【温泉ブログシリーズ】第154弾つなぎ温泉:平安の伝説と現代の癒し ―― 950年の時を超えて愛される盛岡の奥
今回ご紹介するのは、岩手県盛岡市にある「つなぎ温泉」です。
盛岡駅からわずか30分。都会の喧騒を離れると、そこには御所湖のほとりに広がる、穏やかな湯の郷が現れます。雄大な南部富士と讃えられる岩手山、広大な湖面に映る四季の表情、そして950年という悠久の歴史が息づく温泉地。
まさに「盛岡の奥座敷」と呼ぶにふさわしい、この場所の物語をお伝えしたいと思います。
まずは、この温泉の名の由来となった伝説をひも解いてみましょう。
950年前の馬と兵士の物語
つなぎ温泉の名前の由来は、感動的な歴史の物語です。
今からおよそ950年前、平安時代末期(前九年の役の頃)。源義家(八幡太郎)が陸奥国の平定のため、この地に本陣を張っていました。前九年の役という激戦の中、義家は傷ついた愛馬をこの温泉で洗って癒したのです。馬の傷は見事に治り、その効能に感動した義家は、自らもこの湯に浸かりました。
その時、義家が愛馬をつないだのが、近くにあった穴の開いた石。高さ1.1メートル、幅1.6メートルの「つなぎ石」。その石の名前から、この温泉は「つなぎ温泉」と呼ばれるようになりました。
その伝説の石は、今も温泉街に保存され、訪れた人々の心を打ち続けています。馬も兵士も、950年前のあの瞬間と同じように――ここで心と体を癒すのです。
女性が虜になる「美肌の湯」の正体
つなぎ温泉は、六つの源泉から北東北有数ともいわれる毎分2000リットルの温泉が湧出しています。
泉質は単純硫黄泉(低張性アルカリ性高温泉)。pHは8.7~9.5という非常に高いアルカリ性が特徴です。「低張性」とは、肌に優しく水分を吸収しやすい性質のこと。人体より低い浸透圧なため、お肌がぐんぐん温泉の恵みを吸い込むような感覚を味わえます。
硫黄成分は血行と代謝を促進し、アルカリ性のお湯は肌の表面にある古い角質を優しく落とす作用があります。さらに注目すべきは、「天然の保湿成分」と言われるメタケイ酸が含まれていること。つまり、このお湯そのものが化粧水なのです。
入浴後、お肌はしっとりと潤い、まるでスペシャルケアを受けたような潤い感が続きます。刺激が少なく体に優しいからこそ、赤ちゃんからお年寄りまで、みんなが長時間浸かっていられる。それが「つなぎ温泉のお湯」の秘密です。
湖畔の絶景露天風呂で時間を忘れる
つなぎ温泉街に立ち並ぶ宿は、御所湖を一望できる絶好の立地ばかり。
「湯守ホテル大観」は、北東北最大級の広さを誇る大浴場「大観の湯」を備えています。自社管理の湯畑から自然湧出した源泉100%かけ流し。およそ25メートルの広々とした浴槽から、御所湖と岩手山を一望できます。
「ホテル紫苑」の露天風呂「ひとりじめの湯」は、その名の通り。御所湖を独占するかのような、解放感に満ちた絶景が広がります。全室レイクビューという贅沢も魅力。
「愛真館」では湯めぐりが楽しめ、その数なんと18種類。縄文時代をモチーフにした庭園縄文風呂、かわいらしいカッパやパンダをモチーフにした風呂など、訪れるたびに新しい出会いが待っています。
これらの宿で過ごす時間は、単なる入浴ではありません。湖と山と湯が織り成す、まさに一期一会の世界が、そこにあるのです。
四季が宝石のように輝く景色
つなぎ温泉の真の魅力は、四季折々に変わる絶景です。
春――桜並木が湖畔を彩り、残雪の岩手山とコントラストを成します。4月下旬から5月上旬、小岩井農場の一本桜と岩手山の組み合わせは、まさに絶景です。
初夏――「チャグチャグ馬コ」という、馬にまつわる伝統的な祭りが開催されます。つなぎ温泉の由来と同じく「馬」を大切にする岩手の文化が、ここに集約されています。
夏――新緑の木々が風に揺れ、湖面がきらめきます。夜には、ホタルの光が湯けむりに溶けて、幻想的な光景が広がります。尾入野湿生植物園では、梅雨時に2万5千本のかきつばたが咲き誇ります。
秋――紅葉が湖を包み込み、湯船から眺める黄金色の山肌は、息をのむ美しさです。葛根田渓谷の紅葉も見事で、ドライブの合間に立ち寄る価値があります。
冬――一面が雪に覆われ、静寂の中に湯けむりが立ち上る。湯面に映る白銀の世界は、まさに一枚の日本画そのもの。この季節の「雪見露天」こそが、つなぎ温泉の最高の醍醐味。岩手の寒い冬でも、湯温が高いため十分に露天風呂を堪能できます。
昭和55年の歴史的転機
実は、つなぎ温泉には知られざる物語があります。
昭和55年、御所ダムの建設により、かつての温泉街は湖に沈みました。雫石川沿いの野趣に富んだ渓流美で知られた元の温泉地は、今、湖底に眠っています。
しかし、この試練を乗り越え、温泉は現在の御所湖畔に移転し、新たに生まれ変わったのです。950年の歴史を持つこの温泉が、その後約45年を経たいまも、多くの人々を癒し続けている。その事実そのものが、この温泉の価値を物語っています。
北東北の観光拠点としての利便性
つなぎ温泉の周辺は、北東北を代表する観光地で囲まれています。
車で5分の「盛岡手づくり村」では、南部鉄器や藍染めなどの伝統工芸を体験できます。南部煎餅の手作り体験も人気です。
車で15分の「小岩井農場まきば園」では、羊や牛、馬とのふれ合い、乗馬体験やバターづくりなど、家族向けのアクティビティが豊富。A5ランクの前沢牛を使ったジンギスカンも堪能できます。
さらに視野を広げれば、八幡平は1時間半、田沢湖は40分、平泉は1時間、宮古浄土ヶ浜は2時間。北東北の観光拠点として、つなぎ温泉の立地は最高です。そのため、宿泊を拠点に岩手県内外の周遊旅を楽しむ旅行者にも人気があります。
御所湖ではカヌーやウインドサーフィン、ルアーフィッシングなども楽しめ、冬には雫石スキー場へのアクセスも容易です。
心と身体を「つなぐ」場所
湖畔に立ち、湯けむりに包まれるとき――。
950年前、馬が傷を癒したように。その後も多くの人々が心身の疲れを癒してきたように。
今度はあなたの番です。
穏やかな湯に身を委ね、時を忘れて、御所湖と岩手山が織り成す絶景を眺める。その時間の中で、あなたの心と体は、自然と「つなぎ」直されるはずです。
盛岡の奥座敷、つなぎ温泉。
950年の歴史が紡いだこの場所で、あなたも「心と体をつなぐ」癒しのひとときを体験してみませんか。
