「租税教室」は税金の無駄遣い?その理由と改善策
みんな感じる重税感
「あれ?なんか最近、使えるお金が減ったような…」
ええ、気のせいではありません。気づけば国民負担率は驚異の50%目前!まるで、国民の半分が、せっせと国庫に貢いでいるかのようです。(もちろん、これは少し大げさな表現ですが…)。
追い打ちをかけるように、物価は右肩上がりでジェットコースターよりもスリリング。スーパーで震える指先を、さらに追い詰める社会保険料の高騰。「未来への投資」という名の請求書は、世代間の不公平感を増幅させている、という声も聞かれます。
そんな国民の悲鳴にも似た声が、ついに「減税」という二文字への熱烈なラブコールとなって、世論を形成しつつありますね。十年前と比べ、隔世の感があります。
だって、そりゃそうですよね。いくら頑張って働いても、給料の半分近くが徴税されるんですから。
「私の投票した議員は、ちゃんと仕事をしてくれているのだろうか?」
と、思わず夜空に問いかけたくなる気持ちも分かります。
……と、まあ、嘆いてばかりもいられません。
租税教室って知ってますか?
さて、ここでふと疑問に思うのは、未来の納税者たる子どもたちに税のイロハはどのように教えられているかということです。
多くの小中学校は、外部講師を呼んでの「租税教室」を行っています。国税庁も、自治体も勧めてるもんですから。その実態も知らずに…。
学校の管理職も「やりなさい」とプレッシャー掛けたりするんです。その実態も知らずに…。よい取組だと思ってるんでしょうね。その実態も知らずに…。(何遍言うんだ!)
私もね、若いときはやってましたよ。よい取組だと思って。
でもね。年取ってきて、いろいろ考えるようになったら、
「これ税金の無駄遣いだろ!」
と思うようになってきたんです。
「え?租税教室が税金の無駄遣いとは、どういうことだろう?」
と思われたかもしれません。確かに、本末転倒な話に聞こえますよね。
真面目な話。
国民負担率が50%に迫り、減税待望論が渦巻く現代において、学校の租税教室で「税金は社会を支える大切なもの!」と教えるだけでは、何かが決定的に違うのではないでしょうか?
では、「どうして租税教室が税金の無駄遣いと言えるのか」「どうすればよいのか」をこれから述べていきましょう。
租税教室とは?
まず、国税庁のHPを見てみましょう。

ゲーム・クイズ、ビデオライブラリー、講師用マニュアルなど、教材は多岐にわたります。社会科を専門とした教員であれば、ここの教材を使ってしっかりとした授業ができるようになっています。
そして、こんなことも書いてあります。
また、租税教育推進協議会(※)では、講師を学校に派遣し、税について様々なお話をさせていただいております。
※ 租税教育推進協議会とは・・・
教育機関と税務当局(国税・地方税当局)、税理士会等の関係機関が協力し、租税教育の充実を図ることを目的に設立された団体。
税のプロフェッショナルが来て、子どもたちに教えてくれるのです。
ありがたいことに、費用は一切かかりません。
私も若い頃は、租税教室に大きな期待を寄せていました。社会科を専門としてきたため、「専門家による素晴らしい授業から学べる良い機会だ」と謙虚な気持ちでいたのですが、回を重ねるごとに失望するようになりました。
その理由は…。
租税教室の現実
いよいよ、租税教室の現実にズームイン!
未来の納税者育成の現場では、一体どんなドラマが繰り広げられているのでしょうか?
まず、講師の方です。
多くの場合、派遣されるのは国税職員の皆さん…の中でも、フレッシュな若手ホープたちがほとんどです。
租税教室は、若手職員の研修の場となっている場合もあるようです。
ただ、税の知識は豊富でも、教えるスキルは発展途上ということもあるかもしれません。
45分の授業の展開は、だいたい次のとおりです。
1 税金についての説明(HPに掲載されているスライドの一部を使う)
2 ビデオの視聴
「マリンとヤマト 不思議な日曜日」
あらすじ:
主人公となるマリンとヤマトが、「税金なんてなくなればいいのに!」という願いをします。
その願いが叶いマリンとヤマトは「税金が廃止された世界」というパラレルワールドのような世界を体験することになります。その世界で待ち受けるのは、以下のような状況です。
消防: 消防署が会社となり、消火後は、火災発生の家に多額の費用が請求されます。費用が払えない人が増えて、消防士の父の給料が下がります。
ゴミ処理: ゴミ収集する会社が潰れ、街はゴミであふれかえり、悪臭が漂い、衛生状態は最悪になります。
道路・交通・救急車: 道路が私道となり、通行料が請求されます。信号機も維持されず、交通事故が多発する危険な状況が描かれます。事故が起きてもお金がない人は救急車を呼べません。橋が壊れても直されていません。
警察: 警察は、有料でサービスをします。(道案内200円・落とし物保管300円・パトロール5,000円、犯人逮捕20,000円など。)
公園・公共施設: 公園は維持管理ができないため、なくなります。
マリンとヤマトは、元の世界に戻ることを願い、戻ります。
元の世界で祖母から
「税金はみんなが豊かで夢のある生活をおくるためにあるんだからね。だからこそ上手に使わなきゃいけないんだ。」
と教えられる。
父は「税金の使い方を決めるのは選挙で選ばれた人たち。」
と教える。
※ 声優で野沢雅子さんが出ています(笑)。
3 1億円のレプリカを体感する。(大きさ、重さ)
上記サイトの商品が活用されているようです。
面白い活動ではありますが、授業で行う意図が私には分かりかねます。
では、問題を一つ一つ考えていきましょう。
租税教室の問題点1:講師が「教育」の素人
講師は、税務署の職員や税理士が派遣されますが、税のプロであっても、小学生に教えることは素人なんです。
教員を志し、教育学部で学んだ新採用でも、だいたい1か月ほどは授業が成立せず、子どもたちに助けられる毎日です。
教壇に立ったことのない人がパッと入って授業を成立させられるわけがないのです。1時間の飛び込み授業は、ベテラン教員でも十分な準備が必要です。教育現場は、素人が簡単に授業を行えるほど単純ではありません。
そのため、マニュアルに沿った簡単な授業になりがちです。
また、講師がマニュアルにない内容を話すことは、後々のトラブルに繋がる可能性があるため、自由な授業は難しいと考えられます。(税務署の管理職であれば話は別かもしれませんが。)
租税教室の問題点2:何をしたいか分からない授業構成
授業には、「このことを身に付けさせる」「このことを考えさせる」といったようなねらいがあります。
先ほどの授業構成は、何がねらいなのでしょうか?
1 税金についての説明
このねらいは、分かりますね。税についての基礎を知る部分です。
2 ビデオの視聴「マリンとヤマト 不思議な日曜日」
税のある世界とない世界を見せて、「税金の大切さ」を知らせる、というねらいでしょう。
しかし、税金のない世界という極端な設定は、現実離れしているのではないでしょうか。子ども向けとはいえ、SFのような内容で恐怖心を煽るのは適切ではありません。
私には、まるで怪しい宗教の「洗脳ビデオ」のように感じます。(善悪二元論的な構成が似ていると感じます。)
3 1億円のレプリカを体感する。
意図が不明です。
子どもたち全員に触らせるために約10分も使うのは、時間の浪費と言わざるを得ません。
「租税教室 1億円」で検索すると多くの実践例が出てきますが、その意図が明確なものは少ないように感じます。このような活動のために税の専門家を呼ぶのは、もったいないのではないでしょうか。
租税教室の問題点3:片面的な刷り込みでは?
租税教室の小学生用教材をてみましょう。

教材では以下の点に重点が置かれています
・税の種類や制度の仕組み
・税によって支えられている公共施設・サービス
・民主主義と税の関係性(「使い道をみんなで決める」)
しかし、次のような要素が欠けています
税負担の重さ:「国民の税負担率」などの数値は記載なし
税の逆進性や公平性:消費税が所得の少ない人により重くのしかかる現実
無駄遣いや補助金:「どう使われているか」の批判的思考は薄い
所得と課税の関係:「誰がどれだけ負担しているか」の話は皆無
なぜ租税教室では、「税の負担」「税の無駄遣い」「既得権益層への優遇」といった側面に触れないのでしょうか。
その理由として、「政治システムへの信頼を促したい」「教育が政治的なものになることを避けたい」「税の負担感や再分配の不公平に触れたくない」といった、政策的・制度的な意図が考えられます。
税金(社会保険料を含む)が増え続けている現状を考えると、税負担について教えることは不可欠です。
このグラフは、私が3年前に社会科の授業で使用した資料です。グラフを示すだけで、子どもたちの税金に対する意識が大きく変わりました。
1億円のレプリカを触らせるよりも、ずっと有意義な時間の使い方だと思います。

国税庁の教材を見ると、租税教室の意図が見えてきます。
それは、「税金は良いものだから、しっかり納めなければならない」という意識を植え付けることではないでしょうか。
税の作文募集なども、同様の意図があると考えられます。
(私自身が中学校の教員であれば、「経済と減税」「税金の不適切な使われ方」「不適切な補助金」などをテーマに作文を書かせるでしょう。)
社会科の目標は、「公民としての資質を養う」ことです。私はそれを、「より良い社会を築くために必要な教養を身につけること」だと考えています。社会の仕組みに疑問を持たず、ただ従う人間を育てることではありません。税金は国の根幹に関わる重要な事柄です。小学生に対しても、思考停止に陥らせない教育が求められます。
租税教室の問題点4:教科書に載ってるよ!
教育出版の6年社会科の教科書です。(わざとぼかしてます。)

2ページにわたり、掲載されています。資料としては、国税庁のものの方が詳しいですが、教える内容はほぼ同じです。
つまり、租税教室の内容は、社会科で教えることとまったく同じなのです。
担当教員が教科書と資料を用いて授業を行えば十分ではないでしょうか。
教員が教科書の内容に補足的な情報や批判的な視点を加えることで、バランスの取れた学びが実現します。
今の租税教室の在り方では、せっかくプロが来る貴重な1時間を「洗脳ビデオ」の上映や1億円のレプリカを触るといった活動に費やすことになりかねません。
何で「租税教室」が税金の無駄?
官公庁が事業を行うには予算が必要です。その予算は税金から賄われます。本来やらなくてもよいことをわざわざ行うのは、税金の無駄遣いと言わざるを得ません。
また、租税教室を実施すると、参加人数分の「参加賞」が提供されることがあります。(都道府県によって異なるかもしれませんが、私の県では文房具のセットでした。)
講師を招かずに租税教室を実施する場合でも、資料を請求すれば「参加賞」を入手できます。私自身が租税教室を行った際も、「参加賞」のみ受け取りました。後になって、この「参加賞」を「税金の無駄遣いの例」として紹介すれば良かったと考えました。
「租税教室」単独で行っては、社会科の学習として成立しない
税金は義務として納めるものだという教育だけでは、社会科の学習として不十分です。政治参加について考えるきっかけを与える必要があります。したがって、税金の話と国会・選挙の話は切り離すべきではありません。
国会や地方議会の役割を簡単に言うと、「税金の使い道を決定する場所」ということになります。したがって、選挙は「税金を管理する人を選ぶ機会」と捉えることができます。
政治家は、有権者を惹きつけるのが上手いと言えます。
「子育て支援の充実」
「高齢者福祉の拡充」
「教育への投資」
など、「魅力的な公約」を掲げて支持を集めようとします。
しかし、これらの公約には「税金が投入される」という側面があることを忘れてはなりません。選挙の際、立候補者は、絶対に口にしませんけど。選挙公約には「見えない毒」が混じっているのです。
今、話題になっている政治的な問題を列挙してみます。
103万円の壁、選択的夫婦別姓、社会保障費改革、再エネ付加金、防衛費増額、外国人参政権、外国人生活保護
皆さん、これらのことを考えて投票行動をしていますか?
難しいですよね。
しかし、これらの政策に「値札」を付けて考えてみたらどうでしょうか。
自分がお金を払ってもよいもの、絶対自分のお金を払いたくないものは優先順位が付きますよね。
これが投票の際の判断基準の一つになります。
もちろん判断基準は、多いのに越したことはないです。
でも、私は、選挙に行かない多くの人たちは、公約に対する判断基準を一つも持っていないのではないかと考えています。
選挙公約や政策を「自分の払うお金の対価」に換算して国会・選挙について学ぶことで、税金の使われ方に関心を持つことができます。
税金の学習は、「租税教室」という形で独立して行うべきではありません
「租税教室」を税金の無駄遣いにしないためには
講師を招き、「参加賞」を受け取ることが、いかに税金の無駄遣いで意味のないことであるか、ご理解いただけたでしょうか。
では、どうすればよいか、まとめてみましょう。
・租税教室の内容を社会科の授業に組み込み、教師(あるいは社会科担当教員)が授業を行う 。単独の授業は行わない。
・税金の使い方を考える上で、選挙の重要性を強調し、政治参加への意識を高める 。
・選挙公約や政策を具体的な金額に置き換えて評価する方法を教えることで、税金に対する意識を高め、主体的な政治参加を促す。
私はどんな授業をしたのでしょうか?
私は、今まで書いてきたような問題意識をもってきました。
そこで、6年担任や社会科主任には、
「『租税教室』には申し込まないこと。代わりに私が授業を行う。」
と言って、授業をしてきました。
もちろん、社会科の教科書を使って、今まで述べたことを教えます。
2時間扱いになります。
作成したスライドは、66枚になりました。
最後に私の授業の内容をお示しして、終わりにします。
※教科書の画像をスライド内に使っているので、スライド自体は著作権上、公開できません。
内容は以下のとおりです。
(スライドをGeminiに要約させたものです。)
・ 日本国憲法に定められた国民の権利と義務をイラストで提示し、「納税の義務」が含まれていることを示す。
・ 税金が国の政治を行うための費用として徴収され、使用される仕組みを解説。消費税の仕組みや、税金が教科書などの身近なものにも使われていることを紹介。
・東京都八王子市で行われた租税教室の様子を紹介。
・ 税金が国の事業だけでなく、地震などの災害支援にも活用されることを解説。
・ 消費税の仕組みや税金の使われ方に関する○×クイズを出題し、重要なポイントを確認。
・税務署の人の話として、税金が教科書などの学校で使うものにも使われていること、税金を納めることは国民の義務であることなどを解説。
・税金に関する○×形式のクイズを出題し、税金の使い道や、税金を納める義務など、重要なポイントを確認 。
・税金の使い道は、選挙で選ばれた議員が決めることを説明し、選挙の重要性を強調 。
・税金が、公共施設や道路の整備、消防や警察の活動、福祉、教育など、様々な分野で使われていることを説明 。
・議員や閣僚の給与、国の税収などを紹介 。
・所得税や消費税、法人税等、税金の種類や税率、税収の内訳などを説明。
・国税、県税、市町村税の種類を説明 。
・税金の使い道に関して問題提起 。
・税金が国民生活に必要なものに使われていること、税金の使い道を国民が見ていくことが大切であることでまとめている 。
資料の特徴イラストや写真が豊富: 児童の興味を引きやすく、理解を助ける工夫がされています。
クイズ形式の導入: 学習内容の定着を図り、参加意欲を高める効果があります。
身近な例の提示: 教科書など、児童にとって身近なものが税金で賄われていることを示すことで、税金をより自分事として捉えさせることができます。
選挙との関連付け: 税金の使い道は国民の代表である議員が決めることを説明することで、選挙の重要性を教えています。
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