刑事責任...学校教員に問える具体的な違反内容を考えてみる
このnoteは辺野古転覆事件を追っています。
本日8/14には、団体から学校法人同志社と同志社国際高校へ緊急要望書を提出されたのですね。
改めて、「学校関係者も関わる刑事事件」という観点で、本件を一度考えてみました。
※ ご遺族が立ち上げた団体名が、「辺野古転覆"事件"」なので、過去のものを含めて、同じ名前に統一していこうと思います。
前提
私は、法律の専門家ではなく、気軽に相談できる弁護士もいません。あくまでも、公開されている調査報告書、行政資料及び報道を前提に、現行法上考えられる刑事責任の範囲をAIと共に整理した個人的見解です。
また、捜査機関が保有する非公開資料を踏まえたものではありません。その点はご留意いただきたいです。
また、ご遺族及び担当の弁護士の方から見れば、ここで書いているようなことは当然にして十分わかっていて、それでも告訴し、かつ受理されたという大きな事実があります。
この事実を上回る情報は、私には何1つありませんので、今後明らかになる事実等で、以下の評価が大きく変わる可能性があることになります。
本事件の刑事罰適用に関わる法律
まず、今事件に関わる「刑法・関連法」は、次の4区分くらいになるのかなと思っています。
「犠牲者が出た」事故について、直接の罪状になる法令
学校関係者の"刑法上の注意義務"を具体化する法令
運航側に直接適用されるが、学校側には通常直接適用されない法令
本件事故とは原則として直結しない法令
事故そのものに直結する刑法
刑法211条・業務上過失致死傷罪 / 刑法218・219条・保護責任者遺棄等
学校関係者の刑事責任を問う場合、業務上過失致死傷がメインで、かつ、個人ごとに、「具体的注意義務・予見可能性・結果回避可能性・因果関係」と言える次のような点の論証が必要となるのかと思っています。
危険性を認識しながら船長が提案する海上活動を計画・承認した
明白な危険情報を認識しながらも、船長への出航中止や内容変更の申し入れ等をしなかった
救命可能な傷病者に必要な救護を行わず、死亡・症状悪化を招いた
要保護状態を認識しながら、意図的に保護しない故意行動をとった
「救護活動に消極的だった」「対応が混乱していた」という程度では、刑事責任が成立する..とはならなさそうなので、保護責任の線は消え、ほぼ「業務上過失致死傷罪」だけになるのだと思います。
その他の条文など
以下がありそう(By AI)ですが、学校関係者に適用できるかでいうと、違いそうだなと思っています。
刑法129条: 業務上過失往来危険罪
刑法209・210条: 過失傷害、過失致死
刑法以外の法令
学校側の注意義務を具体化する法令
以下は、そのものが刑事事件の直接の処罰根拠になるわけではなく、刑法211条を補完する法律になりそうなものです。
これらの不備が、直ちに刑事罰の有無を決める判断に直結するわけではないという点が、重要な論点だと思います。
よく「...とまでは言えない」という言い回しで片づけられてしまうことが多い範囲ですよね。
実際、相当に具体的な事実を積み上げないと、刑法の観点で「事故の予見性」とまでつなげ切ることは難しいと思います。

運航側の罪状に直結する海事法令
こちらはたくさんありそうです。
既に、c1船長は告発されていますが、c20はどうなんでしょうね。
国土交通省発表
これらの法令違反に関して、c1が早々?に告発され、c20は(まだ)告発できないのか...?という対応には違和感がものすごくありますね。
結果論じゃなく、c20は、最低でも自らの船の転覆=二次遭難だけは防ぐ、いわばトリアージ的な判断をしなければならなかったはずなので、単なる業務上過失致死傷だけではなく、海事法関連での告発が検討されるべきだと思います。

一方、学校は通常、運送事業を営んだ者ではなく、運送を依頼した側です。したがって、無登録運送について学校関係者が直接告発対象になるとは考えにくいです。
単に「登録を確認しなかった」という過失だけでは、通常、海上運送法違反の共犯にはなりえないのではないかと考えます。
旅行会社のように、専門業者を手配すること自体を業務とするならば別の話だと思いますが、。。。
今回の罪状に原則として直結しない法令
この辺りの法令と転覆事故という刑事事件との関連性で言えば、直接的な因果や学校側の関係者の刑事責任を示すのは難しいと思います。
事実・経緯があっても、それだけでは業務上過失致死傷罪の注意義務・予見可能性にはならないと考えるのが法律だと思います。

再整理
本件の法令構造は、次のように整理できそうです。
学校関係者の注意義務を補強する法令
学校保健安全法、学校教育法、同施行規則、事故前の文科省通知・手引、内部規程死傷結果の罪状には通常直結しない法令
教育基本法、私立学校法、労働法令等
↓死傷結果に対する中心罪名
刑法211条・業務上過失致死傷罪
以下は、運航団体と船長・船員に関わるものだと思います。
船舶転覆そのものに対する追加的罪名
刑法129条・業務上過失往来危険罪。無登録運送に対する罪名
海上運送法違反。運航側に直接適用船体、操船資格、救命設備等の違反
船舶安全法、船舶職員及び小型船舶操縦者法等。運航側に直接適用
個人への刑罰について
結論として、学校関係者に想定される中心罪名は刑法211条の業務上過失致死傷罪です。
ただし、現在の公開事実では、誰についても成立は容易ではなく、特に引率教員はかなり困難なのではと思っております。あくまで私見です。

a12/校長
校長について刑事責任を構成するなら、当日の操船判断ではなく、計画段階の管理者過失です。
海上活動について具体的な転覆・溺水の危険を予見できたにもかかわらず、運航主体、船舶、安全設備、実施条件等を調査せず、危険な計画を承認・継続し、生徒を乗船させた結果、死傷させた
という感じでしょうか。
単に、下見をしなかった/無登録を確認しなかった/中止基準がなかった 等だけで立件までは行けるのでしょうか。
「これらを確認していれば、具体的な危険が判明し、乗船を中止していた」という因果関係が必要です。校長が「運航者を信頼していた」と主張することに合理性が認められると、起訴は難しくなります。
教頭/a16
そもそも現時点では、刑事告訴されていないため、この内容も該当するかは分からないですが、想定できたとしても、事故当日の現地判断に関する過失ということになるのだろうと思います。
過失の成立には、以下のような条件が必要となりそうです。
注意報又は具体的な現地危険情報を認識していた
辺野古コースが小型船による海上活動だと把握していた
各コースへ中止・再確認を指示できた
校長と直接連絡して判断を求めることができた
それにもかかわらず何もしなかった
指示していれば乗船が中止され、死傷を回避できた
教頭にも船舶運航の是非を専門的に判断する義務はありません。したがって、「波浪注意報を知っていた」くらいだけでは立件とはいかないだろうと思えます。
ただし、学校関係者の中で当日の中止・確認義務を検討するなら、一般引率教員より、情報と指示権限を持つ教頭の方が対象として合理的です。
教頭が遺族からの告訴対象でないとしても、業務上過失致死傷罪は非親告罪なので、海上保安庁・検察は独自に被疑者として捜査・起訴できます。
学年主任/a5
学年主任については、主任という肩書ではなく、研修旅行の計画への具体的関与が問題になります。
想定される訴因は以下のようなことでしょうか。
研修旅行計画の中心的担当者として、辺野古ボートコースの内容、運航主体及び危険性を調査し、安全な計画を作成すべき義務があったのにこれを怠り、危険な状態で実施させた
ただし、学年主任は基本的に連絡調整・指導助言を行うという教員の職務であり、校長・教頭のような管理職ではありません。
そうすると、成立には、以下のような前提が必要そうです。
安全性調査が学年主任の具体的担当だったと客観的に認められた
コースを採用・継続する実質的決定権があった
調査すれば転覆につながる具体的危険を発見できた
校長への中止・変更提案によって実施を止められた
前年同様の確認をした、それ以上の確認を必要と考え切れなかった。という事実だけでは、刑事罰の適用は難しいように思います。
引率教員2人 a8/a11
報告書によれば、引率教員の職務上の役割はかなり限定的です。
計画段階に関与していない
出発約1週間前に担当コースを知らされた
担任団の補助的立場だった
安全上の基準や緊急時の対応方法を示されていなかった
航路、船舶、海象の専門知識を持たない
乗船・出航を中止する明確な権限もない
刑事責任が成立するのは、例えば、以下のようなことが事実として存在したが、出航を認めたということが必要そうです。
船長から具体的な出航リスクを説明されていた
現場で危険が明白だった
生徒たちに乗船前に危険を訴えられていた
学校から明確な中止条件を示されていた
自ら中止判断を任されていた
これらがなければ、出航するという船長の判断を覆さなかったことを過失とするのは困難です。
また、教員非同乗で刑事責任を問うのは、もっと難しいと思います。
教員が乗船していれば、転覆又は死亡を具体的に回避できた
そもそも、教員には操船・航路変更能力がなく、かつ、乗っていれば一緒に転覆した可能性があります。したがって、非同乗というだけでは刑法211条の因果関係を構成しにくいと思います。
加えて、救護対応について刑事責任を問うには、
その時点で救命可能だった・教員が必要な救護を実施できた・救急要請・応急処置等を怠った・その遅れによって死亡又は負傷の悪化が生じた
という医学的因果関係が必要です。
引率教員が適切に対応できていなくても、死亡・負傷という結果が変わらなかったなら、業務上過失致死傷罪は難しいと思います。
現時点での刑事責任の見立て
引率教員:起訴は相当に困難
学年主任:具体的な安全審査権限・危険認識が出なければ困難
教頭:当日の情報認識と中止・指示権限次第。引率教員より検討対象として自然
校長:計画段階で具体的危険を認識していた証拠が出れば可能性はある
→ 学校関係者の中では、具体的な注意義務を最も検討しやすい立場。
したがって、学校側について現在の公開事実だけで起訴を構成するなら、校長の計画段階の過失又は教頭の当日の指示・中止判断の過失が中心になります。それでも、具体的予見可能性と結果回避可能性の立証が必要であり、単なる安全管理上の不備だけでは起訴できません。
この話の行く末について
個人的には、これ以上は掘り下げないつもりです。
新しい情報(受理・不起訴・追加告訴etc)や観点があれば、記事上げようと思います。
過去記事は、このPOSTに統合したことを載せておこうかと思います。
この法律、罪状認定が必ず正しいとは思っていません。あくまでも現行法律の範囲だとこうなるのでは?という話です。
悲劇的な交通事故でのご遺族・団体活動によって、自動車事故をめぐる処罰法制が整備されてきたようなことが、学校関連事案でも増えることを切に願います。
(このnoteについて)
以下の想いで連載?しています。よかったらご一読ください
