感想:スメルズ ライク グリーン スピリット
マンガアプリからおすすめされた『深潭回廊(しんたんかいろう)』という作品。
その第1話を読んでいると、「これは『スメルズ ライク グリーン スピリット』というマンガのスピンオフだ」というコメントが目に留まった。
ならばその本編から読んでみようと読み進めていると、今度は「ドラマ化されている」という情報をまたもやコメントで知ることに。
実写化には、配役や改悪といった不安がつきものだ。でも、珍しく「見たい」と思った。
ただ、飽き性な自分が最後まで見ることができるのか。実は、これがいちばんの問題だったりした。
調べてみると、2024年9月から放送されていた全8話のドラマらしい。ちなみに、このドラマを再編集し、オリジナルエピソードを追加した劇場版まで公開されているという。
【あらすじ】
平成のド田舎の男子学生・三島フトシは、髪が長くなよなよしているという理由から、バスケットボール部に所属するクラスメイト・桐野マコト率いるグループにイジメを受けている。
しかし三島は抵抗するすべもなく、隠れて口紅を塗ったり、女性ものの服を着たり、“カワイイ自分に変身する”という日課が心のよりどころになっていた。
そんなある日、三島が屋上にいると、以前なくした口紅を桐野が自らの唇に塗ろうとしていることを目撃し…。
私が利用しているマンガアプリでは、この作品は「BL」に分類されている。しかし、実際に触れてみると単純にその一言でよいものだろうかと感じた。
確かに恋愛的な描写もある。しかし、それ以上にこれは個性的な登場人物たちが織りなす生々しい青春ドラマだと感じた。
物語が進むにつれて主要人物4人の性的指向が徐々に明らかになり、それぞれが異なる葛藤を抱えていることが見えてくる。
そんな中、少しぎこちなさはあるものの、役者陣の演技に魅了されてしまった。
以下ネタバレ含む
彼の圧倒的な表情
特に、桐野を演じたM!LKの曽野舜太くん。
彼の表情の演技には一番強く心を揺さぶられた。
三島をいじめている時は、本当に冷酷な顔をしている。それなのに、拾った口紅を恐る恐る自らの唇に塗る瞬間の表情。屋上で自分のことを「アタシ」と呼んでいる時のあの解放された表情。柳田先生の事件後、三島をなぐさめる表情。母親が倒れたと聞いた時の動揺の表情。
そして迎えた最終回。
彼が選んだ道が正しかったのか、そうでないかはわからないのだけれど、それでも彼は自分の人生を歩んでいる。
余談ですが、昔EBiDANには興味あったので、いまの彼の活躍はちょっと嬉しかったりします。(ちなみに、7人の時の超特急とPrizmaXが好きでした)
一言では括れない
話を内容に戻して。
主要人物の4人はゲイと一括りに出来ない。
三島は男性が好きで、女装も興味あって、自分は可愛らしいと自覚しているが、女性になりたいわけではない。
桐野の恋愛対象も同性で、彼は「女性になりたい」と思っている。だからこそ、可愛らしい三島へのいじめは嫉妬の裏返しだったのだ。
また、桐野と共に三島をいじめる夢野は、恋愛対象が男性というわけではなく、「可愛らしい三島」のことが好きで、いじめることでしか関われない。
そして、学校で社会科を教える柳田先生は、三島のような少年を好むが、初恋を拗らせていて、その心には深い闇がある。
対比
それぞれを取り巻く環境の対比も切ない。
三島と夢野には、彼らを受け入れる理解ある母がいる。桐野の母はいわゆる毒親だが、彼は母を大事に想うがゆえに「母を幸せにしたい」という気持ちに縛られている。
一方で、思春期の初恋から始まり、残酷な環境のまま大人になってしまったのが柳田先生だ。もし彼にも、拒絶せずに向き合ってくれる母親がいたり、悩みを打ち明けることができる友人が一人でもいたりしたら、逃げ回るばかりの人生にはならなかったのかもしれない。
それにしても、三島を狙い襲うシーンを演じた柳田先生役の阿部顕嵐くんの演技も凄まじかった。もはやホラーである。
あの場面は原作マンガでも狂気に満ちていたが、実写で見ると、その歪んだ生々しさにさらに圧倒されてしまった。
以上ネタバレ終わり
マンガとドラマ、違う部分はあったけれど決してガッカリするような悪いものではなかった。むしろ実写だからこその痛烈さがあったと思う。
不条理な社会や、ままならない環境。生きていく上で難しいことはたくさんあるけれど、せめて自分は、子供の幸せを真っ直ぐに考えられる親でありたい。
そんなことを強く思った。
ドラマを最後まで見届けた今、私には今回のきっかけとなった『深潭回廊』が残されている。(しかもまだ連載中だという)
飽き性の私がすっかりこの世界観の虜になってしまった。今度は、こちらをじっくりと読み進めるという新しい楽しみが待っている。
『深潭回廊』はすべてから逃げ出した柳田先生の物語だ。
柳田先生がどうなっていくのか見届けたい。
