見出し画像

藤棚の君【せりふ三題噺】【サンダル日焼け止め藤棚】

明日、藤棚を見に行こう
と彼女からのデートの誘いがあったのは、金曜日の夜のことだった。来週からのゴールデンウィークにはどこか行こうとプランを練っていたとこだったが、連休中よりは若干空いてるだろうし、明日行くことにした。
車で2時間くらい、有名な藤棚があるその場所は近辺に川下りや、歴史的に有名な建築物、情緒ある街並みもあり、観光客も多い。
次の日、朝から天気もよく絶好のドライブ日和。ただ気温も徐々に上がってきており、ちょっと暑くなりそうな気配もする。
早い時間帯に出たため、渋滞にも遭わずスムーズに到着。駐車場はぼちぼち車が集まり始めていた。
車から降りる前に彼女が、日焼け止めを塗るのを忘れたので塗りたいと言った。
服から出ている首すじや、手首から手の先、メッシュになったグルカサンダルを脱ぎ、足首から足甲にかけても丁寧にクリーム状の日焼け止めを塗る。
つい最近まで寒くて、あったかブーツ履いていたのにね、春が短くて一気に初夏みたいだよね、と言う彼女のあまりに白い足甲に、俺はドギマギしていた。
車から降り道順に沿って行くと、大きな鳥居に着いた。ここの藤棚は神社の境内にある。中に入ると前方に紫のトンネルが見えた。この時すでに藤の香りは、風に乗って鼻先まで届いていた。誘われるようにトンネル内に吸い込まれてみれば、藤の花の持つ華やかと古風な淑女のような佇まいに圧巻された。
写真撮ろうと彼女に言われ2人で撮った。藤棚の隙間から差し込む光が彼女の白い肌を柔らかく射し、美しくみせた。
一通り周り駐車場に帰る途中、彼女が足を少し引き摺っていることに気づいた。久々に履いたサンダルで靴擦れが出来たようだ。
ごめんと謝る彼女に、大丈夫?と言って、近いのベンチに座らせた。サンダルを脱がせ、靴擦れ部分に絆創膏を貼った。きれいなピンクのペディキュアを施した白い足甲に絆創膏が痛々しい。彼女は恥ずかしそうに、ありがとうと言った。

私ね、あなたのことを藤棚の君って密かに呼んでたのよね、中学の時。
彼女が話し始めた。
俺と彼女は同じ中学出身で、高校は別々、同じ大学に進学し再会。そこから付き合いだし、今に至っていた。
あなた、部活の集合場所が中庭の藤棚のとこだったでしょ?そこでたまたま早めに来てたらしいあなたが一人ストレッチしてて、、その時のあなたの真剣な横顔がきれいで
一目惚れよ、と彼女が照れたように笑った。
そこから藤の花は私にとってラッキーアイテムみたいな、だってあなたの魅力に気付かせてくれたんだから。
俺も。俺もあの場所から見える、渡り廊下をクラスメートと笑いながら歩く彼女を見てドキドキしてたよ。
お互い、あの時から惚れてたんだね。
顔を見合わせ笑った。


いいなと思ったら応援しよう!