見出し画像

『最悪が最高に変わる瞬間!』


「手〜離せ〜
手〜チギれる〜〜」


ムラッチは絶叫した。

「こいつ〜
手離したら死ぬやないか〜
こいつだけは絶対に
ゆ〜る〜さ〜ん」



崖の上から手を差し出す
ムラッチの右手を
私は右手一本でぶら下がりながら
心に強く思っていた‼️
(リポビタンDのCMの状況をイメージしてください)

下が私。まさにこんな感じ!


皆さんは死にそうになった
経験はありますか??


私の人生最大のピンチが
この時でした。



説明しよう!
中学2年生になった私は、
林間学校で兵庫県の山奥に
行ったのである。



学校からバスで出発して
昼前に目的地に着いた。
昼食後、
自由時間に
民宿から見える川を見て
誰かが

「川の中に入って、
上流まで歩いて行けば
面白そう」

と言い出した。



ワクワクドキドキ大好きな
仲良し5人組は、
すぐさま
ビーチサンダルに半パンで川に入り
上流を目指した。



川はヒザくらいの深さで、
速い流れに足を取られてコケたり。。。
岩から岩へ飛び移ろうとして
川にハマってビショ濡れになったり。。。

私たちは大笑いしながら
上流に向かって進んだ。



1時間ほど歩いて、
これ以上先は行き止まりで
どうしようか考えていた。


K君という友達が、
「目の前の崖を登って道路に出よう」
と言い出した。



目の前には、
河原に続く高さ8メートルくらいの
崖があった。



崖の上は道路で
車がビュンビュン走っていた。



落ちるということを全く考えない
怖い物知らずの私たち。



誰が一番早くに道路まで登るか
競争することになった。
何でも勝負したいお年頃。



5人が横一列になり
一斉にロッククライミングの要領で
崖をよじ登っていく。
もちろん命綱はない。



私の登った場所は
凹凸があまり無く
手を掛ける場所が少なかった。
草を持つとズボっと抜けたり、
途中で50センチくらいズリ落ちたりと
大苦戦していた。



他の4人は
既に上に登り、
道路から私を見て声援を送っている。
遅れを取り戻すために
私は急いでよじ登る。
もうちょっとで
道路に手が届きそうだ。



その時、
ムラッチという友達が道路から
身を乗り出して右手を伸ばし

「アークン、
俺の手に捕まれ!」

と叫んだ。


心の中で
「ムラッチ!何ていい奴なんや。
俺たちは何があっても親友だ!」
と思い、
右手をつかんだ瞬間に
私の足が崖からズルっと外れた。

『あっ!危ない!』

誰かが叫ぶ!



右手だけで繋がり、
宙ぶらりんになった私。
下を見ると高い所にいる現実に気づき
突然恐怖した。



「落ちたら死ぬ」。


力が抜けかけた時に、
ムラッチが

「手〜離せ〜
手〜チギれる〜〜」

と絶叫したのだ。


これが、
冒頭の言葉。

『天使が悪魔に変身』
した瞬間を見た。


ムラッチに対して
信頼の気持ちが強かった分、
裏切られた怒りの感情が生まれた。

「コイツだけは
  絶対に許さん!!』

と思うと
不思議にも力がみなぎり
ムラッチの手を強く握りしめた。



すると、
偶然にも足が崖に掛かった。
必死のパッチで道路までよじ登った。
しばらく大の字で動けないほど疲れた。



「助かった〜」
の思いと同時に
怒りの感情がメラメラと沸きあがった。



ムラッチに対して、

「何が手離せやねん。
死んでまうやろ!」

と怒鳴った。


ムラッチは

「アホか、
俺が助けたってんやろ!」


と言い返してくる。



「何を〜」
取っ組み合いの喧嘩になり
皆が割り込んできて
2人は止められた。



この件以降、
私はムラッチを信じられず
同じグループではあるが
話さなくなった。



親友に裏切られた
辛い思い出。
ちょっとした
私の心の傷になったのだ。



中学3年生は
ムラッチとは別々のクラスになった。
それ以降、
話したことは1度もなかった。


何年かに一度
ムラッチのあの時の声を思い出しては
胸がチクッとしていた。



そこから
20年以上が経ち、
7歳の長男と
一緒にお風呂に入っている時のこと。



たまたま
この話をすると
長男は

「ある意味、
ムラッチは命の恩人やな!」

と言った。

「どこが⁉️』

と思ったが、
確かにあの時、
ムラッチの声がなかったら
2人共、
崖から落ちていたかもしれない。




ムラッチの言葉が
怒りのパワーを生み
助かったのは事実だった。



結果的には、
長男が言うようにムラッチが
命の恩人になっていたのだと
気づかされた。



長男の言葉が無ければ、
今でもムラッチを
恨んでいたかもしれない。



「親友に裏切られた辛い思い出」は
「親友の言葉によって助けられた
最高の思い出」
に書き換えられた。




長男の言葉によって
私の心が救われたのは事実だ。
苦しいトラウマから解放された。

最悪と思っていた過去は
案外、
自分の狭い了見の産物かもしれない。
思い返したら
オセロのように最高と
解釈がクルッとひっくり返るかも!
皆さんも
是非ふり返ってみてください。



いつの日か、
ムラッチにあった時には
酒の一杯も奢り

『ムラッチ、
あの時は本当にありがとう!』

と言うつもりだ。



ことばと広告さんの企画
#モノカキングダム2024に参加させていただきました

・テーマは『こえ』
・1000〜2000字程度
・『#モノカキングダム2024』とタグをつけて投稿する。

いいなと思ったら応援しよう!