【ファンタジー小説部門】ぜんぶ、佐野くんのせい(第9話)#創作大賞2024
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「先輩、大丈夫ですか?」
二度の「ヒッ!」に小芝井が心配げな表情を向けてくる。
「あ、いや。その……」
佐野の背後に若い男がボーッと突っ立っているのが見えた。多分二十四、五歳。ここまで無表情になれるかというくらい無表情で、一瞬静止画かと疑いたくなった。
どこか神経質そうで、近寄りがたい雰囲気がある。十和子に憑いていた死神は灰色のフィルターをかけられたようにザラザラと、この世のものではない雰囲気を醸し出していたが、佐野に憑いている男はそのままそこにいる人間のように違和感がないのが、逆に怖い。
意識を集中させると、佐野のもっと深いところにあるものも見えてくる。おそらく前世に関連する女性や男性の霊。よくわからないメタリックな球体。見たことのない書体が立体的になったものや、植物の精霊なのかなんなのか、コーヒーゼリーをグチャグチャにしたような形の定まらないもの。よく目を凝らすと、ずっと奥のほうに三種の神器時代の洗濯機みたいな残像もあった。
こういうのは誰にでもあるものだが、だいたいは三層四層になっていて、深いところにあるものは面影が分かる程度だったりする。そして、そのほとんどにおいて片桐が「記録」や「背景」と呼んでいるように、本人の魂にある程度関連しているような映像を含有しているものだ。
普段、片桐はそこまでは見ない。そこまで深く知りたいと思う相手もいない。佐野の記録層にまでアクセスしたのは、最近憑いたと思われる無表情男が背筋が凍りつくほどリアルだったからだ。だが、情報は得られなかった。いったいどこから連れてきた? 知り合いか?
帰るときに十和子から心付けを差し出された。小芝井は沈痛な面持ちで断った。佐野がなにか言いたそうにしていたが、それを遮るように、
「役立たずですみません。またユキネちゃんのことで心配になったら連絡ください。いつでも飛んできますから」
と言った。
「そうだ。僕が連絡係になるよ」
片桐はすかさず言った。
「なんで先輩が出てくんの? 十和子さんの番号は俺が知ってるから大丈夫」
不服そうに佐野。
片桐の懸念を知っている小芝井が、慌てたように佐野を制止する。
「いいんじゃない? 先輩に間に入ってもらっても。ほら、そうしたら俺らも犬猫に集中できるわけだしさ」
「はあ?」
「じゃあ、十和子さん連絡先教えてください」
佐野が色々と言い出す前に、片桐は十和子から連絡先を聞き出した。よし、これでオッケー。
【第10話】
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