「冷蔵庫ひとつで感じる、ちょうどいいつながり」 #ソーシャルアパートメント
ソーシャルアパートメントのいいところは、“友達”ではないけど “なんとなく知っている人” がいることだと思う。
適度な距離感があって、必要以上に干渉しない。
でも、いざというときには助け合える。
そんな心地よい関係性に、思わぬ形で気づくことがあった。
「冷蔵庫いりませんか?」
ある日、住人向けの連絡ツールにメッセージが流れた。
“Does anyone need a fridge?”(冷蔵庫いる人いませんか?)
投稿者の名前とアイコンを見ると、どうやら海外の人らしい。
ちょうど冷蔵庫を買おうとしていたタイミングだったし、タダでもらえるならラッキーと思った。
とはいえ“知らない人”。
ちょっと迷った。
人見知りだし、その上海外の人となるとドキドキする。
だけど、思い切ってメッセージを送ってみた。
するとオッケーが出たので日程調整をはじめた。
自分“When will you be available?”
(いつ空いていますか?)
彼女: “I’m flying out in the morning on the 20th, so anytime before that works.”
(20日の朝に出発するから、それまでなら大丈夫だよ。)
自分: “Then, would the night of the 19th be okay?”
(じゃあ、19日の夜でもいいですか?)
彼女: “OK!”
英語は全くわからないので、Google翻訳を活用して約束を取り付けた。
「母国に帰るのかな?」
そんな事を考えながら当日を迎えた。
お家で他人と会うストレス
「仕事の帰り、疲れた身体で冷蔵庫を受け取りに行くのか」
当日になって、少し面倒になっていた。
ただでさえ、日中色々な人と出会う。
その中で疲弊してしまう中、気を抜けるはずの家に帰ってからも、気が抜けないことがちょっとしんどかった。
その上、相手の素性がわからないので、どんなトーンで、どんな言葉遣いがベストなのかがわからない。
だから緊張してしまう。
「まあ、タダでもらえるしいっか」
そう自分に言い聞かせ、帰路についた。
約束の時間
彼女の部屋は3つ隣にあった。
部屋のチャイムを鳴らし、扉が開く。
手を合わせて「ソーリー!」と明るく申し訳なさそうに英語で話しかけると、
「全然いいですよー!」
と、流暢な日本語が返ってきた。
「なんや、めっちゃ日本語上手いやん」
心の中でツッコミつつ、それ以上に遅くなった申し訳なさでいっぱいになる。
「面倒だな」と思った自分が恥ずかしくなる。
部屋に入ると、マットレスとリュックサックだけが置かれたシンプルな空間。
彼女はパソコンを開いて、何かを観ていた。
きっと映画でも観ながら時間を潰してくれていたのだろう。
最初で最後の共同作業
ここからが問題だった。
冷蔵庫を運ぶには、2人で協力しなければならない。
3つ隣の部屋と言えども、さすがに1人では運べなかった。
夜の廊下。
まるで引っ越し業者のように息を合わせて運ぶ。
「誰か通りかかったら手伝ってもらえるのに」と思いつつ、
「でも、こんな姿を見られるのはちょっと恥ずかしいな」という気持ちもあった。
ほぼ引きずるようにして廊下を移動し、なんとか部屋に到着。
「ありがとうー!助かったよ!」
「こちらこそ、冷蔵庫を受け取ってくれてありがとう!」
せめてものお礼をしなきゃと思った。
でも明日には母国へ帰るなら、荷物になるものを渡すと邪魔になってしまう。
咄嗟に考えて、玄関に置いてあったお菓子を差し出した。
「お菓子あげる!そういえばどこの国に帰るの?」
「ありがとうー!ドイツに帰るんだ〜!じゃあ、またね!」
「ありがとう!またね!」
もう会うことはないかもしれない。
でも、なんだか心が温まるやりとりだった。
“なんとなく”で充分な人もいる
「たまたま住んでいた場所が同じ。それだけの人と関わった」
それが、なんだか特別なことのように思えた。
そして、ひとつ気づいた。
ソーシャルアパートメントの住み心地のよさは、「なんとなく知っている」人がいること。
ここには、強制的な交流はない。
でも、住人同士が「顔と名前が一致する」というだけで、知らない人よりはずっと近い。
それは「友達」とは少し違う。
「仲良くはないけど、知らない人ではない」
この絶妙な関係が、安心感と心地よさを生んでいるんだと思う。
ゆるやかな繋がりが、理想の暮らし
もし、自分がコミュニティ型の賃貸を運営するとしたら、こういう「適度な距離感のつながり」を作れる仕組みが必要だなと思う。
「ただ住む場所」ではなく、「ちょっとしたやりとりが生まれる場所」。
そしていざと言う時に助け合いが起こる関係性。
そんな空間を作れたら、きっと面白い。
そう思いながら、今日も冷蔵庫を開ける。
3つ隣の部屋に住むドイツの方から、冷蔵庫を譲ってもらった。母国に帰るらしい。Google翻訳使ってLINE使って日程調整。でも実際に会ったら日本語上手かった。いってらっしゃい。冷蔵庫、大切に使います。
— 前田 彰 (@maeda_akira2416) February 14, 2025
人生2度目のソーシャルアパートメント、3ヶ月の振り返り https://t.co/u4GsANNdU5
