痕跡すら消え去った家。
元彼の家を別れてから始めて訪れた俺。
アクセサリー作家さんに久しぶりに会うからと日焼け止め、化粧水、美容液、パック、痛み止め、アロマオイルを購入して渡そうと思っていたれど夢叶わず、手持ち無沙汰になった。
自分で消耗も考えたが、ラッピングしたモノ(自分で使うべきは用意しているから不毛なモノ)をわざわざ解く気にもならず、元彼に電話。
おそらく、意気消沈した俺の声を察知したのか、「簡単な昼ご飯くらい作ってやるから来れば」の誘いにメンタルクリニックを終えてtaxiで向かう。
手料理の恋焦がれか
人に対しての寂しさか
一応、ご当地煎餅も片手に3か月ぶりに4年過ごした元我が家に行って軽く愕然とする。
テレビが購入され、スピーカーやアンプが新しくなり生花に近い造花が飾られて昔の名残りはこれほどかっていうくらいになかった。
「綺麗になったね、、、」
「ああ、猫もいないし、汚す奴もいないから」
「テレビ買ったんだね」
「まあ、テレビは必要だから」
「俺、3か月、テレビ見てないや」
「自分で選んだ生き方なんだから仕方ないな」
そりゃそうだ。自分で今の仕事も別れて暮らすことを最後に選んだのは俺だ。自業自得なんだが。
買って持ち込んだスパークリングワインで乾杯して彼の実家から送られた惣菜とパスタを頂き、会話が途切れて「タバコ吸っていい?」「ああ、庭でならどうぞ」前なら部屋で加熱式タバコならいいよと言っていたけれど。
ああ、俺も愛猫(ダイスケ)がいた、生きていた痕跡が丸っきりなくなった家でなんだか、寒々しい気持ちになってしまう。3か月しか、もう、3か月経過してこの人は、新しい暮らしを謳歌している。
当たり前だよな。
仕方ないことだな。
一緒に植えたエニシダと芝桜が花を咲かせているが「除草剤まいたけど、しぶといんだよな」と後追いで言われて「ラベンダーは、枯れたね」と俯きながら応える。草木までもなかったことなんだなと思うと余計に寒さを感じる。
滞在時間1時間。
「俺、帰るわ」
「そっか、またな」
最後の言葉は、あえて聞かなかったことにする。多分、もう、この家に訪れることはないだろうと思うから。自分や愛猫の痕跡が消え去った家に何も求めることは、ない。
「死にたかったらもう、止めないから」が、この家を出ていく時に聞いた元彼の言葉。4年、鬱病と適応障害で苦しむ俺をSEXがないのに住まわせた彼だから出た本音の言葉。
俺は、どっかで逃げ場所を探していた。
そして、もう、それが、ユートピアなんだと実感した。帰る場所なんてありは、しない。家族すらいない俺に仕事以外は居場所なんてない。
帰り際、ふと、振り返った街並みは変わらないのに別空間だったなと痛感する1日の終わり。
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