文学茶釜【毎週ショートショートnote】
【御礼】
去る11月23日、文学フリマ東京41が終了しました。
寄稿させていただいた『ウタ・カタvol.3 鳴く』をお買い求めくださった皆さまへ厚く御礼申し上げます。また毎回実行委員の労を取ってくださる 石原三日月さん・霜月透子さん・田原にかさん に心より感謝申し上げます。
ありがとうございました!!
十一月も最後の日、私はある茶室へ招かれた。
「どうぞ、お楽になさって」
亭主の女性が温かく微笑む。
その前には、白と青に塗られた四角い茶釜が炉にかけられていた。
「……変わった茶釜ですね」
「ふふ、これは『文学茶釜』と申しまして。この茶釜のお湯はお茶ではなく、物語を点てるのです」
亭主の所作は見惚れるほどに美しい。
「――お点前、頂戴いたします」
見た目は普通の抹茶だ。私は恐る恐る口をつけた。
『花人』『花病』『銃病』……
「ななな、何ですか、コレ!」
「ですから文学ですわ。この茶釜は怖いお話が得意で――あなたもお書きになるでしょう?」
「わ、私はホラーが苦手で……」
女性は艶然と微笑んだ。
「ええ、だからお招きしましたの。この茶釜で点てた物語をお喫みになれば、こちらの世界へ来てくださると思って」
『水圏戯』『転華苑』『筒井筒』……
「も、もう充分……」
「まあ、遠慮なさらないで」
『環染』『こめかみに咲く』『精霊馬』……
「……あら、もう倒れちゃった」
「ちょっと強すぎたんじゃない?」
茶釜からのぼる湯気の向こうで、女性が二人に分裂した。躙り口で見た古い木札が薄れる意識の中に浮かぶ。
そう、この茶室の名は『三日月庵』だった――。
(498字)
【あとがき】
冒頭でも書きましたとおり、先の文学フリマ東京41にて、我らが『ウタ・カタ』ブースはおかげさまで大盛況だったようです。私はただ原稿を書かせていただいただけなので、実行委員の皆さまと買ってくださる皆さまには、本当に感謝しかありません……!
『ウタ・カタ』は現在三冊が既刊です。vol.1から順に『浮く』『咲く』『鳴く』と来まして、次回はvol.4『館』と発表されました!
どうぞご期待くださいませ!!
ちなみに本作品で点てられた「物語」は、ウタ・カタ既刊作の実行委員様の作品より拝借いたしました。(左から順にvol.1~3へ掲載)
『花人』『花病』『銃病』:田原にかさん
『水圏戯』『転華苑』『筒井筒』:霜月透子さん
『環染』『こめかみに咲く』『精霊馬』:石原三日月さん
どれもぞくりと怖く美しい作品ばかりです!
どうぞ楽しんでお喫みくださいませ!!
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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