決闘年越しそば×豪華絢爛仕事納め【毎週ショートショートnote】
「愚か者め! その方、素手でわしに勝つつもりか」
「ぬぅ……!」
追い詰められた信州そばは、傷を負いながらも宿敵の出雲そばを睨みつけた。
「日本三大そばと言われながらも信州ばかりの繁盛、もはや堪え難し。ゆく年の土産に血祭りに上げてやるわ!」
「岩手は……奥州はどうした」
「ふん、犬ころそばなど所詮は田舎者、神集う地の我らには屁でもないわ。目障りなのは信州、その方よ。覚悟っ!」
出雲は目にも留まらぬ速さで、幾重にも重なった塗りの皿を手裏剣のように投げつけた。
「うあっ!」
次の瞬間、甘辛たれを飛び散らせて出雲そばが地に倒れ伏す。その割子には短刀が深々と刺さっていた。
「おのれ、隠し武器を仕込んでおったとは卑怯なり……」
「さても見くびられたものよ。我ら信州戸隠のそば、忍びの作法ぐらいは心得ておるわ」
やがて動かなくなった出雲を片手で拝むと、信州は後ろを振り返った。
「ほれ、もうよいぞ、わんこ。さ、今年は二人で年越しそばを仕込まねばならぬ。それが終わったら秘蔵の酒を馳走してやろう……なに、国よりアワビを持参した? よし、皆に年越しそばを振る舞ったら二人で夜通し酒盛りといくか。豪華絢爛仕事納めじゃな」
(493字)
【あとがき】
年の瀬の浮かれ気分で2つのお題を束ねる荒業に出た秋しばです。
ええと、少々解説をば。
まず日本三大そばとは「長野・信州そば、岩手・わんこそば、島根・出雲そば」を指すそうです。出雲そばは、丸い漆器の皿を重ねた「割子そば」が有名で、出雲特有の甘辛いタレをかけて食べます。
もちろんわんこそばは本来「椀こそば」。犬とは何の関係もありません。
そして岩手はアワビの生産量が日本一だそうです。
今年もたくさんお付き合いいただき、ありがとうございました!
どうぞ、新しい年が皆さまにとって佳き一年になりますように!!!
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