ジンジャークッキーイブ【毎週ショートショートnote】
「来られない!?」
24日の夜。「体調悪くて」と待ち合わせの最寄り駅にかかってきた彼からの電話は、風邪声でも何でもなく。
「そんな……もう夕ご飯の買い物もしちゃったし、お昼にはジンジャークッキーも焼いて……」
「あ、俺、ショウガ苦手」
間髪入れずの応答に、彼の背後で笑いをこらえる気配が漂う。
あたしは黙って電話を切った。
――計画的ドタキャン。事前に言えば、何でどうしてと追及されるから。
あたしは駅に背を向けると、家へ向かってふらふらと歩き始めた。駅前の喧騒から遠ざかるにつれ、ようやく頭が追いついてくる。
……捨てられた。捨てられたんだ、あたし。
その時、か細い声が耳に届いた。我に返ってあちこち見回す。
まだ小さな茶トラの仔猫。
母猫とはぐれたのだろうか。それとも誰かに……。
思わず手を伸ばすと、師走の風に晒され続けた毛がひやりとする。
「仲間かも、あたしたち」
仔猫が応じるように、ぎうと爪を立てた。
どうやら今夜は、この茶色の毛玉とジンジャークッキーをかじることになりそうだ。
「……ま、それもいっか」
濡れて強張った頬がかすかに緩む。
誰もいない道に、雪が舞い始めていた。
(475字)
【あとがき】
英語圏では、茶トラの猫を「ジンジャーキャット」と呼ぶそうです。
過去に神社をテーマにフリー画像を検索したところ、なぜかショウガや茶トラの猫の写真がずらずらとヒットしたのには驚きました(笑)
皆さん、早めに宿題を書き上げて、よいクリスマスを!
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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