第303回: 「ALTAのテキストをつくろう」57 (使用性の評価前編: 使用性の側面)
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≡ はじめに
前回は、JSTQBのALTAシラバスの「4. ソフトウェア品質特性のテスト」の「4.2 ビジネスドメインテストの品質特性」の「4.2.4 相互運用性テスト」について書きました。
ISO 25010(JIS X 25010)の製品品質モデルの互換性の副特性として「相互運用性」と「共存性」があります。
データをやり取りしながら一つのシステムであるかのように動くかどうかが相互運用性(【相互運用】=【データ交換】)で、例えば、データベースとウェブサービスを一つのサーバーにインストールして動かしても問題ないか?といった特性が共存性(【共存】=【相手の邪魔をしない】)です(サーバーのリソースを喰いあったり、DLLヘル的な共有ライブラリの問題とか、F社のプリンタドライバとC社のプリンタドライバを両方インストールするとなんかおかしくなるというようなものが共存性です)。
「相互運用性」と「共存性」のテストには、コンピュータの知識も多少必要となるのでTAよりTTA向きかもしれません。
前回の復習は以下で模擬試験問題の確認を通して行います。
今回はJSTQBのALTAシラバスの「4. ソフトウェア品質特性のテスト」の「4.2 ビジネスドメインテストの品質特性」の「4.2.5 使用性評価」の「4.2.5.1 使用性の側面」について書きます。
≡ 前回の復習
以下は前回出題したJSTQB ALTAの模擬試験問題を𝕏にポストした結果です。

投票の結果、選択肢4の「他の製品と環境や資源を共有しているときに機能を効率的に実行すること」が38.9%と最も多く、正解も4です。
投票数が18票と少なく、正答率も4割を切っているので難しい問題なのかもしれません。
4章の「学習の目的」をみますと、4章は「K2:理解」ですので、知識で解ける問題しか出ません。
ひとによっては、初めて聞くことも多いかと思いますが、応用問題は出ないので、サクッと覚えてしまえば得点アップに繋がりやすい単元です。
選択肢2の「2つ以上のコンポーネントが情報を交換/使用すること」を選んだ人が33.3%いらっしゃいます。
一般に相互運用と言えば、「出退勤システム」と「給与システム」をつなげたときに【欠勤が給与に反映しているようなこと】を確認するテストをイメージしてしまいます。もちろん、これも相互運用テストです。
ただし、JSTQBのFL4.0シラバスでは、テストレベルにシステム統合テストとコンポーネント統合テストがあります。
FL4.0シラバスから「コンポーネント統合テスト」の説明箇所を引用します。
コンポーネント統合テスト(ユニット統合テストとも呼ばれる)は、コンポーネント間のインターフェース、および相互処理に焦点を当てる。コンポーネント統合テストは、ボトムアップ、トップダウン、ビッグバンといった統合戦略のアプローチに大きく依存する。
こちらの「相互処理」部分で(コンポーネント間の)「相互運用性テスト」を実施します。
そういえば、テストレベルの順番を問う問題をどこかで見ました。
コンポーネントテスト(ユニットテスト)
→ コンポーネント統合テスト(ユニット統合テスト)
→ 統合テスト
→ システムテスト
→ システム統合テスト
→ 受け入れテスト
……という順番を把握しておきましょう。
復習は以上として、今回のnoteのテーマに移ります。
≡ 使用性評価
「使用性評価」は、ISO 25010(JIS X 25010)の製品品質モデルの使用性のテストです。
それでは、JIS X 25010の「製品の品質モデル」から今回の「使用性」を読んでみましょう。
4.2.4 使用性(usability)
明示された利用状況において,有効性,効率性及び満足性をもって明示された目標を達成するために,明示された利用者が製品又はシステムを利用することができる度合い。
注記1 ISO 9241-210を変更した。
注記2 使用性は,副特性,すなわち,製品品質特性として明示し若しくは測定するか,又は利用時の品質の部分集合である測定量によって直接的に明示し若しくは測定できる。
使用性を考えるときには太字にした「利用状況において」を忘れてはいけません。ここでいう「使用性」は「製品の品質モデルにおける使用性」ですから詳しく書けば、「技術的に使いやすくなるように製品やサービスに用意した仕組みが利用状況下で、どの程度、使いやすいものになっているか」です。
以下、ALTAシラバスを読んでいきますが、その前に、使用性だけ「使用性テスト」ではなく「使用性評価」であることに注意が必要です。
これは英語のシラバスでも同じです。
(使用性評価のなかに使用性テストがあるという包含関係です)

■ 使用性評価におけるTAの役割
シラバスの使用性のはじめの箇所を引用します。
テストアナリストは、使用性の評価作業を調整および支援する立場にいることが多い。この役割には、使用性のテストケースを仕様化するか、ユーザーと一緒にテストケースを実施するモデレーターとしての役割が含まれる。テストアナリストはこれを効果的に行うために、これらの種類のテストに関連する主要な側面、ゴール、および手法を理解する必要がある。本節で説明されている内容以上の詳細については、ISTQB® Specialist Syllabus in Usability Testing[ISTQB_UT_SYL]を参照されたい。
太字にした「ユーザーと一緒に」というのは、実際に使うユーザーの感覚や意見を大切にしようということかなと思います。
でも上記に加えて「これらの種類のテストに関連する主要な側面、ゴール、および手法を理解する必要がある」としている点がすばらしいと思います。要は「ユーザーの評価を大切にしつつ、システムのゴールと使用性のテスト技法も理解しよう」ということです。
実際のところ、ユーザーに聞くと「今までのユーザーインターフェースが良かった。変えないでほしい」と言います。
例えば、マイクロソフトのWordやExcelのメニューがリボン(下図参照:2006年11月30日に発売されたOffice 2007から使われ始めたGUI)に変わったとき、これまで使っていたユーザーはぼぼ100%、「使いにくくなった、分かりにくくなった、折角プルダウンメニューの位置を覚えていたのに」と言いました。
だから体系化された使用性のテスト手法を使って評価することも大事です。

ISTQB® Specialist Syllabus in Usability Testingは、まだJSTQBの翻訳が公開されていないようなので英文のシラバスへのリンクを張っておきます。
どんな標準があるかなど、ざっくり学ぶのにとても良い教材なので、Google翻訳でPDFをまるごと翻訳して斜め読みをするといいと思います。
≡ 使用性の側面
「4.2.5 使用性評価」の「4.2.5.1 使用性の側面」で挙げている側面は、「使用性」、「 ユーザーエクスペリエンス(UX)」、「アクセシビリティ」の3つです。
順番に確認していきます。
■ 使用性
ちょっとしつこい感じがしますが、こちらでは、ISO 25010の使用性の副特性について書かれています。

上記から分かるとおり、使用性には、「適切度認識性」、「習得性」、「運用操作性」、「ユーザーエラー防止性」、「ユーザーインターフェース快美性」、「アクセシビリティ」の6つの副特性があります。
ここでは「適切度認識性」を把握しておきましょう。シラバスに、「それぞれの定義については[ISTQB_GLOSSARY]を参照されたい」とあるので、用語集も確認しますが、まずは、JISを抜粋します。
適切度認識性(appropriateness recognizability)
製品又はシステムが利用者のニーズに適切であるかどうかを利用者が認識できる度合い。

冒頭の「製品又はシステムが」が「コンポーネントやシステムが」に変わっている点に注意が必要です。
前回の復習の通り、JSTQBのFL4.0シラバスでは、テストレベルにシステム統合テストとコンポーネント統合テストがあることを思い出しましょう。
コンポーネントレベルで利用者のニーズに焦点を当てたテスト(妥当性の確認)をできることは稀なので、ISTQBの方が不適当だと思います。
まずは、JISの方を主に理解して、ISTQBの内容を追加で把握することをお勧めします。
念のため「習得性」についても同様な比較を行っておきます。
習得性(learnability)
明示された利用状況において,有効性,効率性,リスク回避性及び満足性をもって製品又はシステムを使用するために明示された学習目標を達成するために,明示された利用者が製品又はシステムを利用できる度合い。

■ ユーザーエクスペリエンス(UX)
短いのでシラバスを引用します。
ユーザーエクスペリエンス評価が対象にするのは、直接操作だけでなく、テスト対象のユーザーエクスペリエンス全体である。これは、テスト対象を使用することで楽しみや満足感を得られるなどの要因がビジネスの成功にとって必須である場合などに特に重要である。
ユーザーエクスペリエンスに影響する典型的な要因を次に示す。
● ブランドイメージ(つまり、製造元に対するユーザーの信頼)
● 相互に作用する振る舞い
● テスト対象の使いやすさ(ヘルプシステム、サポート、およびトレーニングを含む)
UIのテストでは、直接操作する個所をテストします。しかし、UXのテストでは、全体的な「ユーザー体験」をテストします。
そして、「UIよりもUXが重要」といいます。
実際にUXのテストをしようという人は、樽本 徹也氏の『UXリサーチの道具箱II ―ユーザビリティテスト実践ガイドブック』がお勧めです。
■ アクセシビリティ
シラバスで独立して取り上げている使用性の副特性です。
まずは、定義を確認します。
アクセシビリティ(accessibility)
製品又はシステムが,明示された利用状況において,明示された目標を達成するために,幅広い範囲の心身特性及び能力の人々によって使用できる度合い。

「明示された目標を達成すること」がアクセシビリティですが、典型的なテストでは障害者や高齢者への対応が十分かを評価します。シラバスの例を引用します。
アクセシビリティを向上させるための典型的な手段は、障害を持つユーザーがアプリケーションを操作できるようにするために提供されている機会に焦点を当てる。これらには、次のようなものがある。
● 音声認識による入力
● ユーザーに提示されるテキスト以外のコンテンツに、同等の代替テキストがあることを保証すること
● コンテンツや機能を損なうことなく、テキストのサイズを変更可能にすること
「障害を持つユーザーがアプリケーションを操作できるようにするために提供されている機会に焦点を当てる」とありますが、「ユニバーサルデザイン」という概念を核とすべきでしょう。Wikipediaを引用します。
ユニバーサルデザイン(英: universal design、UD)とは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの個人の違いにかかわらず、出来るだけ多くの人々が利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のことであり、またそれを実現するためのプロセス(過程)である。
デザイン対象を障害者(色覚異常者等)や高齢者に限定しないこと、全ての人に対して優しいデザインにすることが大切であり、そういうアクセシビリティが提供されていることをテストしましょう。
ユニバーサルデザインの7原則は以下の通りです。アクセシビリティのソフトウェアテストをするときの観点として使うといいです。
● どんな人でも公平に使えること。
● 使う上での柔軟性があること。
● 使い方が簡単で分かりやすい。
● 必要な情報がすぐに分かること。
● 簡単なミスが危険につながらないこと。
● 身体への過度な負担を必要としないこと。
● 利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。
≡ JSTQB ALTA試験対策
いつものことですが、まずは、「学習の目的」を確認します。
TA-4.2.4 (K2)使用性の要件の実装と、ユーザーの期待の達成の両方を検証および妥当性確認するのに適している手法を説明する。
章番号が4.2.5で学習の目的が4.2.4なので、注意しましょう。先週も書いていたので、たぶん4.2.4と4.2.5の順番が途中で入れ替わって学習の目的の修正が漏れたのかもしれません。
(K2:理解、K3:適用、K4:分析)
《問題》
JIS X 25010の「使用性」の副特性ではないものはどれですか?
1. 適切度認識性
2. ユーザーエラー防止性
3. ユーザーインターフェース快美性
4. インテグリティ
答えは次回に書きます。
≡ おわりに
今回は、「4.2 ビジネスドメインテストの品質特性」のうち、「4.2.5 使用性評価」の「4.2.5.1 使用性の側面」がテーマでした。
全ての人に対して快適で優しいデザインになっていることをテストするには、普通の知識(や自分の感覚)だけでは全然観点が不足しています。
まずは、上述したウェブページや英文のシラバスや書籍を読んで知識を増やすことが大切です。
使用性の評価は、誰でもできそうな感じがしますが、奥が深い(専門性が必要)です。また、数式化もできるので、数学が好きな人や論文にも向いているかもしれません。
次回は、「4. ソフトウェア品質特性のテスト」の「4.2 ビジネスドメインテストの品質特性」の「4.2.5 使用性評価」の「4.2.5.2 使用性評価手法」です。
次回はそうなのですが、次週は一回休みで別のことを書きます。
