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空き家バンクに物件を並べても、誰も来ない。その前にやるべき「たった一つの仕掛け」

昨日は空き家バンクが地方の空き家対策に重要だという話をしました。
今日は、その地方の空き家バンクがなかなか動かない理由と、それをどう変えていけるか、というテーマで書いてみたいと思います。

「空き家バンクに登録したけど、問い合わせが来ない」「掲載件数は増えたのに、マッチングが進まない」そんな声を、最近、空き家の所有者や自治体、地域の事業者から聞くようになりました。

どこのまちも一生懸命、情報収集や施策でがんばっていることがおおきな原因だとは思いますが、ぼくが思うに、これは物件の問題ではなくて、仕組みの設計の問題なんです。

空き家バンクが動かない、本当の理由

この問題でよく言われるのは、「物件情報が少ない」「写真が古い」「価格設定が高い」といった話です。たしかにそれも一因ではあります。

でも、首都圏から離れたちいさい規模の地域の空き家バンクを見ていると、もう少し根っこに近いところに問題がある気がしています。

それは、「来てくれる人がまだその地域と縁がない」という状態で、いきなり「家買いませんか、引っ越しませんか」とやっているところです。

ちょっと想像してみてください。

あなたが旅行でも行ったことのない県の、小さな町の不動産サイトを開いたとします。
建物の写真と価格だけが並んでいる。
そこで「よし、ここに移住しよう」とはなかなかなりませんよね。

人が動くには、その前に「なんとなく好きな地域」「何度か行ったことがある場所」「知り合いがいる町」という積み重ねが必要なんです。

入口は「物件一覧」じゃなくて「関係づくり」から

そこで最近ぼくが注目しているのが、ふるさと住民登録という考え方です。

これざっくり言うと、「まだその地域に住んでいないけど、関心を持ってくれている人を、仮の住民として登録して、情報をつなぎ続ける仕組み」です。

ふるさと納税をしたことがある人、観光で2〜3回訪れたことがある人、出身者で今は都市部に住んでいる人、将来的に二地域居住を考えている人…。
関係人口といわれたりもしますが、そういう人たちはすでに、全国にそれなりの数います。

この人たちを「関心層」として捕まえておかないまま、空き家バンクだけ運営しても、なかなか動きません。

順番が逆なんですよね。

物件を先に並べるのではなく、まず地域に関心がある人を集める
そしてその人たちに、地域のニュース、イベント、お試し滞在の情報、そして空き家情報を届けていく。

「空き家バンクの前に、関係人口バンクを作る」というイメージで考えると、わかりやすいかもしれません。
切り口は、ぼくのまちのうどんのような食べ物でもいいし、アニメの聖地でもいいんです。

「住みませんか」じゃなく「まず通いませんか」

もう一つ、提案を変えるだけで反応が変わると思っていることがあります。

首都圏から遠い地域に、いきなり「移住してください」と言っても難しい。それは当然のことで、責める話ではありません。
仕事も、子どもの学校も、親のこともある。
生活を全部まるごと動かすのは、大きな決断です。

だからこそ、最初の提案はもっとハードルを下げていい。

「年に数回、この町に来てみませんか」

「子どもの夏休みに、2週間滞在してみませんか」

「仕事を持ち込んで、ワーケーションしてみませんか」

こういう「通う暮らし」を入口にすると、関わる人がぐっと増えます。

月1回、3泊4日。
季節ごとに訪れる。
農業体験や地域イベントに参加する。
そういう積み重ねの中で、「この地域、なんかいいな」という感覚が育っていく。

移住は、その感覚の延長線上にあるものだと思うんです。

空き家バンクを3つに分けてみる

こうした「段階的な関わり方」を設計するとき、空き家バンク自体の使い方も変わってきます。

従来の空き家バンクは、「売る・貸す」の2択でした。
でも、地域と人の関わり方に合わせて、もう少し細かく分類したほうが使いやすくなります。

お試し滞在型は、まず地域を体験してもらう場として使う物件です。
短期間の滞在を受け入れて、地域と人の最初の接点を作ります。

二地域居住型は、首都圏に本拠を残しながら、定期的にこの地域でも暮らす人向けの物件です。
「移住」ではなく「もう一つの家」として使ってもらうイメージです。

贈与型賃貸・長期譲渡型は、一定期間住み続けた人に将来的に土地や建物を贈与・低額譲渡する仕組みを組み込んだ物件です。
「買う前に住む、移住する前に通う、通った先に将来もらえる家がある」という設計で、定住につなげます。

この分類によって、空き家が「売れ残った不動産」ではなく、地域と関わるための入口に変わっていきます。

ただし、贈与型賃貸は税務・登記・相続・契約にまたがる話なので、宅建業者、司法書士、税理士などとの連携は不可欠です。
自治体が入口とマッチングを担い、専門家が個別の契約を支える形が現実的だと思います。

成果の「見方」を変える

ところで、地方の空き家バンクで「成約数」だけを成果指標にすると、どうしても苦しくなります。

段階的な関わりを作っていく仕組みでは、途中のプロセスにも目を向けることが大事です。

たとえば、ふるさと住民登録者数、お試し滞在者数、空き家見学参加者数、所有者相談数、空き家バンク登録準備中の物件数、二地域居住利用件数…。これらを「関係人口から定住候補者を育てる途中経過」として見える化していく。

成約はゴールではなく、長い関係の「結果の一つ」として置いておく。
そういう設計にしないと、担当者が消耗してしまいます。

今のうちに確認してみると良さそうなこと

最後に、明日から動けそうな確認ポイントをいくつか。

自治体の方は、「ふるさと住民登録」や「関係人口バンク」として機能するような接点が、今の仕組みにあるかどうかを見直してみてください。

ふるさと納税の申込者リストや観光来訪者のデータが、空き家情報と全くつながっていないなら、そこが一番の接続ポイントです。

地域事業者の方は、「空き家バンク登録準備パック」のような、所有者向けのワンストップ相談窓口を作れる連携先がないか、周りを見回してみてください。
一社でやる必要はなく、複数業種が組んで「困ったらここに相談」という場を作るだけでもかなり変わります。

士業・金融機関の方は、贈与型賃貸や遠方相続人の空き家相談への対応フローを今のうちに整えておくと、これからの需要に乗りやすくなります。

というわけで、今日は「ふるさと住民登録から始める、新しい空き家活用のかたち」というテーマで書いてみました。

物件を並べるだけの空き家バンクから、地域と人をつなぎ、関係人口を定住候補者へ育てる仕組みへ。そのヒントとして、今日の話が少しでも役に立てば嬉しいです。

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