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商店街の空き家と、山の中の空き家。同じ「空き家」でも、処方箋はまるで違う話。

空き家の仕事をしていると、よく「最近ほんと空き家が増えてますよね」という話から会話が始まります。
今日もそんな話をしてました。たしかにそうなんです。
でも、それって本当に「家だけの話」なのかな、という疑問がずっと頭の片隅にあって。

今日は、そのあたりをマクロとミクロの両方の視点から整理しながら、空き家ビジネスに関心をお持ちの方にとっての「見方のヒント」をお伝えできればと思います。

空き家はなぜ増えているのか、大きな視点から見てみると

まずは少し引いた視点から。

空き家が増えている理由を一言でいうと、「家は増えたけれど、住む人が減った」ということに尽きます。

高度成長期から2000年代にかけて、日本は住宅をどんどん作ってきました。それ自体は当時の人口や世帯数の増加に対応した、ごく自然な流れでした。ところがいまは、人口が減り、高齢化が進み、世帯の規模も小さくなっています。地方から都市への人口移動も続いています。

結果として、地方では「人がいなくなった地域に家だけが残る」という現象が起きているわけです。

これはある種、時代の波が住宅という形で表れているものだと思います。
空き家は「誰かが放棄した家」というよりも、「社会の変化が残していった家」という見方のほうが、実態に近いかもしれません。

でも現場に入ると、一軒一軒まったく話が違う

とはいえ、マクロで「住宅が余っている」とわかっていても、現場はそんなにシンプルではありません。

空き家の所有者の方とお話しすると、よく出てくるのがこういう声です。

「親が亡くなって、まだ気持ちの整理がついていない」「荷物がたくさんあって、どこから手をつければいいかわからない」「兄弟がいて、なかなか話がまとまらない」「遠くに住んでいて、なかなか通えない」。

これって「放置している」というより、「どうしたいかはわかっていても、動き出す入り口が見つからない」状態なんですよね。

この状態を責める気には、まったくなれません。

ぼく自身、現場でそういう方々に何度も会ってきましたが、みなさん「なんとかしたい」という気持ちはある。
ただ、最初の一歩が重い。
その重さの中身も、お金だったり、感情だったり、人間関係だったり、それぞれなんです。

首都圏と地方では、「空き家問題」の中身がまるで違う

ここで、昨日の商店街の話とも絡めながら、もう少し踏み込んだ話をさせてください。

空き家問題って、一括りにされることが多いんですが、ぼくに言わせれば首都圏と地方では、もはや別の問題といってもいいくらい、構造が違います。
市街地と農村部の問題でも同じことが言えます。

首都圏の空き家は、ほとんどの場合は立地次第で売却や賃貸の可能性がまだぜんぜん残っています。
問題があるとすれば、老朽化した建物の活用方法だったり、相続が絡んで権利関係が複雑になっていたり、「使える条件はあるのに動いていない」ケースが多い印象です。
需要がゼロではないぶん、出口を見つけやすい。

一方で地方は、そもそも買い手も借り手も少ない。
需要自体が薄いわけだから、「いい物件だから何とかなる」とはならないんです。
管理にお金がかかるのに、解決の糸口がなかなか見えない。
これが地方の空き家問題の現実です。

そして「地方」の中でも、また話が変わってくる

さらに細かく見ると、同じ「地方」でも、状況はかなり違います。

昨日紹介した商店街の空き家と、山間部・農村部の空き家は、根本から問題の性質が違います。

商店街の空き家は、店舗兼住宅が多く、商業需要の消滅と住宅需要の低下が同時に起きているケースです。
建物の構造が住居専用と違うために、リノベーションのハードルが高かったり、権利関係が複雑だったりすることもあります。
ただ、商店街には「人通り」や「地域のにぎわい」という文脈があるので、カフェ、シェアオフィス、地域の交流拠点といった使い方が比較的イメージしやすい。
再活用の発想が生まれやすい土台があるんです。

山間部や農村部の空き家は、また別の話です。
そもそも周辺に人がいない、交通アクセスが悪い、農地が絡んでいる、解体しても更地の需要が見込めない。
こうなると「売る・貸す・壊す」のどれもが、現実的なハードルを越えにくくなります。
自然環境や里山の景観を活かしたワーケーション施設や、農業体験と組み合わせた移住促進など、少し違う切り口で考えないと、動きが生まれにくい場所です。

「人が集まる地方」と「人が出ていく一方の地方」でも、また違う

もうひとつ見落とせないのが、地方の中での「人の動き」の差です。

地方といっても、地方都市のように人が一定程度集まり続けている地域と、人口流出が止まらず高齢化だけが進んでいる地域では、空き家問題のフェーズがまったく違います。

人が集まる地域では、空き家がリノベーションされてシェアハウスや賃貸住宅として再活用されるケースが生まれやすいです。
移住者の受け皿になったり、二拠点生活の拠点として活用されたりと、「新しい使い手」が現れる可能性があります。
行政の移住支援と組み合わせることで、空き家バンクが機能しやすい地域でもあります。

一方で、人が出ていく一方の地域では、空き家バンクに登録しても問い合わせがほとんど来ない、というのが正直なところです。
登録するときは明日にでも問い合わせがあるかも…と期待しながら気がつけば登録したことさえ忘れてしまっていた。
こういう事も多いんです。

つまり需要そのものを外から連れてこないといけない。
移住促進、関係人口の創出、テレワーク拠点の整備など、住宅の話だけではなく、地域の産業や暮らし方そのものを再設計するような取り組みと一体になっていないと、空き家問題は動きません。

同じ「空き家活用」という言葉を使っていても、必要な処方箋は地域によってまったく違うわけです。

だから、空き家対策に「全国共通の正解」はない

こうやって整理してみると、なぜ空き家対策が難しいのかが見えてきます。

マクロでは住宅が余っている。
でもミクロでは、一軒一軒に感情と事情が絡んでいる。
首都圏と地方では問題の構造が違い、同じ地方でも商店街・農村・山間部・成長地域・過疎地域で、それぞれ問題の性質が違う。

全国一律の解決策が出しにくいのは、当然のことなんです。

だからこそ、空き家に関わる事業者にとって大切なのは、「自分が関わる地域の空き家問題がどういう種類のものか」をちゃんと把握することだと思います。
同じ手法を持ち込んでも、地域によって刺さる場合と刺さらない場合がある。
それを理解しているかどうかで、現場での動き方がかなり変わってきます。

では、どう考えればいいのか

ぼくなりの整理でいうと、空き家対策には大きく二つの軸が必要だと思っています。

ひとつは、空き家を増やさない仕組み
早めに相談できる体制をつくること、所有者が困る前に情報にアクセスできること、相続や管理について知っておく機会を広げること。
これは自治体や士業、地域金融の方々がつくれる仕組みです。

もうひとつは、すでにある空き家を放置させない支援
管理、片付け、相談窓口のワンストップ化。所有者が「なんとかしたい」と思ったときに、すぐ相談できる入り口を整えておくことです。

そしてぼくが最近もっと前向きに考えてほしいなと思っているのが、二地域居住や多拠点生活の活用です。

すべての空き家が、すぐに「誰かが定住する家」として再生されるわけではありません。でも「毎日住む家」でなくても、「週末に使う家」「季節ごとに滞在する家」「都市と地方を行き来しながら仕事するための拠点」としてなら、新しい役割を持てる場合があります。とくに「人が出ていく一方」の地域でこそ、この発想が突破口になる可能性があるとぼくは思っています。

「使われない家」ではなく、「使い方を変えて生かす家」。
そういう発想の転換が、これからの時代にはもっと必要だと感じています。

現場・市場・事業機会、それぞれの視点から読むと

「この流れ、自分のビジネスとどう関係があるのか」と考えている方のために、少し整理してみます。

現場の視点で見ると、空き家の管理・活用に関わる需要は確実に増えています。清掃、片付け、定期巡回、建物診断、リフォーム、解体。それぞれ単体の需要ではなく、「所有者が動き出すときに一緒に必要になる一連のサービス」として需要が発生します。窓口を一本化して、ワンストップで対応できる体制を持っているプレーヤーが、今後強くなっていくとぼくは見ています。

市場の視点で見ると、空き家の数はまだしばらく増え続ける見込みです。2033年には全住宅の約3割が空き家になるという推計もあります(野村総合研究所)。これはリスクの話でもありますが、事業機会の話でもあります。問題が大きくなるほど、それを解決できるプレーヤーの価値も上がる。それが市場の論理です。

事業機会の視点で見ると、とくに注目したいのが「異業種との組み合わせ」です。不動産だけ、解体だけ、清掃だけ、では所有者の「困りごと全体」には応えられません。士業(司法書士・行政書士・税理士)、介護、警備、地域金融、自治体、スタートアップなど、接点を持つ業界が連携することで、はじめて「所有者が動ける環境」をつくれます。

自分の業界から一歩踏み出して、隣の業界と話してみる。その動きが、今後の空き家ビジネスの鍵になると思っています。

というわけで

空き家問題は、「使われていない家が増えている」という話である一方で、社会の変化、地域の変化、人の感情、制度の課題が複合的に絡み合った問題でもあります。

そして今日お伝えしたかったのは、「空き家問題」という言葉でひとまとめにしてしまうのが、じつは一番危険だということです。首都圏と地方、商店街と農村、人が集まる地域と人が出ていく地域。それぞれで問題の性質が違うし、必要な対策も違う。

シンプルな解決策はないし、全国どこでも使える正解もない。でもそれは、「難しいからやめておこう」ではなく、「ちゃんと地域の実情を見ながら関われば、チャンスになる」という意味でもあります。

空き家は、負の遺産ではありません。ただの放置が問題なのであって、適切に管理され、地域に合った使い方を見つけられれば、十分に地域の資産になり得ます。

「家の管理」を超えた、「地域の未来を整える仕事」として空き家に関わることを、ぼくはこれからも続けていきたいと思っています。

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