小学校低学年における『振り返りの型』の効果3つ
メタ認知を促し学習を自己調整する手立てとしての「振り返りの型」の効果
小学校第2学年国語科の授業実践から
木村明憲 ( 桃山学院教育大学人間教育学部 )
渡邉文枝 ( 早稲田大学データ科学センター )
宗實直樹 ( 関 西 学 院 初 等 部 )
「今日の勉強、どうだった?」ご家庭や学校で、子どもたちにこう問いかけることは日常的な光景でしょう。しかし、返ってくる答えは「楽しかった」「まあまあだった」といった漠然としたものが多く、子どもたちが具体的に何をどう学んだのか、何に躓いたのかが見えにくいと感じたことはありませんか? 子ども自身、どう振り返れば良いのか分からずにいるのかもしれません。
もし、たった4つの質問で構成されたシンプルな「型」にはめて考えるだけで、小学2年生でも自分の学びを深く見つめ、次のステップへと繋げられるようになるとしたら、どうでしょうか。
この記事では、ある小学校で行われた「振り返りの型」に関する実践研究から明らかになった、子どもたちの学習能力を高める3つの効果をご紹介します。
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1. 「型」があれば、小学2年生でも「メタ認知」ができる
この研究では、小学2年生30名を対象に、毎回の授業の終わりにシンプルな「振り返りの型」を使って自分の学びを記述してもらいました。その型とは、以下の4つの視点です。
うまくいったことは~です。(成果の自己評価)
なぜなら、~だからです。(成果の原因帰属)
うまくいかなかったことは~です。(課題の自己評価)
なぜなら、~だからです。(課題の原因帰属)
驚くべきことに、実践の最初の授業から、多くの児童が「うまくいったこと」については具体的に記述することができました。これは、子どもたちが自分の成功体験を認識し、言葉にする力を持っていることを示しています。
この結果がなぜ重要なのでしょうか。一般的に、小学校低学年のうちは、自分の学びを客観的に見る力はまだ発達の途中だと考えられています。だからこそ、このシンプルな「型」が、これほど早くから子どもたちのメタ認知を引き出したという事実は、大きな発見であると思います。
メタ認知とは、いわば「頭の中のもう一人の自分」が、勉強している自分を応援したり、アドバイスしたりするようなものです。この「もう一人の自分」を育てるための、最初のステップがこの「型」だったのです。専門家が使うような言葉を聞くと身構えてしまいますが、このようなシンプルな足場さえあれば、低学年の子供でも自分の学びを客観的に評価する「学びのプロ」としての第一歩を踏み出せるのです。
2. 本当の成長は「うまくいかなかったこと」と向き合うことから始まる
この研究で最も興味深い発見は、「うまくいかなかったこと」に対する子どもたちの姿勢の変化でした。
実践の初期段階では、「うまくいったこと」に比べて、「うまくいかなかったこと」やその理由を記述する児童は少数でした。これは、大人も子どもも同じで、自分の失敗や課題から目を背けたくなる自然な傾向かもしれません。
しかし、この振り返りを10時間にわたって繰り返す中で、変化が起こりました。単元の前期と後期を比べると、「うまくいかなかったこと」を記述する児童の数ははっきりと増加しました。特に驚くべきは、うまくいかなかった「理由」(課題:原因帰属)を記述した児童の数が、単元の前期の8人から後期には31人へと、約4倍にまで増加したことです。
この結果が示すのは、「振り返りの型」が、失敗を恐れずに言語化し、冷静に分析する「安全な練習の場」を提供したということです。繰り返し取り組むことで、子どもたちは自分の課題と正面から向き合う勇気とスキルを育んでいきました。本当の成長は、この「うまくいかなかったこと」と向き合うことから始まるのです。
3. 「振り返り」が「次どうするか」という未来志向の作戦会議に変わる
「振り返りの型」の効果は、単に書く量が増えただけではありませんでした。実践を重ねるうちに、振り返りの「質」が変化しました。
例えば、あるA児の記述の変容を見てみましょう。
1時間目の記述:
うまく書けたところは、がま君とかえる君の立場のことを考えて文にできたところです。うまくいかなかったことは「お手紙になんて書いたの」と書いたところが書けなかった。
9時間目の記述:
みんなの話をよく聞いたり、ノートのまとめれたこと...(中略)...Kさんとペアで話す時、Kさんと私は『うっとりする感じの『ああ』』だと思うと言い合いました。みんな4月の頃は全然話し合いができなかったけど今は平気で話合いができるので、次は、いっぱい発表して行きたいです。
最初の振り返りは、物語の読解という「課題そのもの」に焦点が当たっていました。しかし,9時間目の振り返りでは、友達との「社会的相互作用」(Kさんとの対話)、過去の自分たちとの「時間的な比較」(4月の頃は)、そして未来への「意欲」(次は…したい)へと、思考の次元が格段に広がっているのが分かります。
この変化の核心は、振り返りが「適用」、つまり「次どうするか」という未来への具体的な計画へと進化した点にあります。A児の「次は、いっぱい発表して行きたいです」という一文は、単なる感想ではありません。過去の分析を未来の行動へと繋げる、まさに「作戦会議」の結論なのです。
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まとめ:学びのオーナーシップを育む小さな一歩
この記事で紹介した3つのポイントを振り返ってみましょう。
シンプルな「型」が、メタ認知の入り口になる。
繰り返し実践することで、失敗や課題と向き合う力が育つ。
振り返りが、未来の行動を計画する「作戦会議」に進化する。
この「振り返りの型」が子どもたちにもたらす最も本質的な価値は、自分の学びの成功も失敗も「自分自身のもの」として捉え、次の一歩を自ら考えようとする主体性、すなわち「学びのオーナーシップ」を育むことです。実際、この研究では、成功や失敗の理由を自分自身に求める記述が圧倒的に多く見られました。
そして、子供たちが記述した理由は「たくさん書いたから」「しっかり聞けなかったから」といった、自分自身の具体的な行動や努力に関するものが大半でした。これは、運や才能のせいにするのではなく、自分の行動が学びの結果に繋がっていると実感し始めた証拠です。
まずは今日の「うまくいったこと」と「うまくいかなかったこと」を、そして「なぜなら」を、あなた自身の言葉で探してみませんか。子どもたちに見られた成長は、きっとあなたの学びにも訪れるはずです。
