濡れるけど行く
どうしても向こう岸に渡りたかった。
一メートルくらいの幅の川。
川から海に変わる場所で、
流れはあるけど、深くはない。
濡れずに渡れるはずがない。
転ぶかもしれない。
運動が得意じゃないわたしは、
いつもなら、そう思う。
まだ三月下旬で、
水は冷たいはずなのに、
それより向こう岸の方が気になっていた。
濡れるから行かない、でもなくて
安全だから行く、でもなくて
濡れるけど行く、
っていう選び方もあるなと思った。
わたしは、飛んだ。
案の定、うまく飛べずに手をついて
靴もズボンも全部、びしょ濡れになった。
でも、それでよかった。
ほら、渡れた。
濡れたら乾かせばいい。
それだけだった。
