現代版トゥルーマン・ショーかもしれない|小説感想 「#真相をお話しします」結城真一郎
初めて見る作品で
「これ、〇〇に似てるなぁ」
という感覚になるのが好きだ。
しっかりオマージュであることもあるけれど、私がぼんやり「なんだかあれっぽい」と感じるものは、全然違う分野の作品やテーマであることも多い。
その結果、
「似ている切り口だと思ったけど、こんなに違ったものが出来上がるんだ」と驚いたり、
「かすってもいない…!」と一人、笑ってしまったりする。
この本の表紙を見た時は
「タコピーの原罪の、会いに行くシーンみたい」と思った。(ネタバレしないように配慮するとボンヤリしてしまう)
読んだ結果。
…1ミリもかすっていなかった。
まあ、それは全く問題ではなくて。
きっかけは何であれ、手に取ることができて良かったと思う。
この中の1篇が、好きな映画を思い出させる印象的な作品だったからだ。
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注:本作は、あらすじも本の帯も読まずに読了することをおすすめします。未読で、今後読んでみようと思っている方は、ぜひネタバレを踏む前にお楽しみください。
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作品概要
#真相をお話しします(新潮文庫)
著者 結城真一郎
累計50万部突破! 本屋大賞ノミネート! 日本推理作家協会賞! 各紙誌、メディア騒然の令和最大の話題作、ついに文庫化! ミステリ界の超新星が仕掛ける、五つの罠。日常に潜む小さな“歪み”を、あなたは見抜くことができるか。
この作品は、5篇を収録した短編集だ。それぞれ現代的なテーマで、世にも奇妙な物語のようにどこか仄暗く、謎があって、サクッと読める短編が詰まっている。
自然と真相にたどり着く話も多いので(個人の感想)
どんでん返しを期待するよりも、物語を楽しむのが良いかも。
気が付いていなかったAudibleの利点
今回、たまたまAudibleで聴いていたために気が付かなかったけれど、帯には各短編のテーマが全部載っていた。
身近にあるのに、表立って話題に上がることがないテーマが多いので「この話が来るぞ!」と待ち受けるよりも「こんな方向から来たか!」と思う方が楽しいと個人的には感じた。Amazonの紹介ページで帯も載っているので、気になる方は参照してみて欲しい。
突然、語られる離島生活
今回は、特に印象的だった最後の1篇について書きたいと思う。
先述したように、この作中では近年話題になっていることがテーマとして取り上げられている、けれど
ここからは「#真相をお話しします」及び、映画「トゥルーマン・ショー」のネタバレ。ご了承ください。
この作品では、離島に住む、スマホも持たない小学生が主人公だ。
自然の中で遊び回ったり、こんな生活ができるところがあるんだ。と思うような島の生活が描かれているけれど、その生活はYouTubeに公開されていて…。
「現代版のトゥルーマン・ショーだ」
そう思った方が、私の他にも居るのではないかと思う。
この映画は、普通の生活を送っていたはずの男が、自分の人生はずっとTV番組として放送されていたことを知るストーリー。
彼に真実を伝えようとする人
広告費のためにその生活を継続させたい人
膨大な数の傍観する観客たち
たくさんの要素が被っているけれど、作品の雰囲気も結末も全く違うものになっていて唸ってしまった。
視聴者の存在
映画では最後にトゥルーマンが晴れやかな顔で新しい世界に踏み出すけれど、今作の主人公が選んだ道は明るいものではない。
彼が選んだ結末は「たくさんの傍観者」たちを
まとめて当事者にしてしまうことだった。
このラストにはヒヤリとしたし、驚いた。
「傍観者への憤り」をそんな風にぶつけるのか。まさか外側に矛先が向くと思っていなかった私は、完全に傍観者として作品を楽しんでいた自分を自覚した。
映画「トゥルーマン・ショー」のように関わる人々が全員キャストで、全てセットの中の出来事なら、こんな最後にならなかったのだろうか。現代の「創られた番組」は内側と外側が密接になりすぎているのかもしれない。
自分の人生を生きること
ここまで考えて、ふと気が付いた。
映画、トゥルーマン・ショーは「普通の日常が、どれだけ周囲の影響を受けているか」を描いた側面もあった。
「その幸せはただCMに刷り込まれていないか」「無意識に、誰かの期待通りにしていないか」「自分の人生を生きるとは」などのメッセージも含まれていたと思う。
そこから長い時間が経ち、メディアの圧力は弱まり、選択の幅は広がり、それぞれが自由に選択することが尊重される時代になった。
きっと、当時よりも「自分の人生を生きている」人は多くなったし、常識や慣習に囚われない選択も可能になったかもしれない。
ここまで、世界は変わっている。
そして、ただの傍観者だった視聴者たちは、それぞれが発信者として自覚する時代が来たのだと思う。
トゥルーマン・ショーの最後、番組が終われば今までの熱狂がなかったように、次の番組へ興味が移る視聴者を皮肉るようなシーンがあった。
傍観者は軽薄で移ろいやすい。しかし、その途中で誰かに向けた矛先が、現代では簡単に何処かに刺さる。
自分の人生を生きる。そして、それが誰かを傷つけていないか配慮する。
そんな風になれたらいいと、夕方のニュースを見ながら考えている。
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