか居なくなる。
そんなことは、分かっている。
分かっているからこそ、
「きついなぁ」
と思う。
人間は、なかなか大変な生き物だ。
生まれて、
成長して、
いろいろなことを経験して、
やっと少し世の中が分かってきたと思ったら、
今度は身体が衰えていく。
もっと早く分かっていれば。
もっと早くやっていれば。
もっと大切にしていれば。
そんな「もしも」を抱えながら、残りの人生を歩いていく。
……なんとも切ない。
でも、もしかすると。
この切なさを感じられること自体が、人間らしさなのかもしれない。
過去を思い出して、
誰かを懐かしんで、
失ったものを寂しく思って、
まだ見ぬ未来を少し怖がる。
そんな面倒くさいことをするのは、
ひょっとしたら人間くらいなのかもしれない。
だったら――
せめて、もう少しくらい、
人間以外の生き物になってみたい。
人生の意味とか、
老後とか、
後悔とか、
残り時間とか、
そんなことを何も考えずに生きてみたい。
そうだ。
来世があるのなら、
人間はもういい。
今度は、
虫でお願いします。
…なんて、虫に憧れてしまうくらい、
人間って切なくて愛おしい生き物なのかもしれません。
人生には「戻れない時間」や「どうにもならない切なさ」がありますが、
ルーンの知恵でも、変えられない過去を惜しむのではなく
**「今この瞬間の自分をどう抱きしめるか」**を教えてくれます。
年を重ねたからこそ見える景色や、あなたの深み。
「残り時間」をどう味わい、どう心を軽くして生きていくか。
モヤモヤした夜や、人生の切なさに押し潰されそうな時は、
ルーンの言葉に耳を傾けてみませんか?
