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2店目の本屋をオープンします

2021年の4月に、aruという本屋を瀬戸内海沿いではじめてから丸4年。

この度、2号店をオープンすることになった。

場所は、いまaruが位置する「王子が岳」という山の、ちょうど児島のまちを挟んで反対側──「鷲羽山」という山の中腹にある、とある建物の中の一室だ。この場所からも、うつくしい瀬戸内海が一望できる。

海と山のあいだにある本屋。
なぜ2店目をはじめることになったのか、その経緯を書いてみたい。

aruをはじめてから4年間のあいだ、2拠点生活をしながら本屋を営むことは、大変だったけれどそれはそれは幸せだった。

自分が作った場所を居場所だと言ってくれる人がいること。本を介して人と人がつながっていくこと。海と本が人の心に与えるやさしい余白を日々感じられること。

「ただそこにある本屋でありたい」。この本屋が存在する意味は、訪れる人の心の中にそれぞれ宿ってくれたらいい。開店当初、「aru」という名前に込めたそんな思いは現実のカタチとなって、この4年間ですばらしい景色を私に見せてくれた。自分で場所を持ったからこそ出会えた人びとや生まれた仕事もたくさんあって、本屋をはじめて私の人生はおおげさではなく変わっていったと思う。

感覚だけではなく、実際に数字の面でも順調に成長している。訪れてくれる方々の数も増え、売り上げは開店当初に比べて2倍以上となった。


続けることの大変さ、よろこび、そして守りたい育てていきたいと思える場所を、まちの信頼できる仲間と、お客さまと共に作れていることの幸せ。ますます、aruという場所づくりに力を入れて取り組んでいきたい──そんなことを思っていた矢先に、2号店をやらないかという話が舞い降りてきたのだった。

きっかけをくれたのは、今回も変わらず「デニム兄弟」だ。私の変化の近くには、いつも彼らの存在がある。

彼らはITONAMIという会社を運営していて、「LIVE WITH WILL(意志とともに生きる)」をビジョンに、児島のまちでアパレル事業・宿泊事業・飲食事業などを展開している。

私とデニム兄弟は旧知の仲だけれど、彼らがこの4年間で続けてきたたくさんの変化を、私はずっとそばで見続けてきた。「デニムブランドをしている兄弟がホテルをはじめた」という状態から、法人化して社員を抱え、新しい一棟貸しの宿をオープンし、サウナや飲食事業もはじめ、ずんずん彼らは歩み続ける。

彼らが飲食やサウナなどの事業を展開しているのには、「このまちが盛り上がることが、回り回ってデニム産業のためになる」という思いが背景にある。おもしろいまちになると、人が増える。人が増えれば活気が生まれ、そうすることで地域が盛り上がり、いい循環が起きていく──。

そんなまちを盛り上げるための活動を自社で続けてきたITONAMIは、今後、もっと本格的な「まちづくり」の事業に取り組んでいくのだという。地元の複数の会社と共同事業体「MIKOSI」を立ち上げ、そのチームで今後、児島のまちづくりを推進していくのだ。

「産業が続いていくためには、そのまちが盛り上がる必要がある」。国産ジーンズ発祥の土地である児島が、デニム産業が、この先も続いていくために。意志をもち、彼らは動き続けている。

そしてその「まちづくり」の皮切りとなる事業が、「鷲羽山レストハウス」という、鷲羽山の中にある4階建ての複合施設の運営だ。

鷲羽山は瀬戸大橋の入り口にもほど近く、その景色は雄大で、倉敷市の中でも観光客数は上位にランクインしていて年間75万人もの人が訪れる(ちなみに、王子が岳は年間1万人程度だという)。

この建物は、現在別の事業者が運営しているけれど、4月からMIKOSIが運営を委任されることになった。

そして、その建物内の1室を、aruの2号店にしてはどうか──。

そんな話を、デニム兄弟から去年の秋ごろにもらったのだった。

最初話をもらった時は、正直なところどうしようかと少し迷った。2拠点生活をしていて、夫が東京に住んでいる以上これよりも多く岡山にいる割合を増やすことも難しそうだ(夫と話し合って、移住もまだ先になりそうである)し、今のお店でも手一杯なので、2店目をするとなると、人を雇う必要がある。

私にできるだろうか。
大丈夫だろうか。
広げすぎることで、何か大切なものが失われてしまわないだろうか。

どの不安も漠然としたものだったけれど、4年前の「失うものが何もない状態」だった時の私に比べて、大切なものや守りたいものがたくさんできた今の私には、新しいことをはじめることは少し怖くもあった。

けれども同時に、aruを営みながら私の頭の中にあったいくつかの思いが、ふつふつと浮かびあがってきたのだ。

現状のaruという店は、私がいないとなりたたないような運営をしている。もし私に妊娠や病気などのライフスタイルの変化があったら、何かトラブルが起きてしまったら、aruというお店は続けられないことになってしまう。お店には、もちろんそればかりではないけれど、私に会いに来てくださる方がたくさんいる。

属人的な運営。
そのあり方に満足はしていたけれど、「海が見える本屋」という場所が人の心に生み出すやさしい余白は、私という存在を抜きにして、きっと今の社会にとっても必要なのではないか、とも感じていた。

自然に触れてうれしそうな子どもたち。
ふと海をみながら、涙を流した学生さん。
子育てで忙しいなか、aruで海をみながら本を読むのが何よりもの救いだと言ってくれるお母さん。
誕生日や記念日など特別な日に訪れてくれた、夫婦やカップルの嬉しそうな顔──。

aruというお店を、本当の意味で「ただそこにあり続ける場所」にするために、2号店の条件はすごくぴったりなのではないかと思った。「私がいない状態でも、成り立つ海が見える本屋」のかたちを、模索してみたいと思った。

さらにレストハウスには、飲食機能もそなわっているので、営業許可の都合で今の店ではやりたくてもできなかった、本と食を組み合わせたイベントなども行うことができる。さらには広さも倍以上になるので、映画の上映や、少し大きな展示なども企画できそうだ。

今のこのタイミングで2店目をはじめることは、いろいろな意味で、私の今後に必要なことなのかもしれない。少し悩んだあと、やっぱり「やるしかないな」という結論に至った。

そして何よりも、児島のまちづくり事業をはじめることになったデニム兄弟が、私にまた新しい場所をつくることを提案してくれるということは、彼らと共に、このまちと共に、変化を止めず歩めてきたという他ならぬ証拠だと思ったのだ。

こういうお誘いに、自由にたのしく前向きに「やるしかないでしょう!」と言える自分でいるために、私は努力し続けてきたんだ、と思った。

王子が岳の店舗は、これまで通り、私のとっても属人的な個人のお店として。
鷲羽山の店舗は、もう少しひらかれた、公共的な本屋として。
そんな棲み分けをしながら、少しずつ新しい本屋のかたちを模索していきたいと思っている。

先日お店に什器が届き、すこしずつ本の搬入をはじめている。窓から見える、いままでとは少し違う雄大な瀬戸内海の景色が、「あたらしい物語がはじまるんだよ」と語りかけてくれるような気がした。

2店舗目は、4月1日にオープン予定です。
営業日が年中無休だったり、(※)半分無人の本屋になったりと、少し今までのカタチとは変わりそうですが、いつでも開いているぶん、たくさんの人が自由に訪れる本屋さんになっていけばいいなあと思っています。詳細はインスタグラムにて! 

(※)3/31追記 当面のあいだは月・火が定休日となります

瀬戸内海と本を味わいに、ぜひお越しいただけるとうれしいです。

photo by kento hirasue

<お店情報>
aru 鷲羽山店
営業日:年中無休 ※3/31 追記 当面のあいだは月・火が定休日となります
住所:〒711-0925 岡山県倉敷市下津井田之浦1−1
Instagram:https://www.instagram.com/aru_washuzan/

レストハウスでは、スタッフも募集中とのことです! よろしければこちらのアカウントもぜひ。

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あかしゆか ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。