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空き家税って「二重課税」なのか?そんな意見が意外と多いんです。

最近、「空き家税」のことを書くことが多いんですが、その反響で多いのが、「空き家に税金がかかるって、固定資産税と二重取りされてるだけじゃないの?」という意見です。

思い返せば空き家管理士協会を立ち上げた12年前。
当時、いろんな自治体などで公演や研修に呼ばれることが多かったんです。

その時に話していた内容が、フランスの例を挙げて、最終的に「日本でも空き家税の導入を検討するべきだ」という内容でした。
そのときに最後の質疑応答で多かったのがまさにこの「二重課税なので導入は難しい」という意見でした。
とある町の総務省出身の副市長さんなどはまさにその意見の中心でした…。まあそれはさておき…。

今日は、この「二重課税なんじゃないか」というモヤモヤを、少し落ち着いて整理してみたいと思います。
すでに動き出している京都市と大阪の寝屋川市、ふたつの制度を並べて見ていくと、意外と景色が変わって見えてきます。

そもそも「空き家税」って、ひとくくりにできないんです

まず前提を、ひとつだけ。

ここでいう「空き家税」は、国が全国一律に決めた税金ではありません。

市区町村がそれぞれ独自に条例をつくって、国(総務大臣)の同意を得たうえで導入する、いわゆる法定外税と呼ばれる仕組みです。

ものすごくざっくり言うと、「その街の事情に合わせて、自治体が自分たちで作るご当地の税金」だと思ってもらえればいいと思います。

だから、全国どこでも同じ税金がかかるわけではありません。
導入している街もあれば、していない街もある。
しかも、中身が街ごとにけっこう違うんです。

この時点で、ぼくはいつも思うんです。
「空き家税」とひとまとめで議論するのはちょっともったいないな、と。

京都市の場合「使われていない住宅を、市場に戻したい」

京都市が進めているのは、正式には「非居住住宅利活用促進税」という名前の制度です。
名前が長いので覚えなくて大丈夫ですが、ポイントは「非居住住宅」というところ。つまり、人が生活の拠点として実際に住んでいない住宅が対象ということ。

ここ、ちょっとだけ注意が必要です。「住民票があるかどうか」で機械的に決まるのではなく、実際にそこで暮らしているかどうか、という実態のほうを見て判断される、とされています。
住民票を残したままでも、実際には誰も住んでいなければ対象になり得る、というイメージですね。

そして京都の面白いところは、対象の種類が広いこと。
いわゆる空き家だけでなく、別荘やセカンドハウスのような、そもそも普段は人が住んでいない前提の物件まで視野に入れている。
つまり海外資本や投機目的に対抗する施策なんです。

なぜ京都がそこまで網を広げようとしているのか。
背景には、あの街ならではの事情があります。

住みたい人はたくさんいるのに、使われていない家がそこそこある。
だったら、その眠っている住宅を売ったり貸したりして市場に戻してほしいそういう「住宅の流通を活発にしたい」という狙いが強い制度です。

罰を与えるというより、動いてもらうための後押し。そんな色合いです。
ちなみに、当初は今年度から実施の予定でしたが延期延期で、実際の課税がスタートするのは数年先の予定です。


寝屋川市の動き「対象の“地域”を広げた」

一方で、大阪の寝屋川市。
こちらは「空き家流通促進税」という名前で、先日市議会で条例が可決されました。
名前に「流通促進」と入っているとおり、狙いは京都とよく似ています。
放置されている空き家を、売ったり貸したりして市場に戻してほしい、というものです。

じゃあ京都と何が違うのか。
ぼくが「なるほど」と思ったのは、広げ方の方向が違うところです。

京都が対象の種類を広げたのに対して、寝屋川市は対象の地域を広げました。
市の一部エリアではなく、市内全域を対象にする。
これは全国で初めての試みです。
そのうえで、賃貸や売却に向けて動いている物件は外して、何もせず放置されている空き家に負担を求める、という組み立てです。

つまり、こういうことです。
京都は「別荘も含めて、いろんな種類の空き住宅を対象にする」。
寝屋川は「街ぜんぶを対象にするけれど、動いていない空き家に絞る」。

方向は違うけれど、目指しているゴールは同じなんです。
「使われていない家を、そのままにしておかせない」。
ここが、ふたつの制度に共通する背骨だと、ぼくは見ています。

なお、寝屋川市のほうも、実際の課税が始まるのはこれから(2029年度)の予定です。
条例ができたことと、税金が取られ始めることは、イコールではありません。

で、本題。「二重課税」なのか?

ここが今日いちばん聞きたいところですよね。

制度をつくる側の理屈で言うと、固定資産税とこうした空き家税は「目的が違う」とされています。
固定資産税は、資産を持っていること自体にかかる税金。
それに対して空き家税は、住宅を使わずに放置している状態を変えてもらうための、政策的な税金。

この目的が違うという点が、二重課税ではないと説明されるときの拠りどころになっているようです。

似たような議論は、実は昔からありました。
別荘への課税をめぐっても同じような論点があって、目的が違うのだから別物だ、という整理がされてきた。

とはいえ、です。

これはあくまで、制度をつくる側の理屈なんですよね。
実際に払う所有者からすれば、話はもっとシンプルです。

同じ一軒の家に対して、名前を変えて二回お金を取られている。
そう感じるのは、ぼくはとても自然なことだと思うんです。

制度としては二重課税ではない、とされている。
でも、負担している感覚としては、限りなく二重に近い。
この建前と肌感覚のあいだのズレこそが、みんながモヤモヤする正体なんじゃないかな、と現場で話を聞いていて思います。

ぼくが、所有者の方に伝えたいこと

だからこそ、順番なんだと思うんです。

京都市にしても寝屋川市にしても、制度の根っこにある方向性は共通しています。
「使われていない住宅を、そのままにしておかせない」。

裏を返せば、賃貸や売却に向けて動いていたり、きちんと活かされている物件なら、そもそも重い負担の対象から外れやすい組み立てになっているんです。

つまり、怖がって固まってしまうのではなくて、「放置ではない状態」を先につくっておく。
税金の心配から入るのではなく、まず自分の家がいまどういう状態なのかを整えるところから入る。
その順番で考えると、ずいぶん気持ちが軽くなるはずです。

いきなり売る・貸すを決めなくてもいい。
まずは「放置ではない」という状態にしておく。
それだけでも、選べる道はぐっと広がります。

この流れは、事業者にとっては何を意味するか

さて、ここまでは主に所有者の目線で話してきました。
でも、この課税の広がりは、実は事業者の方にとっても他人事ではありません。

京都は対象の種類を広げ、寝屋川は対象の地域を広げ、そして神戸は戸建てだけでなくマンションの空き部屋にまで踏み込もうとしている。
方向はバラバラですが、矢印の向きは全部同じです。

「使われていない住まいを、放置させない」
この圧力が、じわじわと面で広がろうとしています。

これ、何を意味するか。

「放置させない」という圧力が制度として強まるほど、その裏側で「放置しないための手伝い」を求める需要が生まれる、ということです。

管理、点検、片付け、リフォーム、売却や賃貸への橋渡し。
マンションであれば、管理組合まわりのサポートも出てくるかもしれません。
空き家や空き室と接点を持つ仕事は、思っている以上に幅広いんです。

不動産、建設、士業、介護、警備、清掃、解体、リフォーム、地域金融、自治体、スタートアップ。
「うちの業界は空き家とは関係ないかな」と思っていた人ほど、実は接点があった、というケースは少なくありません。
課税というムチが増えるほど、その手前で困っている所有者に手を差し伸べる出番も増えていく。ぼくは、そう見ています。

というわけで

「空き家税は二重課税なのか」という問いに、きれいな正解を出すことは、ぼくにはできませんでした。
制度としては別物とされていて、でも払う側の感覚としては二重に近い。
その感覚が正解なんでしょう。

でも、この問いをきっかけに見えてくることがあります。

これから課税の網は、対象の種類を広げる方向にも、対象の地域を広げる方向にも、そして戸建てからマンションへも、じわじわ広がっていきそうだ、ということ。

そして、その流れの中で得をするのは、早めに「放置ではない状態」を整えた人だ、ということです。

だから、明日できる小さな一歩を、ひとつだけ。

所有者の方なら、まず自分の家(あるいは実家)がどこの街にあって、その街がいまどんな動きをしているのかを、ざっと確認してみてください。
「うちの自治体は、空き家に関する新しい税の話が出ているのかな」と調べてみるだけでも、景色が変わります。

事業者の方なら、自分の事業のどこかに「放置しないための手伝い」を組み込めないか、一度想像してみてください。

ぼくたち空き家管理士協会でも、そうした「管理の入り口づくり」のお手伝いをしています。
制度の広がりについては、これからも折を見て整理していきますね。

▼最後までお読みいただきありがとうございました。
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