少子化対策は補助金だけでは動かない。奈義町に学ぶ「住まい・仕事・地域」のつくり方
今日はあさからいいお天気ですね。
ゴミ出ししようとなにげなくZIPを見てたら、こどもの日という事で少子化対策に関する話をやってました。
その中で岡山県の奈義町のことを取り上げてましたが、お隣の県という事と空き家問題と少子化問題はおなじ文脈なので興味深かったです。
ということで早速奈義町の少子化対策を調べて整理してみたいと思います。なのでちょっと固い話になりそうですが、最後までおつきあいください。
「奈義町、知ってますか?」と聞くと、少子化対策に詳しい方なら「ああ、出生率が高い町ね」とすぐ反応してくれます。
岡山県の山あいにある、人口6,000人ほどの小さな町です。
この町、全国の自治体関係者や政策担当者のあいだでは、ちょっとした聖地みたいになっています。視察も多い。
でも、「奈義町のどこがすごいの?」と聞くと、「補助金が手厚い」「出生率が高い」で止まってしまうことが多いような気がします。
テレビの中で、同窓会に補助金が出るというのもありましたが、婚活とUターンを同時に支援するという意味で面白いですよね。
やりての町長が、こういう施策をどんどん打ち出しているんだろうなあ…と思いながらいろいろ調べてみました。
で、ぼくが今日書きたいのは、その先の話です。
奈義町の本質は、補助金の金額ではなく、「住まい・仕事・地域のつながり」を総合的に設計したことにありそう、と思っています。
そして、その視点は、空き家対策を進めている自治体や地域の事業者にとっても、かなり参考になる話だと思っています。
少子化対策は「点」では動かない
まず、奈義町がやってきた子育て支援の中身を整理してみます。
出産祝い金、在宅育児支援手当、18歳までの医療費無料、給食費・教材費の無償化、高校生への就学支援、不妊・不育治療への助成…と、こうして並べると確かに手厚いです。
ただ、ここで注目したいのは、「出産したときだけお金を出す」制度ではない、ということです。
妊娠・出産から、乳幼児期、小中学校、高校進学まで、子育ての各ステージで負担を軽くする仕組みが用意されています。
これ、ものすごく当たり前のことのようで、実はなかなかできていない。
多くの自治体の少子化対策は、「出産祝い金を増やす」「保育料を無料にする」「給食費が無料に…」といった、特定の時期・特定の場面への対応になりがちです。
それはそれで大事なのですが、親が不安を感じるのは出産の瞬間だけではありませんよね。
子どもが小学校に上がったとき、中学に進んだとき、高校受験のとき…と、長い時間軸でじわじわと不安は積み重なっていきます。
そういう面でも教育面に関して、無償化のほかに英語教育や、AIやデータを理解し使いこなす力、STEAM教育、データサイエンス、プログラミング教育、課題解決的な学習の充実が掲げられています。
奈義町は、その不安を「線」でつないで減らそうとした。
まちの規模のこともありますが、そこが、他の自治体と少し違います。
お金だけでは埋まらないもの
とはいえ、経済的な支援だけで子育てがしやすくなるかというと、それも少し違う。
奈義町には「なぎチャイルドホーム」という施設があります。
親子が気軽に集まれる場所で、一時預かりや子育て相談、地域の人との交流もできる。
制度的にはこういう機能を持つ施設は他の自治体にもありますが、奈義町のそれは地域の空気と一体になっているようです。
子育てをしていて一番きついのは、孤立感だとよく言われます。
「困ったときに頼れる人がいない」「誰も見ていてくれない」「この地域に歓迎されている感覚がない」そういう感覚が積み重なると、どんなに補助金があっても「ここで産み育てたい」とはなりにくい。
奈義町は、行政の制度だけではなく、地域全体が子育てを応援する空気をつくることに力を入れてきた。
これは、数字には出にくいけれど、たぶんかなり大きな要因だと思います。
「住める場所」がなければ始まらない
ここからが、空き家に携わるぼくとして、特に伝えたい話になります。
奈義町は、若い世代向けの町営住宅を整備しています。
若い夫婦や子育て世帯が実際に住める住まいを用意した。
これは、少子化対策として語られることが少ないですが、実は土台になる部分です。
いくら子育て支援が充実していても、住む場所がなければ若い世代は来ません。
家賃が高すぎても来ません。
「なんとなく住みたいけど、ちょうどいい家がない」という状況は、地方ではよく起きています。
そして、ここに空き家の可能性があります。
地域に眠っている空き家が、若い世代の住まいの選択肢になれれば。
それは少子化対策の「住まい」の受け皿になれる、ということです。
もちろん、ただ空き家があればいいわけではありません。
使える状態に整えること、ちゃんと管理されていること、入居者が安心して暮らせる仕組みがあること、これがセットで必要です。
でも、その環境が整ってくれば、空き家は地域の宝になりうる。
ぼくはずっとそう思っています。
仕事は「町内完結」でなくていい
「でも、奈義町って仕事はどうなの?」という疑問を持つ方も多いと思います。
調べてみるともともとは、奈義町の産業は農業が中心のようです。
ただ、若い世代ではずいぶん変化しているようですが、これは全国的な傾向と同様です。
奈義町の町勢要覧では、積極的な企業誘致の結果、町内には工業団地があり、陸上自衛隊の日本原駐屯地もあります。
そして多くの人が、津山市や周辺地域に通勤しています。
つまり「住む場所は奈義町、働く場所は町内外に分散」という形が成り立っている。
これは、地方の定住政策を考えるうえで、避けて通れない視点だと思います。
すべての雇用を町内でつくろうとすると無理です。
でも、近隣の雇用圏とうまく組み合わせながら、住まいと子育て環境を整えることができれば、若い世代が定住できる可能性は十分あります。
エリア全体で考えると地域の戦略の幅がぐっと広がります。
「自衛隊があるから」で片づけると見えなくなる
奈義町の話をすると、「あそこは自衛隊があるから特殊だ」という声も出てきます。
人口の約1割が住む駐屯地の存在は、雇用や人口構成に影響しているはずです。
それは否定しません。
ただ、「自衛隊があるから出生率が高い」で終わらせると、大事なものを見落とします。
以前の町長インタビューでは、日本原駐屯地には約600人が勤務し、自衛隊関係者の影響はある一方、2014年の出生率2.81について自衛隊勤務者を除いて試算しても2.61だったと説明されています。
空き家対策と少子化対策は、実は同じ地盤の上にある
ここで、ぼくなりの見方をまとめておきます。
奈義町の成功を「少子化対策の成功例」として眺めるだけでは、もったいない。
この町がやってきたことは、「若い世代が地域に根を張れる環境をつくる」という、もっと大きなテーマです。
そして、その環境に必要な要素のひとつが「住まい」です。
空き家は全国で増え続けています。
ただ放置されているだけの空き家は、地域にとって負担です。
でも、ちゃんと管理されて、若い世代の住まいとして機能するようになれば、それは地域の資産になる。
奈義町が整えた「若者が住める住まい」を、空き家が担える可能性があります。
自治体にとっては、住宅施策と空き家対策が一体で動くチャンス。
事業者にとっては、リノベーション、管理、仲介、入居支援など、関われる仕事の入口が増えるということです。
というわけで、今日は奈義町の話を入口に、少子化対策・住まい・空き家の関係を整理してみました。
奈義町の成功を「特殊な事例」として遠ざけるのは、もったいないと思います。
補助金の金額より、「住まい・仕事・地域のつながりをどう設計したか」に学べることがある。
そして、その「住まいの受け皿」として、空き家がもっと使われるようになれば、地域にとっても、事業者にとっても、空き家の所有者にとっても、いい方向に動くんじゃないか、そんなふうに感じています。
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