第145回: 「統計の実務」6 QQプロット
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≡ はじめに
前回は、「データのばらつきをわかりやすく表現する」ことを目的とした「箱ひげ図」について書きました。データ群を比較した例も書きました。このようなグラフです。

前々回のヒストグラムと前回の箱ひげ図を使えば、データの分布の形をつかむことができます。
しかし、その時に湧き起こるのが、
この分布、釣り鐘型に見えるけど、
正規分布って言ってもいいのかな?という疑問です。
もしも、サンプリングしたデータ(標本データと呼びます)の母集団が、正規分布であることがわかれば、それ以上サンプリングしなくても、平均値と標準偏差から、サンプリング元の全データがどのような値を取るのか、おおよそわかります。
そのほかにも、結果に影響する特別な要因によって値がばらついているのではなく、偶然の“ノイズ”(なんらかの誤差)によって値がばらついているのだと分かれば、安心します(あとで出る“血圧値”のように諦めもつきます)。
更に、この先の回に出てくる「検定」や「確率分布からの予測」は、サンプルから計算によって求めた平均値と標準偏差から、母集団(直接的なもの、あるいは間接的な差の母集団など)を正規分布と仮定して実施するものが多いです。それゆえ、サンプリングしたデータ群から母集団が正規分布と推定できることは「推測統計」の世界でとても重要です。
あっ、なんか先走って難しい書き方になってしまいました。
実験などして得たサンプルデータ(標本)から、数式を使って、それが正規分布かどうかを推定する方法もあります。(このnoteでも、あとで出てきます)
でも、計算の前に、グラフで正規分布との合致度を視覚的に確認することが出来たら、うれしいですよね。それが「QQプロット」です。
≡ 全部同じじゃないですか!?
「Twitter大喜利」をご存じでしょうか? 「ふふふ、ヤツは四天王の中でも最弱…」とか、そういうやつです。面白いツイートのメタ構文に乗って重ねていく感じが好きです。
言葉だけではなく、鬼滅の刃の鬼舞辻無惨と下弦の鬼との有名なパワハラ会議のシーンのセリフを入れ替えるものなど、マンガの数ページを使った大喜利もあります。
それで、見出しの「全部同じじゃないですか」もその一つです。気になる方はリンクを辿ってください。
以上が前振りです。それでは、やってみたいと思います。
■ ゴトッ。これが正規分布。

(中川)へえー。
■ ゴトッ。これが自由度10のt分布。

(中川)えっ?
グラフの中の「Degrees of freedom」は、「自由度」の意味です。
「Degrees of freedom」は「DF」と略されることが多い用語です。
(「distribution」は「分布」の意味です。念のため。)
■ ゴトッ。これが自由度1000のカイ二乗分布。

(中川)はあー?
■ ゴトッ。これが自由度10000のF分布。

(中川)全部同じじゃないですか!?
(本田)ちがいますよ─────っ
(両津)これだから、しろうとはダメだ! もっとよく見ろ!
(両津)t分布は正規分布より両裾が高く、±3σじゃなくて、±4σで収束しているだろ。自由度の違いも関係しているぞ。
≡ QQプロットの使いどころ
QQプロットは、「サンプリングしたデータと、特定の分布を仮定して得た理論的な値のそれぞれのパーセント点を軸とした散布図にデータをプロットすることによって比較する方法」です。データと理論的な分布が合っていれば直線になります。
“正規分布なら直線になる”ことだけ知っていればよいです。
仕組みについては、「【統計学】Q-Qプロットの仕組みをアニメーションで理解する。」というサイトが面白く、わかりやすかったので、QQプロットが何をしているかを知りたい人は上のリンクをクリックしてください。
まずは、ずっと使っている次のデータのQQプロットの実物を見てみましょう。
操作は、データを読み込んだら、Rコマンダーのメニューから
[グラフ]>[QQプロット]
を選択して、プロットしたい変数を選ぶだけです。以下のグラフは、「総検査実施件数」を選びました。

枠内のちょっと太い青い線上にデータがプロットされていたら「正規分布に乗ってる」という感じです。
我ながらざっくりした説明ですね。でもそれだけわかっていたら十分です。以下に補足説明を書きますが興味なければ読み飛ばしても実務上問題ありません。
■ QQプロットの説明
QQプロットは、正規分布との合致性を見るグラフです。
正確には、正規分布以外の分布への合致度合いもみることができます。
Rコマンダーでは、QQプロットのオプションで正規分布以外とのフィッティングも指定することができます。自由度が小さければ正規分布とは似ていない分布になります。
# 私は正規分布以外では、使ったことがありません。

グラフの横軸は「norm quantiles」と書いてあります。正規分布の四分位点の意味です。
ここで、ふたたび正規分布をみてみましょう。

おなじみのグラフです。こちらを累積グラフにしてみます。(横軸が標準偏差σの単位なのは気にしないでください。四分位数とは若干ずれますが、似たようなものです。)

更に、このグラフを直線に変形したものと、実際のデータをプロットしているグラフがQQプロットです。
したがって、QQプロットした結果が直線に見えたら正規分布だなということになります。「測定したデータと、理論分布が似ていたら直線上にプロットされる」ことだけ分かっていたら十分です。
今回のQQプロットを見ると、ー1四分位以下で直線から外れているとわかります。そのあたりの小さなデータは正規分布から外れているということです。
また、線が複数本あったら、ヒストグラムの山も同じ数だけあります。
≡ 正規性の検定
Rコマンダーのメニューから
[統計量]>[要約]>[正規性の検定]
を選択すると、正規性について検定してくれます。
先のグラフのデータについて試してみると、結果は、
data: 総検査実施件数
W = 0.91697, p-value < 2.2e-16でした。
この出力の「p-value < 2.2e-16」をみて、正規性の検定に不合格と判断します。(正規性の検定では、「正規性がある」という帰無仮説を検定しているため、棄却されない方が良いので、0.05以上であればOKとします。)
ところで、検定に合格したからといっても、「正規分布である」という結論が得られたわけではありません。「“正規分布では無い”という帰無仮説は棄却された」と言った何だかスッキリしない結論が得られただけです。
平たく言うと「正規分布ではあるという証拠は、ほとんどない」ということです。この辺は検定のところで詳しく書く予定ですが、歯にモノが挟まったような言い方ですね。
≡ 事例
ここで事例を紹介します。データはこちらです。
2020/7/18から2021/10/23までの私の血圧測定結果です。ちょっと個人情報な気もしますが、以前、CT画像を公開しているひとを見たような気がしますので、血圧くらいなんてことありません。
オムロンの手首式血圧計 HEM-6324Tは、クラウド上にたまった測定結果をCSVファイルにしてメールできます。
今回初めて使った機能なのですが……。(笑)
余談ですが、このOMRON connectというiPhoneアプリのメニューの分かりにくさったらないんですよ。
今回使ったデータをメールで送る機能がまず普通見つからないです。(メイン画面の血圧値のあたりをタップして、グラフを表示したら、右上の「・・・」をタップして出てくる「測定結果出力」をタップするのです。隠し機能か!って感じです。グラフ描画機能は結構凝ったものなのに。)
いつものようにデータをRコマンダーに読み込んだら、まずは、最高血圧のヒストグラムを描いてみます。

毎日測っているときには、正規分布とは全く感じませんでしたが、正規分布っぽく見えます。
薬を飲んでいるおかげで、健康な人みたいなヒストグラムです。
それでは、QQプロットを描いてみましょう。マウスで選択するだけです。

数値でも確認しましょう。
[統計量]>[要約]>[正規性の検定]
をすると、
data: 最高血圧.mmHg.
W = 0.99427, p-value = 0.0002711でした。0.05未満なので、検定の結果、正規分布とは言えませんでした。
ちなみに血圧のデータを統計の事例説明に使うというのは、私の発案ではありません。
故西堀栄三郎先生の講義で使われていたという話を(受講された吉澤正孝さんから)聞いていたからです。1970年代の話です。
西堀先生は、血圧の管理図を描いていたときに「お風呂に入ると血圧が下がる」という事実を発見し、『ははーん。風呂に入ると血流が良くなってベルヌーイの定理から圧が下がるんだな』と思われたとか。
私も、折角1,123件ものデータがあるので、今後のnoteでも使っていこうと思っています。
例えば、「“季節”や“朝と晩”の違いによって本当に血圧は変動するのか?の有意差検定」とか。次回の「散布図行列」や関連する「相関係数」でも使えるかも。
≡ 補足
■ エクセルでQQプロット
エクセルでQQプロットを描くことももちろんできます。例えばこちらのサイトとか。プログラミングを習いたての人の演習問題としても、楽しいと思います。
自分でエクセルやプログラミングをすれば、「(順位−1/2)/𝑛」ってなに? 「ああ、目視用のグラフだからそれでいいのか」といった気づきもあるかもしれません。
そういったメリットもあるとは思いますが、実務で統計を使おうって人はせっかく用意されているRコマンダーのメニュー一発でいいと思うんですよね。
■ t分布に当てはめたら
先ほどの血圧値のQQプロットを描くときに、「正規分布」ではなく、「t分布」を選んでみます。

描かれたQQプロットはこうなりました。

QQプロットだけでは、両津勘吉さんのように見分けることはできなかったようです。
私は、データ数が少ないときにQQプロットを使っています。
≡ おわりに
今回は、QQプロットの話をしました。「サンプリングしたデータと、特定の分布を仮定して得た理論的な値のそれぞれのパーセント点を軸とした散布図にデータをプロットすることによって比較する方法」で、正規分布かどうかを感覚的にグラフで見ることができるものでした。
次回は、「散布図行列」を取り上げます。どの変数間に相関関係がありそうかを一気に確認できる実用的で優れもののグラフです。
