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花のいのちは短くて【せりふ三題噺】【アップグレード名札夜桜】

桜もいつの間にか満開だったんだな。トイレに行くために席を外し、通路沿いの大きな窓越しに見た満開の夜桜。闇に薄ピンクが映えて美しかった。
多忙だったここ1か月間は、季節の移ろいを感じる余裕もなかった。
「では、4月3日で調整よろしく」
任命されたのは半年前。入社5年目の自分に回ってきた初のリーダー役は、新入社員歓迎パーティーを取り仕切ること。同期の社員数人とチームを組んで準備を進め、ようやく今日のこの日を迎えたのだった。
会場は料理が美味しいと評判のホテル。さらに、当初組まれていた予算よりかなり抑えることが出来たため、予定の料理のコースをアップグレードしてもらっていた。会場のあちらこちらから、料理を称賛する声が聞かれる。
司会の進行もスムーズで和やかな雰囲気の中、会も順調に進んでいき、無事にお開きとなった。会場の扉の前でお見送りの時、真新しいスーツに新しい名札を首から下げた新入社員たちは、皆一様に満足の表情を浮かべていた。
良かった、成功だったな、とチームのみんなとグータッチした。直属の上司からもお褒めの言葉をもらい、無事に終わった達成感の中、撤収作業を終えた。チームの打ち上げ会は後日行うことにして、我々も解散しそれぞれ帰路に着いた。
外の気温は心地良かったが、風が少し出てきていた。これから天気が崩れるのかもしれない。途中桜並木のある公園を通ると、満開の花で重たげに揺れている枝から、ピンクの花びらが溢れ始めていた。だんだん強くなっていく風が、落ちた花びらを舞わせていた。この満開の桜も今週末には散ってしまうだろう。
こうして季節は変わっていく。
明日は平日、通常勤務だ。歓迎パーティーをやり遂げた達成感と自信を胸に、また頑張ろう、先ずは早く帰って休もうと家路を急いだのだった。

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