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【シロクマ文芸部】レシートの逆襲

「レシートに吸い込まれたと供述していますが……」

 警部は助手とコンビニバイトを交互に見てため息を吐いた。バイトは高校生で、青ざめて顎が震え、額に汗の玉を浮かべている。

「確かに店の防犯カメラによると、行方不明者がお釣りとレシートを受け取るとともにレシートの中に吸い込まれているな」

 証拠品として透明のポリ袋に収められた一枚のレシート。コーヒー、弁当、値引きのカップラーメン、チキン。模範的な独身男性の夜食である。

「あ、あの、僕は……」

 バイトの青年が怯えている。無理もない。怖がって当然だ。

「もう聞きたいことは以上だ。気を付けて帰るといい」

 助手が運転するパトカーの後部座席にて、警部は資料を読み返していた。

「警部、行方不明者はどんな人なんですか?」

「レシートの恨みを買った者だ」

「え?」

 助手が言葉を失う。警部は説明した。

「恐らくあの男は日常的にレシートを貰わず捨てていた。彼が通うスーパーの購買履歴を確認したところ、購買行動がワンパターンだ。おそらく生活習慣がワンパターンなのだろう。それがレシートの恨みを買うことに繋がった」

「えっと、つまり、レシートの恨みとは?」

「利用客の手に残らず、店では捨てられる。誰からも必要とされないレシートの恨みだ。この男は日常的に、レシートを受け取ったそばから捨てていたのだろう。なぜなら中身がいつも同じだから、レシートを保存する必要が無いからだ」

 パトカーの車窓から、街灯の明かりが流れて白い尾を引いて見える。

 レシートは単なる売買契約書ではない。綺麗好きのレシートには清掃用具が並び、不健康な者のレシートにはジャンクフードばかり記される。
 レシートとは、その人の生き方そのもの、レシートを雑に扱うことは、自分を雑に扱うことに等しい。今回の誘拐事件も、もしかしたら身から出た錆なのかもしれない。

「では、どうやって助ければ?」

「俺が被害男性を説得し、レシートに謝らせる。このヤマはレシートに許してもらうしか解決できない」

「許してくれますかね、レシート」

「油性の印字だし、水に流すのは難しいだろう」

「……」

「なんか言え」


▼参加させていただいた企画。


【おしえて】
男子高校生は少年?青年?
表記するときいつも迷います。

#シロクマ文芸部

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