大噓寺【毎週ショートショートnote】
確かに冴えない男だった。
狭い田舎だから、互いにみんな知っている間柄だ。
「よう、坊さん。お経は短めに頼むよ」
「そうそう、俺らも忙しいからさ」
「奴の葬儀なんか来るだけで御の字だよ。だからちゃちゃっとね、ちゃちゃっと」
今日び、メシの支度ですら「ちゃちゃっと」などと言ったら連れ合いからど叱られる時代に、何たる雑言。
「さんぜーしょーぶつ えーはんにゃー……」
いつもより念を込めて経を読む私の後ろで、参列者がやきもきしているのが判る。
経を終えた私は、おもむろに口を開いた。
「彼は素晴らしい人でした」
場にそぐわぬ失笑が広がる。
「おい、持ち上げすぎだぜ」
「ずいぶんなホラ吹き坊主だな。お布施がっぽり積まれたんか?」
「大真寺が聞いて呆れる。こりゃ大嘘寺だあ」
罰当たりめが。僧たるもの、故人を丁寧に弔うのは当然のことだ。
「――故人は、目立たずとも人生を誠実に生きた男でした。そんな彼との日々は、これからも褪せることなく胸に刻まれるでしょう」
「やれやれ、これじゃまるで卒業式の送辞じゃないか」
無礼極まりない参列者に、私は毅然と答えた。
「ええ、これは人生を卒業した彼への僧辞です」
(479字)
【あとがき】
今抱えている原稿がようやく一段落したので、この隙に参戦いたします!
最近欠席しがちなので、何とか年内は参加したいですね。
寒くなってきたので、皆さんも体調にはお気をつけくださいませ。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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