【第17章】スペインでもヒッチハイクをやってみた
この日は、
サンセバスチャンから海岸沿いを西へ進むことにした。
久しぶりのヒッチハイクだった。
ユースホステルの近くに、
ビルバオ方面へ向かう大きな道路がある。
前日にも誰かがヒッチハイクをしていたので、
そこへ行ってみると、
すでに三、四組が車を待っていた。
私は段ボールを拾い、
「BILBAO from JAPAN」
と書いた。
「from JAPAN」が効いたのか、
先に待っていたカップルを追い越して、
一台の車が止まった。
運転していた男性は、
どうにか英語を話した。
ただ、運転しながら地図を広げ、
こちらを向いて話すので、
助手席の私は気が気ではなかった。
車窓には、
緑の牧場と丸い丘が続いていた。
どこか、
日本の田舎にも似ている。
途中でコーヒーまでご馳走になり、
ビルバオの少し手前で車を降りた。
カードを、
「SANTANDER from JAPAN」
に書き換える。
そこから二台目の車でビルバオへ着いた。
だが、
ビルバオからが長かった。
強い日差しと排気ガスの中、
二時間半ほど待ち続けた。
午後五時を過ぎて、
ようやく一台が止まった。
少し先まで乗せてもらい、
そこからは再び順調に車をつかまえた。
その中で、
特に印象に残った人がいる。
アヘンさんという、
三十三歳の男性だった。
サングラスの似合う、
なかなか格好のいい人だった。
彼は、
ノヤという町でキャンプをしている
妻と息子のもとへ向かう途中だった。
私は覚えたばかりのスペイン語を使い、
必死に会話をした。
息子の話になると、
「ブエノ・ニーニョ。良い子なんだ」
と言って、
嬉しそうに顔を崩した。
海岸沿いを走りながら、
「エル・マール・ボニータ。
この海は美しい」
とも言った。
実際、
車窓の海は美しかった。
別れ際、
アヘンさんはビールをご馳走してくれ、
タバコを一箱渡してくれた。
「ミキとアヘンの友情の印だ」
と言った。
その後も車を乗り継ぎ、
午後八時過ぎ、
ようやくサンタンデールへ着いた。
サンセバスチャンを出たのは正午ごろ。
六台の車を乗り継ぎ、
約二百キロ。
ヒッチハイクも、
なかなか大変である。
急いで宿を探したが、
案内所はすでに閉まっていた。
ユースホステルらしい建物まで行ったものの、
そこにいた若者から、
「残念ながら、ここではない」
と言われた。
ほかの宿を探すのも面倒になり、
この日も海岸で眠ることにした。
ハンバーガーとビールで腹を満たし、
砂浜へ向かう。
途中で会った日本人女性から、
「このあたりは安全だから、
海岸で寝ても問題ない」
と聞いた。
夜の砂浜には、
ほとんど人がいなかった。
私は砂浜の真ん中にゴザを敷いた。
六台の車を乗り継いだ一日は、
海のそばで終わった。
—
この旅の断片を、静かに綴っています。

