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第164回: 「統計の実務」24 管理図《その2: Xbar-R管理図》


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≡ はじめに

前回は、「管理図《その1: 管理図の本質》」と題して、尊敬するシューハート博士の話と、プロセスの維持管理と管理図の関係について書きました。

今回は、(管理図の)「管理対象」について書こうと思っていたのですが、抽象的な話になってしまうため、先に、「Xbar-R管理図」という最も一般的な管理図について、JISZ9020-1(管理図-第1部:一般指針)と, JISZ9020-2(管理図-第2部:シューハート管理図)を参照しつつ書こうかなと思っています。

ソフトウェア開発者は使う機会が無いかもしれないけど、管理図の基本となる「Xbar-R管理図」を知ったうえで、管理対象の種類ごとに管理図がある話をした方がわかりやすいのではないかと思ったからです。

イメージを持ってほしいので、まずは、「ポアンカレがパン屋の不正を暴いた話」から始めます。



≡ ポアンカレがパン屋の不正を暴いた話

まずは、こちらをお読みください。

眠れなくなるほど面白い 図解 統計学の話 p. 68

こちらは、『眠れなくなるほど面白い 図解 統計学の話』という書籍の68ページです。

この本は、これから統計を勉強しようという初心者にはお勧めしませんが、ある程度の経験を積んだ人が『統計について興味ないけど、どうしよう?』というときに読むと、大変面白い本なので統計に興味が湧くと思います。

さて、「ポアンカレがパン屋の不正を暴いた話」に戻ります。最初にお断りしておきますが、この逸話は広く知られていますが、フェイクです。ファクトチェックをされている方のウェブページはこちらです。
そもそも、ポアンカレは「ポアンカレ予想」で、有名な数学者ですし……。

話を要約すると「ポアンカレが、950gのパンを1,000gだよと偽って売っていたパン屋のパンを一年間買い続け、その重量をグラフ化することで、パン屋の不正を見破った」です。

グラフはこんな感じです。

https://toukeigaku-jouhou.info/2018/05/10/poincare-bakery/

大切なのは、上のグラフです。(実線が計測した値のプロットで、点線が期待値のグラフです)

前回出てきた、「偶発的な原因」と「特殊原因」を思い出してください。

データがバラつく原因には、偶発的な原因によるものと、特殊な原因によるものがあります。上のグラフでいうと、偶発的な原因によるものは、釣り鐘型の曲線で表された部分です。「“人間が作るものだから多少の誤差があって重さがバラついている”けれども、多くのデータを取れば正規分布になる」に対応します。
特殊原因の方は2本の曲線のズレです。こちらはパン屋がごまかした50gがグラフに現れています。



≡ 不正をしたくないパン工場の話

ポアンカレが不正を暴いたパン屋とは真逆のパン工場があったとします。1日に1,000斤の食パンを焼くパン工場ですが、工場長は「1斤は340g以上」というルールが守られているか心配でなりません。

工場長に不正をする気は一切なく、むしろ、余裕を見て350gになるよう食パン製造機のパラメータをセットしているのですが、今後「特殊原因」が発生しないとは限りません。それに気が付かず売ってしまったら……という事を心配しています。

特殊原因とは、4M、すなわち、「Man:人、Machine:機械、Material:材料、Method:方法」の何かが異常事態になることです。例えば、製造機械が故障して300gの食パンを作ってしまうなどです。
4M+1Eの「Environment:環境」の変化も気になります。

そこで、工場長は、食パンの製造工程で抜き取り検査をすることにしました。

1時間に100個の食パンが焼きあがるので、そこからランダムに数個を取り出してその重さを実際に測ってみようというわけです。(数個しか測らないのは、全部を測っていたら大変な作業となるためです)

抜き取り検査をすることが最適の解かどうかは、今回の主旨から外れるので目を瞑ってください。

※ 本当は「検査費用+見逃しリスク」の最小化を考える必要があります。また、連続して変化するとは限らない場合は、工場長の気休めにしかなりません。😅 自分が工場長なら全数検査を自動化するかなあ。



≡ Xbar-R管理図

こういうときに、使っていただきたい管理図がXbar-R管理図です。

まずは、データを測定して表にまとめます。

測定データ一覧表

毎時、焼きあがった時に数個の食パンの重さを測った結果の表です。黄色のXbarというのは、測定値の平均です。
X_-R 管理図と、Xの上に平均を表す横線(bar)を付けて表記することもあります。

表の見方ですが、例えば7時の列を見て、7時のときには、食パンを4つサンプリングし、重さを測ったところ、353g, 349g, 355g, 360gだったのでXbarは、平均値が354.25gであるということを表しています。

R(データ幅)の方は、サンプリング値の幅(最大値-最小値)です。サンプリングしたデータ群の値のバラツキ具合を見ようということです。

具体的には、7時の時のデータは、353g, 349g, 355g, 360gですから、
  最大値-最小値 = 360-349 = 11
です。

ところで、バラツキを調べたいのなら「最大値ー最小値」といったデータのレンジ(幅)ではなく、(標本)標準偏差の方が良いのでは?と疑問に持たれた方がいるかもしれません。
1度にサンプリングするデータ数が多い場合は標準偏差の方が良いです。10個以上を目安として10個以上のときには、標準偏差にしてください。
標準偏差にしたときには、管理図の名前もXbar-R管理図から、Xbar-s管理図に変わります。
sは、sample standard deviation(標本標準偏差)のsです。元々のRはrange(幅)のRです。

表が埋まれば、XbarとRの行を折れ線グラフにして、Xbar-R 管理図の完成です。
横軸は時系列とします。

Xbar-R管理図

管理図としては、「特殊原因」を見つけるための管理限界線(UCL、LCL)や平均値線(CL)、また、規格限界線(USL、LSL)を引いた方が良いのですが、今回は、340g以上がキープされていることが工場長の関心事なので、そこだけ赤い線にしています。管理限界線については次回以降に説明します。まずは、管理図全体の構造を確認できたらOKです。
以下に、このExcelファイルを置いておきます。(10分くらいで作ったものなので要らないかも)

管理図の使い方としては1時間ごとに、測定したデータをこのシートに追加して340g未満になっていない事(工程能力があること)を確認します。



≡ おわりに

今回は、「Xbar-R管理図」の話でした。

管理図のエクセルテンプレートをググって探すとといくつか見つかるのですが、ほとんどが、今回のXbar-R管理図です。しかし、これはソフトウェア開発のときにはほとんど使いません。
一度に複数のサンプル値を取ることはめったにありませんし、ソフトウェア開発の時には計量値(アナログ)ではなく、計数値(デジタル)のことが多いからです。

テンプレートを探している時間があれば、Excelで簡単に作れるので、自作した方が良いと思います。

次回は、「管理図」の3回目として、「XmR管理図」について説明します。こちらはソフトウェア開発のプロセス管理で使い勝手が良いものです。

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