未練配達員【毎週ショートショートnote】
「突然だが、未練配達事業は廃止されることになった」
配達局長の宣告に、朝礼の場は騒然とした。
「どういうことだ!」
「お客様はどうなるんです。長年の未練を送ることでケリをつけられるのに!」
「まさに問題はそこだ。恋愛の未練を相手に送る行為は『ストーカー防止法』に触れる」
一転、その場が静まり返る。
「送った方はいいが、送られた方はどう感じる? 親子系の未練も同じだ。親が子供に未練を送り続けるのは、紛れもない虐待だ」
「だけど相手に印完もらえば、未練は消えるでしょう!」
「宅配ボックスが常識の昨今、印完受領率は激減している。従って未練は昇華されず延々と送られ続けているのが現状だ。とにかく決定は決定だ。諸君は当面自宅待機。以上!」
「待ってください、我々はこの仕事に誇りを……!」
口々に叫ぶ未練配達員を置いて、局長は逃げるように部屋を後にした。
* * *
翌朝、配達局のロビーは大勢の未練配達員で埋め尽くされた。
「な、なんだ!? デモか!」
慌てる局長に、配達員の一人が代表して答えた。
「いえ。未練のあまり、全員で全員を配達しました」
(455字)
【あとがき】
「未練配達員」が簡単なお題とされる、この道場の特異さといったらもう……。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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