くどううた個展『hou』に寄せて(前編)
植物
葉を伸ばすのは白
憂いを灯して
幾粒のこぼれうたたに出逢う
たしかなかなしみを芯に
うつむくことは許されない水を
潤ませて
ふくり
芽は立ち上がる
白猫
白い泉の湧く猫
たわわと鳴る
毛並みのうるおう
ふうふうと流れるる
猫
黒
人は飛ぶ
黒く飛ぶ
鳥と成る
ひろく在るために
飛ぶ
鳥
植物 黒
ともし火のように生える
盲目の香りがした
うつろうからうめく
触ろうか
浴びるような光が黒
植物 朱
あたらしい瑞々しさに
熟れる満たされて
現れる神よりこの地へ
あたたかに掬われて
咲く
猫 金
潤み沈む瞳
やわらかな毛並みに
うつむいてうもれる
至高のやわらかさ
許されるのか
猫よ
抱く
あつかましくあたためる
あじをつまみ噛みしめる
あびるあまやかさにふるえる
乳を抱く
あなた
蝶 金
羽を持ったが使いのあらわし
祈りをはばたき
天を目指せよ
猫 黒
丸い夜
荒々しい夢を孕んで丸く
うつくしい目覚めをふくむ瞳
ああ溜息すら
透明に黒
花 中には金
花畑はたらんたらんと揺れ
めしべの金はうららかに揺られ
たましいのうつろいは冷めようとする手先を
そっと包みこむ
植物 金
さわやかに風はゆき
この間を澄んだゆきさきにそっと押す
光をまどわす
とろめいたひかりがたれてゆき
また揺れる
金と
花 黒
飾り気はない
あらためる必要を強いるものを払う
背負う静かさが見間違う
黒は彩だ
咲いても
島 白
あぁ遊びだった
はじまりは
あまりにたゆんではじめたから
そうねそれなのに今は
これを祈りと言葉が触る
高く見上げ
その姿を
点 金
この命とあの命とさった命
満たした命と満たされた命
時は在り
またたいたが香る
最古には滲んでいたところに
今そっと触れる
羽 白
羽が埋まっていく
羽は白が集まってゆく
小さい泉のように
つつまれていく
のどかに口をふさいでゆく
たしかめるあかるい舌触り
ああ白い
光
あの香りを追って
目を覚ました
逡巡が睫毛を刺す
ありていを呑み込んで
やわらかに吸い込まれて喜ぶ
青い点
重なっていく
うすい光をとり固めて
池は何度も
重なっていく
ことが動くことで
生きることだった
ひとつ青く凝る
天
植物 黒
谷間に揺れてあいをすりこむ
そっと胸に秘めた祭りの音
一瞬だけとどろく
たましいのゆりかごを手が伸びてくる
ちいさく眼ははたき
りぃんとまどろんだ季節がさまよい歩く
(ここで150冊目が終わりました)
かたまり 影 黒
あなたが立つと
ふと影の動きがゆっくりとゆれる
あなたを影は別物
あなたは影に付き合って
世のことことを動いてみたしていく
花 金
割れることのない華々しい空気
包まれて 枯れてゆく花
ひとし土に愛を感じてしまう
あなたは任されて花を満ちるのですね
猫 黒
呪いのようにうるわしい
しなやかなとしをとってゆく
しずまるようにとしをとって
そして あらためて黒い瞳に包まれる
植物 白
晴れてきた
ように生えてきた
ありがとう
と鳴く
明るい身を
あしがかりに伸びてゆく
晴れてきたのです
声が 鳴りによって響く
砂時計
落ちていく
という意志で
積まれてゆく
という感覚を得て
崩れるとしてまた日を変えてしまう
あなたはひっくりかえされて
ふたたび体験をふくんでゆくのです
植物 黒
あらためて天は動く
この頭をふらり
あまりに何度
このありのままをふくり
到来は着目をふるわせる
丸 四つ 黒
覗きこんでいる
まばたきをはらんでいる
静まりをとじている
先行きは澄んでとじている
そしてゆくへは
点 黒
雨打つ
雲をふりはらい
その中で染めていく
世界に添っていく
昇ってゆくひとの指先にも
時を触る
点
犬 金
ひろい空は駆けまわり
それもおわれば
まとまりが背をふくむ
犬のあたえるひとみ
犬のあつらえを呑む
やわらかく見つめ合えば蝶を放つ
花
咲いた
大きく
それは世界の中で小さく
理の中では遠く
しかしひとつ
ただひとつ
咲いた
植物 黒
触れることを
とおいとみつめる
ふくみあじわう
それは深みある
手にはあたたかい
太陽に染まった
そして命のふくらみ
ふくむ甘い
小玉
足の下をざわりち騒がす
小さくて小さくて
見渡してしまう
色は反射にみたがる
しずかに世の儚さに垂れる
蝶 黒
やはり蝶か
目が覚えていく
遠くから横切ったのか
ああ 香りもささやかだった
ふりむくほど
白 だ円
白い愛
みわたして
あなたのものはここ
わたしのものはどこ
たてつづけに手が伸びた
降り注いでいるというのに
わたしの揺れる愛し方は
どれ
猫 黒
抱き込んだ
尻尾がふくんだ漆黒
笑うように月はたれている
夜に溶けてしまったかと思えば
ふとさらされるように
立ち上がり目を光らせる
猫
植物 黒
摘んでしまうといえば
怯えるかい
それとも
摘めるかい
と
不敵に揺れてみるものか
風が青い
道は遠い
私の手の方が固く
植物はその背を保った
植物 金
ひかりが増して
ひかりがふりむいて
ひかりがふりそそいで
ひかりに流れながら
ひとつ形をつくる
犬 金
ためらいのない瞳を
向けられし尊い六等星
光をまたたく
光をまたたかす
ためらいを許す身の中
つらぬく瞳はそれを譲らない
冷たさをはぶき
真っ直ぐに一線を留める
犬
ねこと植物
大切な尾と
はらって草を撫でた
どれほどの揺れも
草はへこたれない
それどころか身を覆っていくように生きている
たわむれはいつか争い
陽光のたわむれる戦場
あらたまって陽向の景色は
あまりに歌のようにしずかな波立ちだ
花束
あなたを包む
その青みの澄んだ香りは
わたしだけにうつる
あらあらしい花の愛を
あなたは偲ぶように撫でる
わたしにだけその手はみえる
とどかない風景だけが
さみしいというわけではない
目に映る私の膜を通してさえ
さみしくあたたかい
よろこびのかたち 9
先端のまるく
ゆるやかに
芽のあたたかな
からみつくしなりの
うつくしいあたたかさ
芽をうたう火花たち
あたらしい耳にとどく
目一杯の歩みのためらい
手に触れるあふれる明々
花
よろこびのかたち 8
発つ
目が叫んだ
一等の骨を伸ばしてゆく
しずかだ
花は雫のように生きている
発つ
ひたされるような空が聞こえる
よろこびのかたち 10
満ちた
おちる
だろう
澄んだ
果ての
様式だ
あまり
恐いと
言って
はじく
目々は
うつす
始終を
燈して
いるの
よろこびのかたち 7
ああやわらかく
ああためらいはなく
手触りは止められない
どこへとも
どこでさえ
つれてきてしまう
白く繊細は建前だ
青とちょう
たくましさには繊細さが寝転ぶ
あおあおとしていとしい
みずを流していく
土の道を渡っていく
あおあおとして広がっていく
ためしようもない透明さで
あらためて神の手のうつりをかわる
蝶はさらわれるように飛び立つ
光
あの道行きは
わたしのためのもの
あの光を満たす
この瞳のためのもの
その瞳よりこぼれつらなる
ひとつづきの涙のためのもの
あの光がうたうのはわたし
わたしの胸の鼓動が在る
てん
明るいのは
天
そこは冷たい実りがある
見つめあげる
たてまつり
うつろいゆく星々を撫でていく
豊かにふくらんでゆく天
さわやかに吹く風は
それでもここだけの
私の頬をさわる
その2へつづく、、、
