株で増えたのは、お金じゃなかった。
「NISAってやってる?」
大学時代、友人にそう聞かれた。
正直、何を言っているのか分からなかった。
「ニーサ?」
人の名前かと思った。
その場では笑ってごまかしたけれど、会話にはまったくついていけなかった。
その頃、友人たちの間では、
「S&P500」
「積み立てNISA」
「インデックス投資」
そんな言葉が当たり前のように飛び交っていた。
でも、自分には全部外国語のように聞こえた。
「投資なんて、お金に余裕がある人がやるものだろう。」
そう思っていた。
投資は、自分とは関係のない世界だった
当時の私は、教員免許を取得するために一般的な学生より2年長く大学に通っていた。
社会人になるのも周りより遅い。
収入といえばアルバイト代くらい。
大学の学費も自分で工面していたから、生活は必要最低限だった。
だから投資は、自分には縁のない世界だと思っていた。
社会人になって、収入が安定してから考えればいい。
その程度の認識だった。
教師になってからも毎日はあっという間だった。
授業をして、部活動をして、校務をして、気づけば一日が終わる。
投資を勉強する時間なんてない。
そう思いながら数年が過ぎていった。
人生を変えたのは、高校時代の担任だった
そんな自分の考えを変えたのは、高校時代の担任の先生だった。
しかも、その先生とは縁があって、今は同じ学校で一緒に働いている。
高校時代は教わる側だった先生と、同じ職員室で働いている。
人生は本当に分からない。
ある日、ゆっくり話をする機会があり、そこで初めて知った。
先生は教員になる前、証券会社で働いていたという。
正直、驚いた。
英語を教えている先生だから、ずっと教育の道だけを歩んできた人だと思っていたからだ。
そして同時に、自分が「学校の先生は学校しか知らないもの」と勝手に決めつけていたことにも気づいた。
先生は株価の話よりも、「金融の世界のおもしろさ」を語ってくれた。
世界情勢。
為替。
企業。
経済。
全部がつながっているという話だった。
最後に、こんな言葉をかけられた。
「毎日、新聞を読んでみな。」
最初は、何も分からなかった
それから学校で少し時間ができると、日経新聞を開くようになった。
もちろん最初は何も分からない。
TOPIX。
利上げ。
為替介入。
知らない会社名。
知らない言葉。
まるで外国語を読んでいるようだった。
5分で閉じる日もあった。
それでも次の日、また開いた。
少しずつ、世界がつながり始めた。
ニュースを見る。
企業を調べる。
チャートを見る。
円高になれば理由を知りたくなる。
アメリカの金利が上がれば、「そもそも金利って何だろう」と調べる。
半導体関連のニュースが出れば、その背景まで気になる。
気づけば、学生時代の自分なら絶対に読まなかった記事を毎日読むようになっていた。
その時、ようやく分かった。
株は、お金を増やすためのものだけじゃない。
世界の流れを知る、そのための入口なんだ。
怖かったけれど、一歩踏み出した
そこから重い腰を上げて、証券口座を開設した。
もちろん怖かった。
「もし全部なくなったらどうしよう。」
そんな不安は何度も頭をよぎった。
最初は少額から。
恐る恐るボタンを押すだけなのに、心臓が少し速くなった。
でも、一歩踏み出したことで景色は変わった。
自分のお金が企業を通して社会とつながる感覚。
ニュースが「誰かの話」ではなく、「自分にも関係のある話」になる感覚。
それが新鮮だった。
今では少しずつ個別株にも挑戦している。
もちろん余剰資金の範囲で、勉強しながら。
教師という仕事は安定している。
その一方で、収入にはある程度の上限もある。
年功序列という仕組みの中で働く以上、大きく収入を増やすことは簡単ではない。
だからこそ、その安定を土台にしながら、お金にも働いてもらう。
そんな考え方を少しずつ学んでいる。
本当に始めたかったのは、投資じゃなかった
でも、今振り返ると。
自分が始めたかったのは投資ではなかった。
挑戦だった。
知らない世界を知ることだった。
世界を広げることだった。
そして、何より
「やってみること」
だった。
教師になってから、生徒にはよくこう伝えている。
「まずはやってみよう。」
部活でも。
勉強でも。
進路でも。
挑戦してみないと、自分に合うかどうかなんて分からないから。
でも、一番その言葉を聞くべきだったのは、
自分自身だった。
NISAという言葉すら知らなかった自分が、今では経済ニュースを読み、企業について調べ、世界の出来事に興味を持っている。
人は、知ってから挑戦するんじゃない。
挑戦したから、知ることができる。
株を始めて一番増えたのは、お金じゃなかった。
自分の世界だった。
だから今日も少しずつ勉強している。
投資も。
英語も。
文章を書くことも。
全部、自分の世界を広げるために。

専門用語も多い世界ですが、イラストや図解が豊富でとても分かりやすく、「投資って意外と面白いかも」と思えた一冊です。
これから株を勉強してみたい人や、何から始めればいいか迷っている人には、最初の一冊としておすすめできます。
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