くどううた個展『hou』に寄せて(後編)
包む
見渡してくれるのは
この身に広がる両手の端
この魂のふくまれた点
その天をこの手も触れている
支えている
かみさまの両手
そこに尽くされたあらゆる両手が
あたたかく
そして
冷めおちてゆく
花 2
艶やかに光
染まるのは会いたい
天をとどく鼻先をあてがわれた
色をひとひらの
花
花 1
こぼれますよ
草葉がよりそいました
あばかれますよ
青く緑の色纏って
摘まれてしまいますよ
それでも高く花は咲く
勇ましい
花 5
落ちついて
正しい呼吸
満ちたり
引いたり
あどけない
ものになり
それなのに
ともしびだ
あかるく
発つために
あかるい
花 4
ひとえにまやかす大地の安らかさ
しずまりかえって眠る
朝が来るはずの夜
とりはらうように
ただ 今 朝の
花
花 3
あずけあうための
あなたにあうの
それが音楽
とりかえのきかない静かさ
あずけあうために
あなたも生きる
それが染まる前
それは白一滴
花
花 6
あぁ良かった
まどろんで
かなしかった
ひとりだった
ひとりだけで生きる
一花
どこに囲まれ
同じ奥だろうと
生きるはひとり一花
植物
光に呑まれた犬
伸びつづける草たち
わたしに意味を解き放とうという
やすらかな色をつつませる
ああ光をすり抜ける
目が影を反転させてはじける
ああ
白い二匹のねこ
ひらく光は魂の名前を叫んで
愛をはなつ
この二つ目に許されるのは
こぼさないための瞬き
犬と草
広い
という体験を体が拾った
草々というものの鼻先にあたえる刺激
たまらない気持ちが
ふくらんで足を動かせる
たまらない気持ちがふくらんで
背骨を通って尾の先の手の先まで光を与える
植物
おどるようにひろがってゆく
草は
草は
横へ
高くへ
ひろがってゆく
とめどない
さらけだされる
草は
草は
点 黒
幾点も
幾点も
重なり
反転し
黒く
満ちて
となり
染めた
かの様
世界は
唆す
黒く
振り向く
たたむ
花
空は高くていい
黒は深くていい
ひたされて
ひらいていく
花
植物
ささやきは遠くからする
まるで空き家でとおめいになる
影のように
陰る
陰りゆく
ささやきに深く
伸びる
鳥 金
点を射る
ように飛ぶ
たしかにゆくのだ
とどきにゆくのだ
金を一点
明日を一心の点
飛ぶ
草
揺れている
ゆれている
やわらかい
やすらかに
ゆれている
あてもないのに
ゆれている
草
植物 白
白いことが許しだと
ひとしいことばが背を向ける
うるわしく孤高のひとつの背が
そっと通ってゆく
その視野
お前は生きる
植物 金
圧倒をあきらかに咲く
あらたまるたからかさに咲く
立ちどまるものの目に力を湧かせる
命は咲いて発つ
植物 黒
浅い水を撫で寄せた
心地を枯れさせてはいけない
短くとも
添うものであっても
植物 金
あたらしい光の粒に
あたたかい身が立つ
とくべつなあらわさが広がる
ひらく ひらいて
そしてとじて また広がる
猫 黒
もろい声がよんだ
あたりを見る
まだこの身の番ではない
ゆうゆうと黒猫はゆく
いつか人の命もかりとって
こうしてゆくのもいいだろうて
花
恥じらいは割れてしまった
たえぬいた未知が色をうつす
たえまなかったゆすりがうすぼんやりときえて
とうとうとした空よりの声
目は見つめ合い
花は口は開く
植物
つよく繁ってゆく
のみこんで
溜息も青く
つまることはなく
飽くこともないまま
広さを広さとはまとめない根が
つよく貫く
猫と植物
飽きれば暴れる
遊びは生に結びつき
糸はいらない灯火は尽きない
哀れみが転がってくる
ひょいと避ける前脚が
不穏に爪を出した
草たちの揺れ
それはそっとしまわれたわけであるが
猫は爪を待つ
忘れてはならない
ねこ
響きあうものたちの
毛並みをととのえる運命
さしこまれる風の一陣
ひげを揺らす
あまりの伸びやかな朝に
午後が焦れる
そっと一匹は目をとじた
つられてまたひとつひとつ目がとじた
響きあう入れ物に埋められた
見尽くさなくてはならない夢の数
風は姿をあらわさず
少々荒いさわりをさしだしていた
蝶
ひらいてしまえば
とどいてしまうことも
結びついてしまう
だから今
このひらいたひかりを
まどろみ
練習するのだ
何度も
何度も
学ぶことで深くなるものだ
まどろみ
花 金
光はある
闇のおわりは
ないのかもしれない
その結び目を含んで
朝 ひらく
花
花 金
気持ちの色を知っている
世界のほんとうの色
おとしこまれたものの
ほんとうの色を
とき発ってあげることは
正しいのか
未だ花は眠る
ひらき
とじ
眠る
花
天秤を動かすのは
一花の重たさ
黒く咲いた
花
植物 白
羽のようにひらいては
それはもう飛んでいることよと
風にささやかれている
植物
点 黒
ありきたりに
ありったけを
ここにばらけさせた
とりこぼすがいい
世界はその欠片でできている
ここをしずかに打つといい
花 金
明日咲くよりも
今
咲いていることを
選んだのだ
花
光のかたち 4
天からの通じはあった
御手は近づくだろう
あなたがたたずむその影で
かみさまは時をとめる
光のかたち 3
眠ってなどいない
いつも丸い瞳は開く
こともなげに足先はとじてひらき
眠ってなどいない
照っている窓をあけなくては
去っていく影に顔を向けた
光のかたち 2
命をあたためていた
どこにもないと云われようと
ここに
あらわれもないここに
腕はからめとられて
あたためていた
光のかたち 1
会うことも無く光は定まる
勇ましさに抱かれたときから
寄る辺なくこの天へ
かたときを許されることはない
焦がれたわけでもない
天へ
鳥は光へ
発つ
赤と犬
ありあまる愛が
つなみのように身を叩く
たとえようのない愛が
ひとみにうつろう
たりないことのない愛が
足先の爪の一片にもかぶさり
それはいつも泥をつめこむ
ありきたりの愛であると
理解しているというのに
一身は等しくその声を発つ
なみだをながす
なみだをながすことは
かなしみに髪をひたして
許しのこない夜にうつりこみ
たえることのない波に身をさらし
星のときさえ抱え込んで
あきらめをも留めて
生きることなのか
光差す
光差すは
両の手の
たいらかな
ただしかな
蝶の乱れとぶ
ひらひら
ひかる
在る
以上。
くどううたさんの素晴らしい絵に、
勝手に寄せさせていただきます。
