気力だォォッ!「ハムスター🐹」の内側に炎を燃やした、あるレッドの転身録
「昔々、あるところに……」
そんな風に語り始めたくなるほど、私の人生を大きく変えた「運命の瞬間」がある。
それは、あるコスプレ大会への気軽なエントリーだった。
「ちょっとやってみようかな」
その一歩が、私の中に眠っていた、あのアツい「特撮魂」を呼び覚ましてしまったのだ。
1993年。
テレビの中では五つの星が光り輝き、拳法アクションで悪をなぎ倒していた。『五星戦隊ダイレンジャー』。
私の聖地の一つは、「後楽園ゆうえんち」だった。
ヒーローと握手したあの瞬間、小さな私の手には、確かに正義のバトンが渡されていた。
けれど、大人になる過程で、ふと思う時があった。
「私が男なら、もっとよかったのかな」
レッドは男がやるものだという空気。
そんな「性別の壁」に、情熱の置き場を迷うこともあった。
それに、私の見た目は「戦うヒーロー」とは程遠い。
最近では、丸いフォルムが愛らしい「ハムスター🐹」に似ているなんて言われたりもする。
どこか癒やし系で、平和な空気を纏った私。けれどその内側には、誰にも見えない「気力」が確実に燃え盛っていたのだ。
「ハムスター🐹のような見た目からは想像することのない、烈火のごとき炎」
迷いを振り切るように、私は「単なる参加者」であることを卒業した。
舞台は、当時の夫の「趣味の集まり」の打ち上げ。
私は数ヶ月前から本気で「余興企画書」を練り上げた。
「君の未来のために あしたのために」
迷うくらいなら、自分がレッドになればいい。
私はドン・キホーテへと走り、情熱のレッドレンジャーを買い込んだ。
愛らしいフォルムを真っ赤なスーツに包み込み、隣に立つ夫には、有無を言わさずブルーを着せた。
「いい? あなたはブルー、私はレッド。センターは私よ」
「ハムスター🐹」に似たレッドが、ステージの真ん中でキレッキレに舞う。
後楽園で握手したあの日から、私の立ち位置は一ミリもブレていない。
そのギャップに驚愕する周囲を尻目に、私は性別も、見た目のイメージも超えて、センターで戦う主役のレッドを全うした。
ダンス企画は大成功。
レッドとしての仕上げは、手にしたビール瓶を掲げ、一滴も残さず一気に煽りきること。
喉を焼く刺激は、戦い終えたヒーローへの最高の報酬。……のはずが、翌朝の記憶と引き換えに手に入れたのは、正義の味方らしからぬ凄まじい二日酔いだった。
そんな「レッドな半生」を今のパートナーに話してみたら、彼は呆れたように笑いながら言った。
「お前、ネタで生きてるよな(笑)」
確かに、これまでの私はネタの塊だったかもしれない。
けれど、今の私は少し違う。
あの日、聖地・後楽園で受け取ったバトン。
「ハムスター🐹」のような見た目の裏側で、自分でレッドを掴み取ったあの日々。
それらはすべて、今の私の活動へと繋がる壮大な助走だった。
私は今、あの頃よりもさらに本気で、「誰かの未来」のために動いている。
女だから、男だから。丸いから、強くないから。
そんな枠組みすら笑い飛ばして、ビールを煽りきったあの気力。
外見からは決して想像できないほどの「炎」を、今は「誰かの人生をより良くするための力」に変えて、私は今日も走り続けている。
天に輝く五つ星。
私の人生という特撮ドラマは、ネタを誇りに変えながら、本当の意味で「明日」を照らすために続いていく。
(完)
