【毎ショ】サイバー曼荼羅
”電子刑”という刑ができてから一世紀ほどして、ある新参の若者が電脳刑務所に入所した。
「おう新入り」
一人の老人が声をかけた。ガラスの緑色の地面に、夜空に蓋をしたような黒いガラスの天井。幾人もの労働者が車や重機で物を運んだり、建物を作ったりしている。
受刑者の肉体を低温保存し、脳神経回路をこの電脳刑務所に繋いでデータ労働をする近代刑罰。
思考回路の矯正や功労実績に応じて刑期が決まる。それまで死ぬことすらできない。
「新人のお前は受刑者たちの飯炊きと洗濯をしてもらう」
「あの、ご老人」
「どうした?」
「彼らは何を建てているのですか?」
「しーっ!」
老人はキョロキョロと周りを確認し、「ここが死角になっている」と建物の影に連れてこられた。
「あれは刑務所中の廃棄データを集め、建築資材にリサイクルして建立しているのじゃ。場所も材料も、記録に残らないようにしている」
「何を?」
「仏様じゃ」
「?」
見れば、ビルの10階近い高さの足場が組まれている。しかし足場の隙間から見えるのは、巨大な蓮の花のようだ。
「仏様は救ってくださる。何十年もかけて台座まで作った。仏様ができれば、きっと儂らは救われるのじゃ」
老人は建設中の台座に手を合わせている。
きっと娑婆に向かない人間なのだろう。出所ではなく解脱をアテにしている。
▼参加させていただいた企画
【余談】
書いてみたら面白すぎたので、頃合いを見て短~長編Ver.書いてみようかと思います。
