【シロクマ文芸部】レシートの逆襲
「レシートに吸い込まれたと供述していますが……」
警部は助手とコンビニバイトを交互に見てため息を吐いた。バイトは高校生で、青ざめて顎が震え、額に汗の玉を浮かべている。
「確かに店の防犯カメラによると、行方不明者がお釣りとレシートを受け取るとともにレシートの中に吸い込まれているな」
証拠品として透明のポリ袋に収められた一枚のレシート。コーヒー、弁当、値引きのカップラーメン、チキン。模範的な独身男性の夜食である。
「あ、あの、僕は……」
バイトの青年が怯えている。無理もない。怖がって当然だ。
「もう聞きたいことは以上だ。気を付けて帰るといい」
*
助手が運転するパトカーの後部座席にて、警部は資料を読み返していた。
「警部、行方不明者はどんな人なんですか?」
「レシートの恨みを買った者だ」
「え?」
助手が言葉を失う。警部は説明した。
「恐らくあの男は日常的にレシートを貰わず捨てていた。彼が通うスーパーの購買履歴を確認したところ、購買行動がワンパターンだ。おそらく生活習慣がワンパターンなのだろう。それがレシートの恨みを買うことに繋がった」
「えっと、つまり、レシートの恨みとは?」
「利用客の手に残らず、店では捨てられる。誰からも必要とされないレシートの恨みだ。この男は日常的に、レシートを受け取ったそばから捨てていたのだろう。なぜなら中身がいつも同じだから、レシートを保存する必要が無いからだ」
パトカーの車窓から、街灯の明かりが流れて白い尾を引いて見える。
レシートは単なる売買契約書ではない。綺麗好きのレシートには清掃用具が並び、不健康な者のレシートにはジャンクフードばかり記される。
レシートとは、その人の生き方そのもの、レシートを雑に扱うことは、自分を雑に扱うことに等しい。今回の誘拐事件も、もしかしたら身から出た錆なのかもしれない。
「では、どうやって助ければ?」
「俺が被害男性を説得し、レシートに謝らせる。このヤマはレシートに許してもらうしか解決できない」
「許してくれますかね、レシート」
「油性の印字だし、水に流すのは難しいだろう」
「……」
「なんか言え」
▼参加させていただいた企画。
【おしえて】
男子高校生は少年?青年?
表記するときいつも迷います。
