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『誰かの何かにならなきゃダメですか?』 美希の話❷

ひょんなことから地元のスーパーの店員になった美希。いつものように仕事に向かう美希のもとに、幼馴染の沙織から一通のDMが。沙織との約束のために仕事に取り組む美希だったがーー

「なんでそうなるかなぁ、、、、あぁ、、もう」
誰にも聞こえない声で愚痴をこぼしたのは昼休憩中の美希である。

事が起きたのは開店してすぐのことだった。
毎月の第三土曜日は大特売の日で混んでいるどころの騒ぎではないので
売価のチェックは入念にしているはずだったが、特売のみかんゼリーの値段が違っていたらしく、朝からクレーム対応に追われた。

結構な人数を自分的にはなるべく早く対応していたつもりだけど、
あるお客様の対応した時だった。

「早くしてもらっていいです?そんなんすぐできるでしょ」
『順番に対応していますので少々お待ちできますか』
「間違えてんだから、謝るのが先でしょ」
『すみません、でも確認は必要なので』
「すみませんで済むことじゃないでしょ!!!疑ってんの?」
『じゃあどうすればいいんですか?』

忙しさ、とイラつきでポロッと出てしまった。やっちゃったと思った時にはもう遅く、結局店長まで出てくる大ごとになってしまった。
幸い店長には次から気をつけてと諭されただけだったが、迷惑をかけてしまった罪悪感で意気消沈している。


そこに真里さんがやってきた。
『なーにしてんの、午後からは切り替えてよ』
と正直今見たくない99円のみかんゼリーを差し入れしてくれた。
真里さんは私の直属の上司でチームリーダーである。入社した時からずっと真里さんについてきた。真里さんは優しくて仕事ができる人だけれど率先的に教えてくれる人ではない。背中(目線)で語ってくるタイプなのでわからないことはしつこく聞かないと教えてくれない。そんな真里さんが声をかけてくると言うことはよっぽどやらかしていると言うことだ。

「はぁ、、すいません。なんかテンパっちゃって」
『忙しい時に焦るのは禁物。一つずつ確実にやればいいから。
まあでもあんな怒鳴らなくてもねぇ、当たりが悪かったわ』
「気をつけます、、、」

すぐ気分を切り替えられるタチではないが、せっかくもらったゼリーを無下にはしたくないので味わっていただき、仕事に戻った。

なんとか忙しい一日を終え家に帰宅したが、もう何もやる気が起きない。
そんな時の私のルーティンはこれだ。家に常備している檸檬堂の缶チューハイと仕事帰りに買った半額の惣菜をお皿に移しレンジにかけて食べれば、もう完璧。Instagramに出てくる絢爛豪華な食事とは大違いだが、疲れて動けなくらるくらいまで働いた私は偉いのでそう言う日があっていいと言い聞かせている。疲れを流すようにお酒を飲むが、今日の出来事はなかなかに理不尽だったのか腑に落ちず、夕飯中に嫌な記憶が蘇りイライラしてしまった。

「なんでこの仕事してんだっけ、、」

高校生の時からバイトを始め、カフェ、ファストフード店、レストラン、学生時代はずっと接客業しかやってこなかった。おまけに学部だって観光系を選んでいるのだから、接客業を選んでいる。就活でも、なぜこの仕事に就きたいかと聞かれた時はお客様を笑顔にしたい、ありがとうと言われる瞬間にやりがいを感じますなんて言っていた気がする。

最近はそんなやりがいなんか、どこかに行ってしまった。目の前にある山積みの仕事に追われ、お客様を笑顔にしたいとかそんなこと考えていない。ただ機械のように動き、そこに心なんて無い。人に怒られるとか指摘されるのがめっぽう苦手なのでなるべくミスをしないように、細心の注意を払って動く。ただそれだけ。

いつしかそんな毎日に慣れたと同時に嫌気が差してきていた。




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