【短編小説】ヒーローごっこ
あらすじ
近所の公園でヒーローごっこをして遊ぶ3人
勢い余ってヒーロー役の子が悪役の子に怪我をさせてしまう
しかし、ヒーローは悪役に素直に謝れないでいた…
本編
ある晴れた日、公園のベンチの近く、3人組の少年少女が遊んでいた
A少年「僕がヒーロー!」
ヒーローのお面を被るA少年
B少女「私はヒロインのお姫様!」
ヒロインのお面を被るB少女
C少年「…」
無口なC少年は公園のベンチに残された悪役のお面を見つめていた
A少年「じゃあ、お前は悪役ね!」
そう言って、A少年はC少年へ無理矢理悪役のお面を被せる
C少年「…あ、うん…」
されるがままのC少年
B少女「あんたね、そんなの不公平じゃない、ジャンケンしなさいよ!」
B少女はA少年のやり方に反対する
A少年「わかってないなぁ、ヒーローはカッコいいアクションシーンをやるんだぞ!」
A少年「こいつにできるわけないじゃないか!」
そう言って、C少年を指差すA少年
C少年「…」
何も言わないC少年、お面をつけているので表情も読み取れない
B少女「…なら、別にいいけど」
C少年に思ったような反応がないため、渋々意見を撤回するB少女
そして、公園の広い場所でヒーロー遊びを始める3人組
A少年「ヒーローパンチ!」
ヒーロー役のA少年が悪役のC少年へパンチを入れる
パンチは少し強かったようで、お面で表情こそわからないものの、C少年が声を出す
「…た」
続けて攻撃を続けるA少年
A少年「ヒーローキーック!」
A少年はすっかり役に陶酔しており、頭の中はヒーローの映像でいっぱいだった
自分自身が、今まさに、ヒーローなのだ
するとA少年の足は思わず予定にないジャンプを取り入れ、その両足を伸ばしたA少年のキックはC少年に直撃した
ドン!
C少年は吹き飛び、近くの遊具に体を打ちつけてしまう
ガン!
それに驚いたのはヒロイン役のB少女だった
悪を倒したA少年への感謝の言葉も忘れ、思わずC少年へ駆け寄る
自身のヒロインのお面を頭の上まであげて、悪役のお面をするC少年に話しかけた
B少女「大丈夫?」
C少年「いっ…つつ…」
B少女「痛そう…病院、行こう!ね!連れてってあげる、つかまって…」
2人の様子をキックが決まった場所から見ているA少年
彼はまだ事態が掴めず、興奮の中にいた
A少年「お、大袈裟なんだよ…ちょっと擦りむいたくらいだろ?」
A少年「続き、やろうぜ!」
B少女はC少年を抱えたままA少年の前を通り抜ける
そのB少女とC少年の背中へ訴えかけるようにA少年は叫んだ
A少年「僕はヒーローだぞ!悪はやっつけられるんだぞ!」
A少年「だから僕は悪くないんだぞ!」
A少年の言葉を無視して歩く2人
B少女「大丈夫?」
C少年「う、うん…」
自分の大きな声に対して、とても小さな2人の会話がA少年の耳にも届いた
2人はそのまま公園を出て行ってしまい、取り残されるA少年
取り残されたヒーロー役の少年Aは缶を蹴った
そして、あれから数日が経った
A少年は雨の日も風の日も毎日毎日、
C少年と遊んでいたあの公園で待ち続けていた
いくつかの大きな穴が空いてる山の形をした遊具のテッペンで
いつもヒーローのお面をしたまま、じっと体育座りをして待っていた
すると、ある小雨の日、ふと雨が止んだかと思うと
悪役のC少年が再び公園へやってきた
その顔には既にあの日かぶっていた悪役のお面をつけていた
C少年の腕には包帯が巻いてあったが、何でもないという様子で動かしてみせる
C少年「怪我は治ったぜー! へ、へへへ…」
公園の入り口から悪役の演技をしている様子のC少年
C少年はヒーローごっこの続きをやる気満々の様子だった
対して、待ちに待ったC少年の登場にしばらく動けないでいるA少年
さっきまで持っていた傘が山形の遊具から転げ落ちたことにも気が付かないほど
悪役のお面をしたC少年を穴が開くほど見つめていた
C少年「ヒーロー! 覚悟しろぉ! ガー!」
そう言って悪役のお面をつけたままのC少年がA少年がいる遊具の方へ駆け出す
A少年もそれにやっと呼応したかのように動き出し、
ヒーローのお面を被ったまま遊具を飛び降りた
そして着地したかと思うと、C少年に向かって、片手広げ、その動きを静止する
C少年「なに!」
C少年はA少年が手からビームを出すポーズだと理解し、素早く両腕でガードの体制をとる
すると、A少年はビームを出すことなく、C少年にゆっくりと歩いて近づいてきた
C少年「え?…」
C少年の目の前までくると、A少年はお面を外し、C少年へ差し出す
A少年「今日からは、お前がヒーロー役! な!」
C少年「…え?いいの? いつもあんなに嫌がってたのに…」
疑心暗鬼のC少年
A少年「いいんだ!」
満面の笑みを浮かべるA少年の顔にC少年も安心する
C少年「へへ…やった! ありがとう!」
心から喜んでいる様子のC少年
A少年「ひひひ…」
C少年の笑顔を見て、なぜか自分まであったかい気持ちになるA少年
C少年「あー、何このお面、中がすっごい濡れてるよー?」
A少年「ああ…!ごめん…」
C少年「変なのー!」
A少年「ひひひ…!」
公園がいつものように笑い声で溢れた頃、
雨上がりの雲間から差し込んだやわらかい光が
彼らも気が付かないうちに
公園一帯に大きく優しい虹の橋をかけていた…
貴重なお時間を使って最後まで読んでいただきありがとうございます!
あなたの今日という一日にも綺麗な虹がかかりますように
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